テラーノベル
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「あーあー」
「マイクテス マイクテス」
「皆様方にケイコクします
現在地球人類は悪性宇宙人による洗脳攻撃
を受けています」
「繰り返します 現在地球人類はー」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
人の密度が多い街を歩いていると、いつか 自分とすれ違う気がして苦手だ。
電車の中 頭で「今わたしの声が聞こえている人は右手をあげてください」なんて言ってもあたりまえに人は手をあげない。
「…ロ!」
世界は未知に満ちていて ほんとは自分以外の人類は全員AIなのかもしれない。
なんて 意味もなくくだらない妄想をするのは 小学生で卒業した。
「…ポロ!」
(今日小テストあったかなぁ…)
「アポロ!」
「我を置いていくなんてけしからんぞ!! 」
「…ニナレが寝坊するからでしょ」
「なっ!? してない!」
「我はヒトの欲求を超越した存在!!
故に睡眠などという行為は必要なくてー」
「あーはいはいわかったわかった。」
このよくわからない理論を述べているのはニナレ。なぜかわたしに付きまとう、皆の嫌われ者。
とてもとても騒がしい。
ただわたしは、存在もしない生物について話す彼女の騒音が嫌いだ。
「今日も信号を受信したぞ!!」
「…なんの」
「救助信号だ!!」
「へぇ」
「!? なぜそんなに冷静でいられる!!」
「ウソじゃん、そんなモノは存在しないんだよ」
「ウソじゃない!!!!」
「ウソだよ、虚言癖ヤローだよ。」
「…ッ」
「訂正しろーーーーー!!!!!!!!」
「我を愚弄する者は何びとたりとも許さーーーーーん!!!!!!」
わーーーん と泣き喚いてしまった。
こんな道のど真ん中で道におでこをつけてしまっては、ジャマになってしまう
「…… ほら、立てる?」
「ぐすっ…ずび… …うん」
「…顔ぐしゃぐしゃ」
「うるさい…」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
クラスメイトが必死に授業を受ける中
ピー ガガッ
わたしはニナレに連れられ、屋上の風をあびる。
「また始まったよ」
「誰かやめさせろよ」
「あーあー
マイクテス マイクテス」
「皆様方にケイコクします
現在地球人類は悪性宇宙人による洗脳攻撃
を受けています!!」
「悪性宇宙人は 地球人の脳に劣悪電波を流し込み、 価値観や思考を徐々に変え支配しようとしているのです!!」
「アポロ! ついてこれてるか!?」
「いや全然」
「我は真面目な話をしているのだ!
聞く気がないのなら帰れーーっ」
「帰ってもいいの?」
「いいわけあるかぁ〜〜!!!」
「わーー! 聞く!! 聞きます!!拡声器持ちながらこっち向いて叫ばないで!! 」
「ふん なぜわたしがこのようなことを知り得ているか疑問に思う者もいるでしょう!!」
「もはやいないでしょ」
「わたしはここではない超常生命体が住まう次元の彼方、『アルカディア次元』というそれはとても美しい世界からきました!!」
「悪性宇宙人は地球人類を洗脳し蓄え、アルカディアに住む生命を襲おうとしています!!」
「わたしは、悪性宇宙人を倒すことのできる究極の戦士を『アルカディア』へ遣わすため、この惑星に降り立ちました。」
「どうか目覚めに至った使徒の方がいましたら、このわたし摂粉ニナレまでに連絡を」
「繰り返しますー」
毎日毎日、ニナレは世界に向かって爆音の妄想を響かせる。
ニナレはきっと妄想の中で生きているのだ。
夢の中、覚めない夢にずっと幽閉された日常。それは一体どんな気分なのだろう。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「失礼します。」
「あ、アポロさん。ごめんね、放課後に。」
毎日毎日ニナレがあんなことをしているので 定期的に先生と相談をしている。
「知ってるかい?最近、ニナレさんが妙なサークルを作っているらしいんだ」
「サークル?」
「『天啓せし因縁律の会』って言ってね、とてもニナレさんらしいよ。」
「…はぁ」
「きっとニナレさんは自分だけの王国が欲しいんじゃないかな。」
「王国…」
世論に穢れて塗れた者の立ち入りを禁ずる、選ばれし者だけの王国…
「…またなにかあったら話そう、僕でよければ話になるから。」
「ありがとうございます…さようなら。」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「遅かったなアポロ!! 早く帰って作戦をねるぞ!!」
「…先に帰ってていいよ」
「そんな冷たいことはしないぞ!!」
「それよりも緊急事態だ。さっき通信があった。
悪性宇宙人はときどき地球に偵察へ来ているのだ。その情報を外部から取り入れることに成功したらしく、それが今日だそうだ。」
「悪性宇宙人が地球に降り立った時に拘束できるように、身を構えておけ」
「はいはいわかったよ。」
「常にだぞ!!」
そんなこといわれても、拘束できるような物なんて持ち合わせてないし。
「あっうどん屋だ!!うどん屋あるぞアポロ!!」
なんだ、うどんで悪性宇宙人とやらを拘束でもするのか?
「今日はたべません」
「えーっ」
そんな話をしていると、ぴかっと視界全体が白く光った。
「?」
何今の…?
きょとんとしていると、視界の外から急にニナレが
「来たぞ!!敵だ!!!!!!」
「え 敵? 今のが? どこからかの強い光を一時的にあびたとかじゃないの」
「空を見るのだ!!」
空…
そこには
大きく大きく途方もない無限の空に
大きな亀裂が入り 亀裂の中からは 幾何学の モザイクが 見える。
「あれは 無 だ。」
ニナレは言った。
そのモザイクは、なにか惹かれてしまう。
そして
全ての感覚がなにか
ぎりぎりとじわじわと
錆びた重い歯車が動き出すように
狂いまともに
歩け な く。
「ほらな!! 言ったであろう!!」
思考回路がぐちゃぐちゃに混ざるような感覚で 辛うじて覚えているのは
ニナレの満面の笑みとドヤ顔だった。
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