いつも通りの平凡な学校生活を過ごす。
なんなら家に帰ってニーゴの新曲のイラストを描いていたいんだけど。
今描いている絵は…、まふゆをイメージして描いているんだよね。
奏が今回作った曲の最初の歌詞は
『私に気を使わなくて良いよ どうせ無駄だから』
心を抉るような歌詞が特徴な曲。別に何か怖い言葉を使っているとかではないけど。いかにも『ニーゴ』って感じな曲。
まふゆの心の中を曲で表そうっていう瑞希の案から生まれたんだよね。そういう点では瑞希を尊敬するな。
やっぱり奏はすごくて。
自分の限界までまふゆを表したいってずっと言ってて。
綺麗にまとまっているように見えながら、影で不協和音も混ざってて。
その挙げ句、シンセサイザーも入れたいって、昨日はずっと作業してたな。
そんな大切な想いがある曲のイラストを手掛けるのが私だ。
正直、全部は表せない。
というか、表せれるかすら分からない。
あんなに才能に塗れているまふゆの辛さも理解できてないことも結構あるし。
でも、自分たちが想っていること、願ってることはきっと一緒。
彼女を救うこと。
奏を中心に、まふゆを救う。
今は言葉とかイライラすることとかすごいあるけど、いつか、まふゆの本当の想いで自分らしく生きれるように。
そして、私たちも少しでも楽に生きれるように。
「よーし!早く学校帰って作業するぞー!」
まだ学校にもついてないけどね。
「あ!絵名さん!」
「あ、白石さんおはよう」
この子は私の後輩。白石杏ちゃん。
ビビッドストリート?っていうところで活動しているみたい。
そして可愛い相棒ができたとか。
「あ、瑞希から聞きました?絵名さんに直接は関係ないのですが、新しい転校生が来るんです!」
あ、例の子じゃん。
そんなに皆気になってるのかな。
「うん、瑞希から聞いたよ。そんなに何で皆気になっているの?」
「それは、多分ですが…」
「世界的に有名な絵師の東雲先生の子供だからじゃないですかね」
「えっ?!」
あの?東雲先生の?!
「息子さんも本当は絵をやらせたかったらしいんですけど、歌に興味を持っているらしくて。本当だったらあの有名な美術学校に行かせるはずだったらしいんですけど、こっちが良かったらしいです」
そうなんだ。
東雲先生の子供が私と同じ高校にいるんだ!
でも瑞希から聞いた感じだとあんまりそんな雰囲気では無さそうだけど。
「興味ありますか?」
「え?うん、興味はあるけど…」
「実は私もう彰人と電話交換したんです!」
彰人…?
息子の名前、あきとって言うんだ。
初耳かも!っていうか…、
「何で白石さんが?」
「実は彰人は私とおなじストリート系音楽だったみたいなのでノリで!」
の、ノリ?!
「あはは…、いかにも白石さんって感じ…」
「いろんな話を聞かせてくれてありがとう白石さん」
「こちらこそ!ではまた!」
そっか…。東雲先生の息子さんがこの学校に…。
でも歌をやっているんだ。
っていうか、名字が同じなんだよね。「|東雲《しののめ》」って結構珍しい方だし。
まぁ、そういう人いたら話かけてみよっかな。
「って、そうえいば日直!」
「失礼します。2のDの東雲絵名です。日誌取りにきました」
職員室ってなんか嫌いなんだよね。注意受けるところって感じだし。早く出たい。
あれ?いつもここにあるはずなのにない…。少なくとも私が前日直だったときにはこの棚の上にファイル置いてあったはずなんだけど…。
「あ、鈴木先生!あの、日誌ファイルってここにあったはずなんですけど、今見たら無くて…。どこにあるか分かりますか?」
「ごめんなさい、東雲さん。昨日私が家庭科を1のCに教えていた時にもしかしたらチェックで持っていって、それきりかもしれないわ。すみませんね」
「あ、はい。わかりました。ありがとうございます」
今度は1のCに行くの?本当に面倒くさいんだけど。そもそも何で忘れていく訳?
でも忘れたら怒られちゃうし…。
「失礼しました」
はぁ…。ここが1のCか。
知り合いいないんだよね。瑞希と白石さんは確かAだからなぁ…。
本当にこういうことが嫌い。だけどファイルが無いと余計に困るし…。
私が1年の廊下をうろうろしていたら、不意に誰かに肩を叩かれた。
「えっ?何?」
それは男の子だった。とても穏やかな感じの顔をしている。髪はオレンジで黄色のメッシュが入っていたんだ。
「急にごめんなさい。オレ東雲彰人っていうんですけど、ファイルですよね。この…」
東雲、彰人…?
あ、東雲先生の…?!この子が噂の転校生?!
彼の手に持っていたのは、間違いなく私のクラスの日誌ファイル。
「あ、ありがとう…?」
「いいえ、気にしないでください!」
満面の笑みを見せる。え?可愛い…。瑞希から聞いた感じだと全然こんなイメージじゃなかったのに…。
『なんかえななんに似てるなーって』
どこをどう見たらそんな言葉になるのよ。
っていうか、まだ転校してきてそんなにしてない子にやらせるって…。1のCってなんか悪い印象あるから心配かも。前期に結構トラブルあったし。
『えななん?なんかまだボクたち入学して2週間なのに、C組がトラブルっていうか、激しい感じの問題あったんだって。なんか中学校同じ子たちが偏差値低かった他の中学校の子をいじめたらしくて。その子自体は頭まぁそこそこ良かったらしいけど…。で、その子散々言われて今不登校気味らしいよ』
「東雲くんもそんなことに巻き込まれないといいな…」
自然にこの言葉が出てた。
まだ会って1日も経っていないのに…。
ただ何でかは分からないけど、
「東雲くんを守りたいって思うんだよね」
❖ ❖ ❖
「何かセンパイのこと知ってた気がするな」
コメント
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すみません主です いいねって連打できるんですね。始めたばっかりなので分かりませんでした。 いいねくださった方ありがとうございます