滝のような熱い
シャワーの詮を止めて
バスルームから出ると
目の前の壁一面の
洗面所の鏡は一気に曇った
ラブホテル
特有の消毒の匂いがする
あたしはゆっくり髪を乾かし
身支度を進める
初めてこの体がお金になると
知った夜から半年
変わった事といえば
高校生になったことと
あたしにお得意さんが
出来たこと・・・・・・
半年前
車の中で始めて
商売目的で奉仕した牟田さんは
その報酬代として3万円あたしにくれた
彼のクセなのか相変わらず
言い訳がましいセリフがとんだ
「これで何かおいしいもの
でも食べなよ
決してヘンな
意味じゃなくて・・・・ 」
ヘンな意味って何?
「礼子ちゃ~ん
そろそろいい? 」
バスルームの向こうから
あたしを呼ぶ声がする
ハッと考え事をしていた頭が
現実にもどる
そう・・・・
今あたしはユカから
礼子になっている
あれから味をしめた
あたしは出会系サイトに登録して
「礼子」
と名乗り
次々にお客を見つける
本当におかしいぐらい
簡単にお金をくれる人はみつかった
「ハイ 礼子ちゃん
今日のお礼 」
そう言って
私にお金をくれるのは
今の私の常連さんの三島さん
この人も簡単だった
三島さんは酒樽のような
かっぷくの良い男で
何でも銀行の
支店長をしているらしい
あたしに携帯を買ってくれたのも
彼である
頭は剥げていたが口ひげは
ほうきのようにフサフサしている
髪の毛を生やすために
必要なエネルギーのすべてが
髭に向けられているかのようだ
彼を気に入っているのは
早くすむことと
ハブリが良いこと
そしてあたしがどこの誰で
何をしてるかはまったく興味が
無いらしくよけいな
事は聞かない所
「 こんなに?多いわ 」
あたしはいつもより
多い報酬をみてびっくりした
「 いいの♪いいの♪
すっごく良かったから
そのかわり
今度学校の体操服を着て来てよ♪」
「うん いいよ♪
ありがとう
三島さん大好き♪ 」
「いやぁ~♪まいったなぁ~♪ 」
7万円をにぎりしめ
あたしは三島さんの頬にキスをした
たしかあたしと同じ歳の
息子がいると言ってたな・・・・
女子高生好きのロリコン
親父は以外と多かった
よくやるわと
どこかで冷めたあたしが言う
もっともこんなヤツを相手に
しているあたしも
クズ当然だろうけど
「牟田さん・・・・・
三島さん・・・・・
柳さんに・・・・
小島さん・・・・・」
三島さんと別れてホテルを出て
沢山の人が行きかう
御堂筋を指折り数えながら
あたしは歩いている
今月に入ってこの
4人とSEXしている
生理日を確認しながら
いろいろと考える
お金は信じられない
ぐらい増えていた
手触りの良い肌を彼らは好む
ドラッグストアで
スキンケア用品を買い込む
そして
大量のコンドームも・・・
ゼビアスの近くの
ファーストフード店に入り
機嫌よく2階を駆け上がると
一番奥のテーブルに
麻美が座っていた
「おっつかれ~~~♪」
麻美はシェイクを音をたてて啜ると
ニッコリ笑った
化粧で上手にソバカスが消えている
「もう最悪だったよ~~
あのオヤジ値切りやがんの」
あたしは麻美の向かえに
座るとカバンから
さっき買ったマスカラを取り出し
箱を破って空けて言った
「売れなかったの?パンツ」
「ううん 売ったけど
最初電話では
5千円って言ってたのに
会うと2千円に負けろって
しつこくってさぁ~
あっ
これ新製品じゃん!
試させて 」
そう言って麻美は
あたしのマスカラをとりあげ
まつげに塗りたくっていた
中学を卒業してから
麻美はもう学校には来ていなかった
最近では地元の暴走族に
出入りしていて遊び人になっていた
あたしは学園の手前
高校には行っていたけど
こうして週末には麻美と
つるみ一緒に悪いことをしていた
「え~??
2千円は安いね!
あれ
でも100均のパンツでょ? 」
「そうそう~
股の所にチーズを擦り付けてね
あのおやじあたしのだと
コロッとだまされていたよ 」
「 バッカなおやじ~~~ 」
あたし達はケタケタ笑った
最近悟ったことがある
罪悪感というものは
慣れと共に消えていくものだと
そして
あたし達がしていることは
「えんじょこ~さい」
というお金と義務の交換・・・
その結果生まれるものは
失望と相手に対する軽蔑・・・
そして何より
得られる報酬はすべて
自分の自由に出来るもので
魅力的だった
「そんでユカちゃんのほうは?
どうだった? 」
「うん いつもより多く
お手当てもらえたよ 」
「いいなぁ~~~
ユカちゃんばっかり
あたしの相手ってケチばっかり」
そういうと麻美はしかめっ面で
テーブルにつっぷした
あたしは反論しても
意味がないだろうと思い
ここに来る前から考えていた
麻美が食いつく言葉を言った
「そんなこといわないで
今日はあたしがおごるよ!
ボトル卸すから麻美ちゃんが
ボトルコールして
もらったらいいよ 」
「 本当? 」
ガバッと麻美が起き上がり
瞳は輝いている
その時
三島さんに買って
もらった携帯が鳴った
液晶に写った
メールの文字を見て
あたしの胸が高鳴った
「ジョージからだよ!
早く来いって!
行こっ! 麻美ちゃん」
「うん
今日はオールだよね!!」
ガコンっ!!
投げつけた空のシェイクが
見事にゴミ箱に収まった
あたし達は踊りながら夜の町へ出かけた
大阪ミナミ一番の繁華街
「宗右衛門町」通りを
一本外れた所にあるクラブ
「ゼビアス」は
ホスト従業員30人の
ミナミでも有名な今流行りの
大型ホストクラブであった
執事のような
黒服の男がドアを
開けてくれると
とたんに映画のような
世界が繰り広げられる
煌びやかな天井には
いくつものシャンデリア
大理石の床
いきかうレーザー光線
派手な音楽
そこにカッコイイ
若い制服を着たホストが
所せましと泳ぐように行きかう
開店からぞくぞくと
店に入って来る
女性客の手をまるで
お姫様のように高く掲げ
席にエスコートしていく
そう・・・・
ここホストクラブ
「 ゼビアス 」
はどんな女の子も
シンデレラのようにステキな
お姫様に魔法を
かけてくれる所なのだ
ここの従業員はある時は
王子様やナイト
家来または下僕に変身し
心から尽くしてくれる
まさにあたし達には夢と
愛を与えてくれる場所だった
麻美は入り口の
シャンペンタワーで
ケンと遊んでいる
そしてあたしは一番奥の
BOX席の隅に
今はジョージと一緒に座っていた
初めてここに来てから半年・・・・
あたしはすっかりジョージの
「専属 」になっていた
そしてホストはこの「専属」を
どれほど持つかによって
この世界の地位は
決まるらしく・・・・・
初めて会った時の
ジョージは新人だったけど
半年たった今は
彼は異例の出世をしていた
あたしはジョージには
お金持ちの家のお嬢様で
遊ぶ金には困っていないように
見せていた
みすぼらしい所は
見せたくなかった
自分が施設育ちなんて
バレたくなかった
もちろん「ウリ」のお金は
ここに来るために全て使っていた
最近覚えた
メンソールのタバコを
一本指の間に挟む
咄嗟にジョージが火をつける
薄暗いBOXの中お互いの顔が
親密に近づく
あたしはこの時が何より好きだった
「このヘネシーおろそうかな?」
「でも 高いよこっちの
6千円のターキーで十分だよ 」
ジョージはホストらしくなく
いつもあたしの財布の
中身を気づかってくれる
なんて優しい人
でもぜんぜん分かっていない
好きな男を喜ばせたいからだと
言いかけてやめた
「あたしはこう見えても
結構今日はリッチなんだよ♪
好きなボトルぐらい
おろせるんだから
ジョージはそんなこと
気にしなくていいの!」
ジョージはムキになって
抗議するあたしを
愛おしそうに見つめる
笑うと目じりが下がり
とても優しげになる
ありがとうとテーブルの
下で手をにぎられた
ジョージの今日の衣装は
グレーのスーツだった
ヘタをすると老ける色であるが
光沢のあるネクタイで
華やかさを出していた
今度 ステキなネクタイを
プレゼントしよう
「俺・・・・
ユカちゃんが俺の
専属になってくれてから
なんだかついてて毎日が楽しいんだ
半年前・・・・・
あの ひっかけ橋で
声かけて本当によかったと思ってる
これって
運命かな? 」
最近はこんなこと言われても
舞い上がったりしない
大人の駆け引きも覚えてきた
「ふ~ん・・・・
誰にでもそんなこと
言ってるんじゃないの? 」
くすくすとジョージが
あたしを見て笑う
だぶんそんなあたしを
かわいいと思ってくれている
「ユカちゃん達の年代って
ヘンに突っ張る所あるよね
褒めてるんだから
そんな時は素直に喜ぶもんだよ
じゃあ・・・・もう一回 」
ジョージがまっすぐに
あたしを見つめて言った
あたしはテレてしまって
ジョージの金色に光る
鎖骨を見つめていた
ジョージの体は淡い黄金色だ
あたしは日焼けした色黒や
ひ弱な色白の男には興味なかった
オリンピック選手のように
筋肉が際立つ逞しい体・・・・
何一つ欠けてなく
何一つとして余分なものはない
究極の完璧さ・・・・
おそらく自分が
惚れているからだろうか・・・・
ジョージの体はとても
温かそうで力強くしなやかだ
そしてジョージから放たれる
女をそそのかすような
蜜とバニラの香りからは逃げられない
「ゆかちゃんはかわいい」
ポッと頬が赤くなる
まっすぐにジョージの目が見れない
くいっとあごを捕まれジョージの
青い瞳が飛び込んでくる
「あ・・・・
ありがとう・・・・ 」
「よくできました 」
クスクス・・・・
ジョージが飲みかけの
水割りを胸にこぼした
こんな所は子供っぽくて好きだ
「あっちゃ~~・・・
酔っちゃったかな~~??
ユカちゃん拭いて 」
ジョージはあたしの手をつかみ
その手のひらを
自分の胸に押し付けた
あたしは息を飲んだ
温かくて 堅い・・・・
でも肌触りはベルベットの
ように滑らかだ
自分の手が勝手に動き
茶色く窄まった乳首や骨の突起
柔らかな肌やその下の
みぞおちに手をあてると
脈動が伝わってきた
クスクス・・・
「おっぱい触らないでね
感じやすいんだ」
そう言いながらも
ジョージはあたしの手を
胸に押し付ける
彼はあたしの反応をみて
面白がっている
あたしの体は彼の
熱い肌に触れて震えていた
今まで何人もの男と
体を重ねているのに・・・・
この人だけはちがう・・・・・
この人は未知の世界の
ように異質で独特だ
頭がボ~ッとするのは
決してウイスキーのせいではない
ああ・・・・・
あたしの初体験の
相手がジョージだったなら
天にも昇るような気持ちだっただろう
何故か涙がこぼれてきた
「辛いこと思い出したの?
泣きたかったら泣いてもいいよ」
ジョージはあたしの体を引き寄せ
胸に顔をうずめさせた
頬がジョージの胸にじかにさわる
あたしは鼻をすりよせ
ジョージの汗の味を記憶した
金で男の愛情の多寡を
はかろうとは思わないけど
こうしてジョージといると
過去の男達とつい比べてしまう
彼らはどうしてあれほどたやすく
自分に手を出してきて
あたしはどうして簡単に
何の代償も求めず体を
開いてきたのだろう
あたしって
もしかすると可愛そうな
女の子だったのかもしれない
こうしてジョージに
寄り添っていると
かつての男達と比べて
ジョージとは体のつながりがなくても
大切にされていると感じる
この甘い感情
最近ではプライベートなジョージも
自分のものにしたかった
でも
いったいここに来る
何人の女の子が
そう思っているだろう
このまま
ずっとジョージに
寄り添っていたい・・・・・
一人のボーイがジョージに
耳打ちしにきた
イヤな予感とこの
ひと時の終わりを告げる
「ちょっと 待っててね」
さりげなくジョージは席を立つ
さっきまで彼が座っていた
低反発のソファーが
ゆっくりと形作る
麻美が席に戻ってきて言った
「ユカちゃん!来たよ!
アイツ! 」
コクンとその言葉に頷いた
紫のボディコンスーツ
全身シャネルの女・・・
髪は前髪金パツを天井に
付きそうなほど
さか毛を立ててる
ニワトリを思い出させる
ほっそりとした体つき
厚化粧したまつげは
瞬きすると風が起こせそうだ
その女はジョージに
エスコートされるのが
当然のように優雅に手をひかれ
カウンターに座った
何かジョージに耳打ちしている
二人の体はとても密接している
ボソッ
「トサカ女・・・・・・」
あたしはその女を睨む
あっちもあたしを
見つけて睨み返してきた
湧き上がる嫉妬心
そう・・・・・
彼女は今はジョージの
一番の専属(エース)だったのだ・・・・・・
ホストクラブ・・・・・
この言葉を聴くとあなたはどんな
イメージを思いうかべるだろう・・・・
お金のために
女性の相手をする水商売
イケメン
のめりこむと
取り返しがつかなくなる
危険な香りが漂う空間・・・・・
どれも到底
良い印象はいなめない
でも あの時のあたしは
ジョージがすべてだった・・・
週末
大阪ミナミの繁華街
宗右衛門町のホストクラブ
「ゼビアス」は
大掛かりな舞台装置や
レーザーやハイテクを
駆使した舞台が繰り広げられる
豪華なショーホストクラブで
新しいミナミの顔だった
しかし
顔が変わろうが
時代が変わろうが
様々な人間が金や女
ギャンブルやサクセスを
求めてこの街に集まってくることは
変わらなかった
ゼビアスの
パウダールームは
100%の女性客のために
内装は高級ホテルのような
煌びやかさがあった
真っ赤な壁に取り付けてある
ペーパータオルを引っこ抜くと
あたしは濡れた手を拭き
鏡に写る自分の顔を
マジマジと見ていた
あたし・・・・・・・・
ユカ
もうすぐ17になる
普通の17歳といえば
学校や部活動・・・・・
好きになる人は同じ部の先輩?
いずれも
あたしには当てはまらない
もうすぐジョージの
ショータイムが始まる
そしてあたしは
念入りに化粧を直す
そう
これが
あたしを取り巻く世界
部活の代わりに朝まで
ホストクラブで遊ぶ
そのためには何でもする
煌びやかなネオンと高いお酒
早く大人になりたくて
幼さを隠す厚化粧は
日増しに濃くなる・・・
そんなことを思いながら
鏡の前に立っていると
トサカ女ことジョージの
1番の専属客
ユウコが入ってきた
とたんにパウダールームは
シャネルの香水の匂いが充満する
紫のボディコンスーツ・・・・
ピアスやネックレス
バッグや靴まで全身シャネルで
総額何万円ぐらいするんだろう
そして
がっちりスプレーで
立てている前髪は
たとえ台風がきても崩れないだろう
ユウコの全身を眺めてみる
なぜかあたしは
それをとても下品に感じていた
じっと
睨むようにユウコをみていると
ユウコはあたしの横に立ち
シャネルのカバンから
白い粉をだして手のひらに落とし
鼻から吸った
「何をしているの?」
思わず話しかけた
「何してるかって?
上物のコカインを
やっているのよ
・・・・欲しい? 」
ユウコはまるで
チューインガムを
友人に勧めるように
あたしに言った
長いツケまつげ奥の瞳が
あたしの反応を観察している
即座に首を振った
あら残念ね
こんな上物はめったに
手に入らないのよと
言いたげに目で笑う
そしてユウコは
もうひとさじを吸い込む
「美容にいいのよ・・・・
ってもいらないのよね」
馬鹿にしている?
そう感じるあたしだった
すると
麻美が勢いよく
ドアを開けて入ってきた
「はやく!はやく!
ユカちゃん!
ジョージのステージが
始まっちゃうよ!
おっと・・・ 」
麻美もトサカ女の
ユウコをみて口を閉じた
ユウコは白い粉をバッグに直すと
まるで何もなかったかの
ように髪を直し始めた
そして出口ですれ違う時
そっと ユウコが囁いた
「ジョージも好きなのよ・・・」
今何ていったの?
完璧に馬鹿にされた
ユウコは不適の笑いを浮かべ
さっそうとパウダールームから出て行く
金にものをいわせて
ジョージを独り占めする
勝者の余裕からか彼女は
あたしのことを哀れんでる
いやな女・・・・
でも今日はあたしにも作戦があった
あたしは小さくつぶやいた
「 ショータイム・・・・・ 」
「イッキ!イッキ!イッキ!」
イッキコールが響くなか
トサカ女ことユウコのテーブルは
沢山のホストをはべらせて
ひときわ
派手に盛り上がっていた
ユウコとその取り巻きホストが
次々とイッキをしている
そして
ユウコの横には
ジョージが座っている
酒はおもしろいぐらい
ユウコのテーブルに運ばれていた
「なんか
あそこのテーブルすごいね
なんでもユウコの誕生日らしいよ
そしたらジョージ君
ユウコの所から離れられないから
こっちのテーブルこれないね
あ~あ
なんか今日はつまんないね 」
麻美がメンソールのタバコを
ふかしながらため息をついた
「ちょっと~ん!!
麻美ちゃん!
俺がいるのに
つまんないのぉ~~~? 」
麻美の担当ホストの
ケンがタバコに火をつけながら
ほっぺを膨らませて
機嫌を損ねた
今まで麻美の手を
握っていたのに
少し麻美から離れた
途端に麻美があせる
「え?
そんなことないよ!
麻美ケン君がいたら
それだけでいいもん 」
「そんなこといっちゃって
本当はジョージが
いいんじゃないの~?
もう いいよ俺・・・・・・
すねちゃった・・・・・ 」
さっきまで麻美に
ラブラブだったケンが
手のひらを返したように
麻美の隣から去っていった
取り残された麻美は
慌ててケンを追いかける
そう
お客の女の子を
チヤホヤするのだけが
ホストの手腕ではない
彼らはこんな風に
時々
手のひらを返したように
冷たくなる
そして一見お客を
逃してしまうような
この行為が実は
寂しい女の子にとってはたまらなく
魅力的で夢中になってしまう
いわば手練手管なのだ
拗ねたケンが店の外に
出ようとしているのを
麻美が引き止める
何やら もめている
そして麻美が泣いた
ケンが抱きしめる
めでたく再びラブラブに
なった二人が肩を組んで
帰ったきた
ほら・・・・・
麻美はもうケンに夢中になっている
こんな行為をケンは
麻美以外の客にも
しているにちがいない
ホストの常套手段・・・・
恋の駆け引き・・・・・
ハタから見ていたら
なんて滑稽にみえるだろう
でも
恋している女の子には
それが何より真実で
本物の恋に思えてしまう
ケンはなにやら麻美に耳打ちをした
途端に 麻美がキャハハと騒ぐ
おそらく麻美の好きな
下ネタでも披露しているのだろ
でも・・・・・
あたしとジョージは違う
ショージはあたしに
駆け引きなんかしてこない
あたしはカルーアミルクを
片手ににっこり微笑んだ
そして
となりに座っているケンに
そっと耳打ちした
「え? うそ?
ユカちゃんマジ? 」
「うん お願い ケン君」
ケンはびっくりして
暫くあたしを見つめた
あたしは向かえのテーブルで
今やジョージに
しなだれかかっているユウコを
睨みながら言った
「思い通りにはさせないから」
ユウコもあたしを睨んでいる
あたしも目線をはずさない
握る拳に力が入る
お互い目と目を
合わせて火花をちらす
あたしは心の中でつぶやいた
「ジョージは渡さない・・・」
「は~~い!!
みんな楽しんでる~??
本日のクイーンが決まったよ!!
ピンドン頼んでくれてありがと~♪
その人は な な な~~んと!!
ユカちゃんだぁ~~~!!! 」
「従業員のみなさぁ~ん♪
ユカちゃんの所に集まって
ボトルコール行くよ~♪ 」
店内の照明はダンス用の
ミラーボールと音楽を止め
あたし達がいるBOX席にライトを集める
あたしはそれを聞き
思わず微笑む
客席からザワっという反応があり
驚くユウコの顔が見れて取れた
水商売のキングシャンペン
ピンクのドンペリヨン・・・・・・
その額は半端ではない
この店で最高の
価格のボトルだ・・・・
シャンペンだから
その日のうちに飲んで
しまわなければならなく
ボトルキープはできない
それゆえにそのボトルをおろすことは
あたしの担当のジョージの
最高のノルマに繋がる
だから今晩はジョージは
あたしの所から離れない
さすがのユウコもあたしが
ピンドンをおろすとは
思ってもいないだろう
しかも
ユウコの誕生日を狙って
「おおきく 3っつ!
チャッチャッチャッ♪
ちいさく 3っつ!
チャッチャッチャ ♪
今日もお酒が飲めるのは?
ゆっかっちゃんのおかげです♪
ラブリーユカちゃん
愛ラブゆかちゃん♪
ほんとに♪
ほんとにありがとう~♪
イェ~~~いいいいい♪ 」
約20人の従業員全員が
あたしのもとにひざまずく
ああ・・・
本当に気持ちいい・・・・
そしてこのハンサムなホスト達が
あたしだけのためにコールをしてくれる
ジョージが微笑みながら
ユウコのテーブルを
後にしてこっちにやってくる
その時のユウコの顔は
ひどいもんだった
あたしは言い知れぬ
勝利感に酔いしれていた
あたしはこの日のために
(ウリ)の金をぜんぶつぎ込んだ
知らない男に抱かれ
ながらこの日をずっと夢見てた
これでジョージを独り占めできる
ふたたびジョージが
あたしのとなりに座り
頬に軽くKISSをして言った
「大丈夫? ムリしてない?」
こんな時にまであたしを
心配してくれるなんて
なんて優しいの・・・・
あたしは感激していた
本日のVIP席に移動しあたし達は
その日ゼビアスの一番の客になった
これで
あたし達はゼビアスの客の中でも
もっとも重要な客いわば
(太い客)になりあがった
これからは対応も何も全部
他の客とは違う
その日の夜は本当に楽しかった
ジョージは終始あたしに
ボディタッチをし
あたしは何度も
ジョージに抱きついた
目の前でフルーツ盛りの中から
ピンクのドンペリがカチカチに
冷えてあたし達を誘っている
ピンドンはとても炭酸がキツイ
シャンパングラスに
注ぎ二人でかき混ぜ
炭酸を飛ばしてから飲んだ
麻美もケンを独り占めできて
さぞや満足できていることだろう
ジョージにしなだれかかって
向かえのテーブルを見ると
ユウコ達が会計キャッシャーの
前で清算をしている所だった
無理もないわ・・・
あたしにジョージを取られて
これ以上ここにいても意味がない
ユウコは無表情のまま
あたしを睨んでいたが
その目の奥に意地の
悪い光が潜んでいた
ユウコと視線が合うと
あたしは見下したものに対する
哀れみの笑いを投げかけた
そう・・・・
さきほど
ゼビアスのパウダールームで
ユウコにバカにされたのと
同じように
そして 挑発的な
視線をまっすぐ
ユウコに投げながら
ジョージの首に腕を回す
あたしの態度を見て
カッっとなったユウコは
荒々しく扉を開け帰っていった
この時のあたしは・・・
お金さえあれば
できないことなどなにもないと
本気でそう思っていた
朝のやわらかな日差しが
あたしを照らしている
まだ午前中で
気持ちよく眠れる時間
あたしは学園の自分の部屋で
ベッドを占領し安眠をむさぼる
先週のゼビアスでの
出来事は本当に素晴らしかった
一夜だけでも
本当に一国の
プリンセスになれた気分
ジョージは終始笑顔で
アフター客の一人に
あたしを選んでくれた
彼はアフターはめったにしない
そして
その後ケンと麻美と
あたし達4人でアフターで焼肉に
連れて行ってくれた
もっとも
その時のケンは酔っ払いすぎて
お店でつぶれてしまい
麻美はスネてふくれた
ケンはジョージが連れて
帰ったけど始発まで
一緒にいてくれた
すごくジョージに
近くなった気分
今度はいつ会えるだろう・・・・・・
でも すっかりお金を
使い果たしてしまっていた
あたしがジョージに
会うには早急に(売り)を
しなければいけなかった
欲望はさらに大きく膨らむ
ジョージの心をつなぎとめておくには
一枚や2枚のパンツを売った
額だけでは無理だ
もっと
手っ取り早く稼ぐ方法・・・
今夜あたり麻美を誘って
ナンパされにでも
行こうかな・・・・・
SEXの後
報酬の事を切り出すのには
少しテクニックがいる・・・
雰囲気とタイミングが
重要なのだ・・・
ジョージは・・・・
どんな愛を交わすんだろう・・・
途端にジョージと熱い常夏の島で
二人っきりのバカンスの光景が
目の前に広がった
あたしはうっとりと
二人太陽の下で愛しあって
いる姿を想像した
手のひらで
乳首が硬くなるのを
感じながらぼんやりと
乳房を片手でもんでいた時
「ひとりでお楽しみ中? 」
ドアから
からかうような声がして
あわてて身を起こした
ドアには生活指導教員の高木が
枠に持たれて立っていた
いつからそこにいたの?
ドアが開く音がしなかったけど?
「いつまで寝てるの
部屋に入っていい? 」
どうせ入るなといっても
無駄なんでしょ?
あたしは
無言で起き上がり
ベッドに腰を下ろした
この高木は赴任してきた時から
気に入らなかった
この女は蛇のように絡み
100キロはあるであろう
巨体ももろとせず
まるで車輪が付いてるような
なめらかな動きで部屋に入ってきた
「園長先生がとっても
心配しているのよ・・・・
最近あなたのよくない噂を聞くの」
なぜか
高木の顔は心配より
楽しんでいるような雰囲気がした
「よくない噂って?」
「心あたりない?」
「知らないわ 」
暫く二人の間に
奇妙な空気がした
あたしは自分の周りに
得体の知れない不安な
空気が流れるのを
肌で感じとっていた
高木はあたしの
部屋を歩き回り
いろいろな物を手に
とっては置いていた
高木は私の動きを目でたどる
何を企んでいるのか
目が輝いている
「そう・・・・・
しかたがないわ
本当はあなたの方から
うちあけて欲しかったのに
先日見たのよ
あなたが知らない男の人の車に
乗っている所 」
あたしの反応をみて
片方の眉をつりあげて
辛辣な笑みを浮かべて
こう言った
「車の中で何をしていたのかもね」
牟田さんといた時のことだ
なんてこと!
アレをコイツに見られていたなんて
「まったく・・・・
あんた達って・・・・・
本当に動物みたいなのね
ある一定の歳に
なると誰も彼もさかって
あんたを捨てた
親と同じことしてるの
わからないの? 」
彼女の眼はいじわるく輝いている
「園長先生もどうして
こんな子達を
養っているのかしら
どうせろくな
大人になりやしないのに 」
高木の鋭い視線が
あたし全身を舐めまわす
「フム・・・
たしかに男好きする体は
しているわね
それに誰とでもヤレる
才能もあるとしたら
とんだアバズレも使い用に
よってはアレね
実は・・・・
あなたの部屋で
これを見つけたのよ 」
一瞬で全身の血が凍りついた
高木の手に持たれていたのは
なんとゼビアスのマッチと
あたしの手帳だった
恐ろしいことに
その手帳にはあたしの
(ウリ)の客の
ことも書かれていた
「部屋に入ったのね!!
ひどいわ!! 」
あたしはすぐに手帳をひったくって
部屋を出て行こうとした
彼女の企みがわかったとたん
激しい怒りが一気に突き上げる
腕を掴まれた時は
全身に鳥肌が立った
「いい? ユカ!
聞きなさい!
あなた自分が何を
してるかよくわかってるの? 」
「 離して!! 」
ドアの前で二人はもみ合った
高木はあたしの
腕をつかんで離さない
この女が勝手に部屋に入って
家捜したことを許せなかった
ひどい!
プライバシーの侵害だ!!
そんなことをお構いもせず
高木は汚い唾を吐き
あたしにまくしたてる
「ホストクラブに通う
お金を稼ぐために
売春してるなんて!!
毎週
外泊しているのもその
ホストに会うためでしょ!
あなたまだ17歳なんだよ!
そんな事世間にばれたら
ウチの孤児院の
評判もガタ落ちよ!」
外の窓に顎をしゃくる
口調のきつさに
怒りがこみあげる
「このままじゃ
あんたの兄のように他の
孤児院にうつって
もらうしかないわね 」
そんな!
他の遠い孤児院に
うつされたら
ジョージに会えなくなる!
あたしは
途端におとなしくなった
高木は思案げにあたしを
見つめて言った
「あんたと取引してもいい 」
唐突な言葉だった
今はつかんだ腕は離され
高木は机の椅子に軽くもたれ
椅子は大きく軋んだ
「体を売るぐらいだから
他に何でも売るんだろう?
あんたが仕事をした
取り分の三分の一 」
一瞬間が空いた
「それで? 」
あたしは冷たい視線を
高木に投げ掛けた
「黙っといてやるよ
決してここの給料も
高くは無くてね
来週の夜も友達の所に
泊まるって言うんだろう?」
くっくっくっと
高木が笑う
あたしは高木の
手を振りほどきながら
悪態をつき外に飛び出した
向かいの部屋の学園生が
何ごとかと部屋からのぞいている
これ以上愚弄されるのは嫌だった
自分の間違いを
認めたくなかった
壁を殴り
怒りをぶつけてその場から逃げた
高木はあたしが逃げていく
姿を見送ると
大声でさけんだ
「ホストがいったい
あんたに何をして
くれるっていうんだいっ!! 」
春はまだまだ遠く・・・・・・
冷たい雨が降りそそぐと
一気に吐く息は冷たくなる
夕暮れから夜にかけて
大阪ミナミの夜の繁華街は
今から煌びやかな酒と
ギャンブルのテーマパークが始まる
あたしはあてどなくさまよった
行く当てなんてなかった
街を歩くと
酔っ払いや水商売のお姉さん
にぶつかり怒鳴られた
ゲームセンターに入って
テーブルゲームを眺めた
でも
遊ぶお金などなかった
ここに来る電車賃で
なけなしの全財産も
使かい果たしてしまった
ついこの間まで数十万円も
持っていたのに
たった 一日でその
お金は消えてまった
でも
後悔などしていない・・・・・
ドンペリをおろして
ジョージはすごく喜んでくれた
そう
あたしにはジョージの
笑顔がすべてだった
さらに町をフラフラ歩いていると
何人かの男の子に声をかけられた
けど
ついていく気にはならなかった
数時間してあたしは気が付くと
ゼビアスの非常階段に
小さくうずくまっていた
通いなれた所
結局ここしか来る所がなかった
ここなら
傘がなくても雨があたらない
昨日とうって変わって
なんて惨めな姿なんだろう
どうしよう・・・・
ウリをしているのがバレてしまった
他の孤児院にうつされたら
ジョージにもう会えない・・・・
きっと高木は園長先生に
このことをもう話しているはず・・・・
もう 学園には帰れない・・・・・
何も信用できない
いったいあたしとジョージの
何を知っているの?
ジョージはたまたま
ホストなだけなのに・・・・
自分のしてることは
悪いと思っている
でも・・・・
そんな
説教する大人があたし達を
買っているんじゃん・・・・
そう思うと涙が出てきた
暗い闇の中に聞こえてくる
雨音
暫くすると
一人の足音が聞こえた
その足音の持ち主は
あたしの前で止まり
そっと傘をかかげてくれた
「あ~あ・・・
まるで 捨て猫だなぁ~・・」
目の前にはまだ出勤前の
ジョージがいた
白いシャツに中は何も着ていない
髪もまだセット前なのか
少し乱れている
あたしは
どうしていいかわからずに
ジョージに電話してすべてを話した
そう
ウリをしていたことを除いては
「てっきりお金持ちの
お嬢様だと思っていたよ・・・
何にも苦労しないで
育ってきたのだと・・・」
あたしはには今自分がどういう顔を
しているのかわからなかった
お化粧もしていないし
いつもの店にいる気の強い
自分の姿ではない事だけはわかった
「・・・どうしようか・・・
学園にもどったほうが
良いとおもうけどなぁ~
っても
俺もほぼ家出同然のような感じで
大阪にきたからな人のこと言えないしな」
ひざをかかえてうずくまる
あたしの前に
しゃがみこむジョージ・・・・
ジョージの言葉が優しく染みた
しばらく二人で黙り混む
どうしようもなかった・・・・・
頼れるのはジョージしかいなかった
でもジョージはきっと困ってる
たぶんあきれ果てている
ことだと思う
そうあたしはこれで
ジョージに愛想をつかされる
だって一文無しの醜い
孤児院出の未成年を相手する
ホストがいったい
どこにいると言うの?
あたしはもう一銭も持っていない
ただの汚い孤児
これであたしの恋も終わる・・・・
最後にジョージにさよならを
言いたかった
俯いているあたしにの前にしゃがみ
同じ目線でジョージはあたしに言った
「ねぇ 俺ん家来る? 」
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