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私の「街に行きたい」というわがままを、イザナギさんは聞き届けてくれた。そして四聖獣のみんなに商店街、建造物を案内してもらい、『管理局』の見学中、突如として警鐘が鳴った。
ジリリリリという大きな音が管理局 中に響き渡り、あちこちでサイレンの音が鳴り響く。ここの仕様を全く知らない私でもわかる。ただ事じゃない。
「ねぇ、一体何があったの?」
青嵐に尋ねる。
「ここには魔界につながる門があるという説明を受けたと思います。その門が、門としての役割を果たしておらず、魔界から何者かが侵入しているそうです」
と、簡潔でわかりやすい説明をした。
「取り敢えずはここから逃げよう!琳寧ちゃん!」」
玄翠が私の手を引く。
「他のみんなは…?」
「みんな戦闘が得意なんだよ。だから兵士達の手伝いをして、悪魔を倒す。みんなの心配はしなくても大丈夫だよ」
そうは言われても…。
「それより、この事を早くイザナギ様に伝えるのが僕らの任務!行こう!」
そう言って、玄翠は私の手をしっかりと握って走り出す。
私達がいたのは管理局の最深部。もう少しで門が見れるという場所にいた。そして、もしものことがあって悪魔が出てきたときに、すぐには外に出れないようにするため、管理局内部はとても広く、入り組んだ構造になっている。だから悪魔は外に出る前に兵士によって倒されるらしいが、兵士側も同様に苦労するだろう。
私たちの現在地なんてわからない。でも、少しは門から離れたはず。
突然、地面が揺れた。それと同時に、猛獣のようだけど、聞いたこともないような咆哮が、後ろから聞こえた。ここまで声が届くなんて…。
「もう天界に入ってきたの?!いくら何でも早過ぎじゃない?!」
玄翠はかなり驚いている様子。それほど異常事態なんだ。
走って、走って、走り続けてもまだ出口には辿り着かない。そろそろ疲れてきた。迷路のようになっているこの道のせいだ。正しい道は最長距離らしいが、何でそんな設計にしたのだろうか。
なんだかんだありつつ、迷路のようになっているこのエリアからはもう少しで脱出できそう。
「あーめんどくさ。」
急に玄翠は立ち止まり、そう言った。
「え、どうゆうー」
と言いかけたとき、私たちの少し後ろから凄まじい音がした。振り返ると壁に大きな穴ができており、その中には巨大な魔物がいた。私たちを追って、壁を突き破りながら走ってきたんだ。
「この壁、結構頑丈なはずなんだけど…琳寧ちゃん、1人で出口まで行けそう?」」
心配だけど、行くしかない。私がここに残っても、できることは何もないのだから。
「うん、わかった!」
迷路から抜け出すと、たくさんの兵士が待ち構えていた。
「無事でしたか?!」
「この先が外です。早く逃げてください!」
そう言いながら私を外へ連れ出す。そうして、ついに脱出することができた。
…そう思っていた。
「全く、なぜこんな事が起きたのだろうか」
「しっかり管理していたはずなのにな?」
私の周りにいる兵士達が口々にそう言う。
「ま、後処理さえできればあの方にも叱られずに済むだろ」
あの方…イザナギさんのことかな?
「へへ、そうだな。んじゃ、後処理。始めますか!」
そう言うと、私を囲む兵士達の姿がみるみる変わっていった。
琳寧ちゃんが街に行っている頃、私は凛音くんと雑務をしていた。今日はいつも以上に仕事が多いし、今まで溜めていた仕事を消化しないといけないのだ。でも凛音くんはずーっと、琳寧と一緒に街に行きたかったのに。何で行かせてくれなかったんだよ。他のやつに頼めよ。などと愚痴を言っている。
「君、琳寧ちゃんのこと好きすぎでしょ。そのうちウザがられるよ…?」
と、少々嫌味っぽく言った。その途端、無いはずの犬の耳が垂れているように見えるほど、分かりやすく落ち込んだ。いやこいつマジかよと思うほど、琳寧ちゃんへの愛は大きいのだ。だからこそ、私はそれを利用する。
「残っている仕事、みんなが戻ってくるまでにぜーんぶ終われたら、琳寧ちゃんにいい報告をしようと思ったんだけどな〜」
凛音くんの犬耳がピンッと立ち上がった。
「でもこの調子じゃ、終われそうにないか〜。あー残ねnー」
「よっしゃイザナギさっさと仕事しようぜ!!」
急に乗り気になったなこいつ。
でも、そのお陰で今日は早く終われそうだ。
事務仕事もあるが、それ以外の外に出る仕事も当然ある。私たちは外での仕事を先に消化することにした。凛音くんが動きまくってくれたお陰で、サクッと終わった。さてあとは事務仕事。家に着き、少々休もうとしたところに、報告係の天使が部屋に飛び込んできた。緊急のようだ。
「報告です!管理局で、悪魔が天界に侵入しているようです!すぐに応援に行ってください!!」
それを聞いた瞬間、凛音くんの周りの空気が冷たくなって、
「行くぞ。」
のただ一言。あちゃー、これ怒ってるわ。
私たちはすぐに準備を済ませ、管理局へ向かった。
管理局についてすぐ、異様な光景に私は目を疑った。
私の周りを魔獣が囲む。でも助けてくれる人はいない。魔獣の数は約20体ほど。猿のような見た目をしていて、言葉を話す。全員、片手には剣や斧、槍などの武器を持っているが、私は無防備。
「美味そうなガキだ」
「柔らかそうな肉だ」
…なるほど。彼らは私を食料としかみていないようだ。
でも何でだろう。不思議と、彼らを怖いと思わない。
突然、私の右後ろにいた魔獣が飛びかかってきた。その魔獣は私にのしかかる。髪を掴み、斧を首元に突き立てる。私はその斧が自分の首に当たらぬよう、離そうとする。
「ぐっ…」
上手くバランスがとれない。ふらつく私に、前からもう一匹の魔獣が飛びかかる。
本能なのだろうか。自身の首元に突き立てられた斧に思いっきり力を入れて、刃先を反対側に向けた。そしてそのまま前に突き出し、私は回った。運が良かったのか、前から来ていた魔獣のこめかみに命中した。かなり深く入ったのだろう。彼が動くことはなかった。それを見た後ろの魔獣は怖気付き、斧を握る力が弱くなった。その隙に完全に斧を奪い、自分の髪ごと切って引き剥がすことに成功した。そして私は斧を振り上げ、魔獣の額に目掛けて振り下ろした。
なんだろう。魔獣、というか誰かと戦うことすら初めてだというのに、そうではない感じがする。体が覚えているというか、何というか…。
その光景に怯んだ魔獣もいれば、尚更興奮する魔獣もいた。今度は一気に襲いかかってきた。でも…そんなに一度に相手できない!
覚悟を決めようとしたそのとき
「墜ちろ」
どこからかそう聞こえたかと思うと、空から小さな火球が、ものすごい速さで降ってきた。その火球は全ての魔獣に一つずつ、正確に脳天を貫くようにして降り注いだ。
「そこの女の子、怪我はない?」
姿は見えないままだけど、声は確実に聞こえる。
「はい、怪我はないですけど…あなたはー」
と言うと、被せるようにして
「怪我がないならよかった!ごめんね、うちの馬鹿どもがそっちを荒らしちゃって。僕の指示、ぜーんぜん聞いてくれなくてさ」
と、話し出した。
「そっちのお偉いさんに『ごめんなさい』って言っておいてくれない?」
「え、ちょっと…」
「じゃーね!バイバーイ!」
と言って、もう声は聞こえなくなった。
いや自分勝手すぎでしょ。