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モノクロナツキ
#イケメン
「希導、おい希導!」
「はっ、あ!はい!」
「夏休み終わってから様子が変やで、何かあったんか?」
夏休み明けの放課後、日が沈みかけて雲の隙間から夕焼け空がオレンジ色の光をさしていた。
恵さんの声で我に返る。
「まぁ、帰省中色々ありまして」
「なんや?紫音さんと喧嘩でもしたんか?」
「その逆です。距離は縮まりました」
恵さんと廊下に出て並んで階段を下り、職員室へ向かう。
「惚気話はええ。で、何があったんや?」
「恵さんは鬼信じます?」
「話が飛躍して、質問を質問で返すなと言いたい。が、繋がりはあるんか?」
「はい」
「半疑6、半信4やな」
タッタと、足音が並ぶ。
「桜花姉曰く、俺たち希導家は鬼の末裔らしいです」
「何か証拠は?」
「俺たちには頭にコブがあるんです」
「触ってみてええか?」
「はい」
恵さんは俺の頭部を撫でる。
「確かにあるな」
「それ、人間の遺伝子が強すぎてツノにならず、中途半端にできたそうです」
「ほうほう」
「恵さんは桃太郎知ってますよね?」
「当たり前や」
俺は桜花姉に教えてもらった桃太郎の伝承を恵さんに話した。
「桃太郎が賊で、鬼が守った、か」
「信じられませんよね?」
「いや……希導、お前山に入ったことあるか?」
今度は恵さんの方の話が飛んだ。
「ないですね」
「この島の熊やイノシシはな、人を襲わないんや」
「なんでですか?」
「伝説が正しければ、鬼が人を襲ってはいけないと言い聞かせたと言われとる」
「はぁ……。それと今の話題にそれは関係あるんですか?」
「あるで。この島で犬見たことないやろ?」
記憶を巡らせる。
「そういえば……」
「この島に犬が来るとな、みんな人を何かに取り憑かれたかのように襲い始めるんや」
「熊やイノシシは人に危害を加えないのにですか?」
「犬だけやない、猿とキジもや。桃太郎が仲間にした動物が牙を剥く。そう考えれば桃太郎が賊で、例えばや、例えば桃太郎の怨念がこの島に留まってるとあれば、辻褄が合う。オカルトやからにわかに信じ難いやけどな」
「実は桃太郎の呪いというものがありまして」
「なんや?」
恵さんが立ち止まる。
「希導家の人間と結婚した人は長生きできないそうです」
母から告げられた事実を恵さんに告白する。
「………………」
恵さんが眉に皺を寄せて黙る。
「そんな話信じられませんよね?」
「いや、うちもおかしい思うてたんや。桜花さんのお父さん。それと希導、お前のお母さんの旦那さん。それと、うちのばーちゃんから聞いた話やけど、希導家の結婚相手は籍を入れて2年から5年くらいには亡くなっとる。ここまで来ると真実味は大きくなるで」
恵さんが真っ直ぐと俺の目を見つめる。
「それでや、それで紫音さんと過ごすのが怖くなったんか?」
「そうですね。帰省先の祭りで死神と名乗る女の子と出会って、あと数年の命と告げられて怖くなったんです」
「なんや、またにわかに信じ難い人物が出てきたな」
「はい。その子が本当に死神かどうかは分かりません。分かりませんが、記憶の片隅にあった『早死する』と告げられて覚悟はしてましたが、足りなかったのか、怖くなったんです」
「そうかいな……」
恵さんが頭を掻きむしる。
「希導、うちは呪いやら伝説やらはどうしようもないと思う。けどな、最期まで紫音との時間を大切にしぃな。夏休みが終わって、生徒会の引き継ぎがあって、希導を生徒会長にして、紫音さんも生徒会に入れる。うちも美咲先生もそのつもりやった。だけどな、考えが変わった。希導、お前は生徒会クビや。紫音との幸せな時間を過ごすんや。美咲先生にはうちが上手く説得したる」
「その必要は無いぞ」
俺たちの背後から声が響いた。
美咲先生が俺たちのすぐ後ろに立っていた。
「「いつからいたん」」「や!?」「ですか!?」
俺たちは同時に叫んだ。
「鬼の末裔からだ。お前達がいつまでも学級日誌を提出に来ないから出向いてみたら、随分話し込んでいたからな」
「でも、美咲先生は鬼を信じていないんじゃあないでしたっけ?」
「つい今まではな」
「信じてくれたんですか?」
「犬や『早死に』やらの話を聞いたら疑問が解消されたんだ。希導桜花さんの奥さんの旦那さん。そして希導守のお父さんの死は、あまりにも不自然であまりにも突然だったからな」
美咲先生が見せたことの無い神妙な表情。
「希導。相川が告げた通り、お前と朝露さんの生徒会入はナシだ。彼女を大事にしてやれ」
「はい……!」
何故だろう?涙が、涙が溢れて止まらなかった。
「ありがとう……ございます」
そう絞り出すのがやっとだった。
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