テラーノベル
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バトンをつなぎ終えた咲は、大きく息を吐きながらトラックの外へと歩み出た。
足は震えているのに、不思議と胸の中はすっきりと澄んでいた。
「咲、おつかれ!」
美優が駆け寄ってきて、タオルを差し出してくれる。
「ありがとう……」と受け取り、額の汗をぬぐった。
ふと、観客席に視線が吸い寄せられる。
白いテントの下、ズラリと並ぶ人の中に――。
(……悠真さん、来てるかな)
見つけられないまま、胸の奥がそわそわと落ち着かない。
けれど、どこかで確かに“見られていた”気がして、頬がほんのり熱を帯びた。
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