桜が舞う、新しい出会いの季節
高校1年生の俺の初恋はその時やった
いつもより早い時間に目覚める
俺は朝に弱いから、寝ぼけながら鏡の前に立つ
『うぉーしッ!』
今日から憧れの高校生
よく漫画で、入学式の日に恋に落ちるのが定番やけど、 俺はあんまし興味ない
むしろ嫌いや
イチャコラして何が楽しいのか分からん
いつもより綺麗に髪をセットする
『あッ!?』
昨日髪洗ってねぇ〜〜〜〜
高校生活が楽しみすぎて浮かれてたんやった……
『最悪や〜…』
今から洗っても間に合わんし、諦めるか…
髪をセットして歯磨きを終えて、朝ご飯を作るためにキッチンへ向かう
『いつものでええか……』
食パンの上にバターを塗ってトースターの中へ
数分後、チンッと音が鳴る
取り出してリビングへ向かうと、机の上に紙切れが
【ママとパパはおしごとにいってくるね!
しょくパンの上にすきなたべものをのせてチンしてたべてね!
じぶんからちょうせんしてみよう!ファイト☺︎】
随分前に書かれた母親の字
漢字を使ってへんことから俺が小学低学年辺りに書いたものだろう
俺の両親は仕事に命で、家事や育児なんか全くもってせーへん
なのにこういう"偽りの愛情"は注いどるみたいやった
『気持ち悪…』
まぁ高校生にもなって毎朝同じもん食っとるのも大概やけどな笑
『ごっさん…』
食べ終わり、制服に着替える
初めて高校生の制服に腕を通して実感する
『おお…これが…… 』
中学の制服は学ランでぴちぴちやったから、こんな軽いのが着れるのは凄いな…
ブレザーやけど、ボタン外しちゃまずいか…?
『………』
登校初日でんな事やると浮くからやめとくか…
1番上のボタンまで留め、ネクタイをきっちり締める
ズボンも変なところはない
『っぱ新品の匂いやな〜』
布の匂いが部屋中に充満している
『あ、今何時や?』
7:26
家から学校まで自転車で15分
8時10分までに着けばええから、家を出るのは50分くらいからでええか
まだまだ時間あるなぁ…何しよかなぁ…
結局また鏡の前へ
ソワソワしすぎて落ち着かへんねん
あー誰がいるんやろうか、知っとる奴おってほしいなぁ
やっとの思いで受かったんやから青春くれよほんま、
そんなこんなしていると7時49分に
『あ、行かんと』
鞄を持って 家を出ようと玄関のドアノブを握る
『………』
ふと後ろを振り返り、
『行って…ッ…きます……』
誰も居るはずのないリビングへ、そう呟く
"行ってらっしゃい"
幻でもええから、その言葉を聞きたいが為にやっている
俺の夢は子供の頃のままだ
自転車に足をかけ、スマホの地図でルートを確認する
『うし、行くか』
いざ、高校へ!
コメント
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スーッ 好き((