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歓声と拍手に包まれる校庭。
観客席の隅に腰を下ろした悠真は、グラウンドを走り抜ける小柄な背中をじっと目で追っていた。
白いハチマキに揺れる黒髪。
息を切らしながらも必死にバトンをつなぐ姿は、幼い頃「妹ちゃん」と呼んでいた面影とはもう違っていた。
(……あの子、こんな顔で走るんだな)
胸の奥で小さな熱が広がっていく。
ただの“妹”のはずなのに、その真剣な横顔に目を離せなくなっていた。
隣で亮が声を張り上げる。
「おー、頑張ってんな、咲!」
悠真は頷きながらも、自分の胸がざわつく理由をまだうまく言葉にできなかった。