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拝啓
若井滉斗様
初めての手紙に緊張していて、あんまり崩すのもあれだけど、堅苦しくするのもね。
お元気ですか?お腹を出して寝ていませんか。お酒弱いんだからあんまり飲み過ぎないで下さいね。身体のことはもちろん、元貴は晩酌嫌いだから介抱してあげれる人が居ないのを忘れないようにね。え?年上ぶるな?僕の事年上だと思ったこと無いって?部屋も散らかってるって?耳が痛いなあ。こんな場だからお節介焼かせてくださいよ、一応最年長だし。
話は変わるけど、色々と僕らの事を裏で支えてくれていたみたいですね。貴方が居なかったら最後まで僕らは気持ちが通じ合えないままでした。本当にありがとう。友人として、メンバーとして、今まで沢山救われました。心から感謝しています。特に同居中は、僕が気分が落ちた時にそんなに好きじゃないって言ってたのにきのこ料理を作ってくれたよね。どれも美味しくて心が満たされていくようでした。僕の料理がわんぱくでも全部食べきってくれて嬉しかった。最初はあんなに冷たかったのに、それが信じられないほど優しくしてくれて、受け入れてくれてありがとう。笑
10年間一緒に仕事が出来て、出会えて本当に良かった。カッコよくて誰よりも優しくて料理上手な若井、大好きです。来世でも仲良くしてくれたら嬉しいな。
藤澤涼架
敬具
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拝啓
大森元貴様
こんな風に手紙を書くのは初めてだから、ちょっと緊張します。
文章がおかしい所があっても笑わないでね。こんな形でも一応、遺書のつもりだから。そうそう、それで言うと僕の家のゲームは良かったら貰って欲しいかもです。合鍵渡したよね?欲しいって言ってた限定モデルのコントローラーもぜひ使ってください。元貴は家にいたらゲームか作曲の2択になってるけどちゃんと休んで下さい。夜更かし厳禁です。休むのが苦手なのは分かってるし、今の僕が言えたことじゃ無いけど…。本当に体を大切にしてね。あと夏にアイスを食べ過ぎないでね。一応の最年長からでした。独り言じゃないからね。
ところで、ちゃんと伝える機会がゼロに等しかったから、今ここで言います。僕は元貴の歌が大好きです。ずっと聞き続けたいし、世間にも忘れないで欲しい。体調に関して口酸っぱく言うのはそういう事です。勿論歌だけじゃなくて、顔も、2人で居る時は甘えん坊なとこも、かと思えばライブだと大人っぽくて…。計画的なのも尊敬してます。僕がしっかりして無さすぎなだけ?ともかく好きなところを挙げようとすれば止まりません。若井にも感謝しないとね。
出会う事が出来て良かった。大して話してないうちからミセスに誘ってくれてありがとう。この病気になって最初の頃、君が受け入れてくれたお陰でこうやって手紙もかけているしたくさんの思い出も残せました。凄く贅沢で凄く良い人生だったな。
10年間一緒に仕事が出来て良かった。本当にありがとう。元貴に会えた時から僕の人生は薔薇色でした。…ってこれはちょっとキモイかな。まあこんな機会だしいいか。来世でも絶対会おう。結婚式挙げようね。元貴のタキシード楽しみです。
最後に、元貴。愛しています。
まだこっちには来ないでよね。
藤澤涼架
敬具
◻︎◻︎◻︎
「……最初っから違うし。手紙の書き方調べずやったでしょ、これ。いやでもいい歳こいて分かんないのもやばいでしょ」
「まあまあ。涼ちゃんらしくていいんじゃない?内容俺たちの体調の心配ばっかりだし」
「まあな…。あ、ここ誤字ある」
「ふっ、粗探ししてやんなって。スェスで有名な涼ちゃんなんだから。それにほら、一応『遺書』らしいよ?」
「うん、ほんとふざけ切ってて涼ちゃんらしい…。」
「そうだな。…さてと、掃除も片付けも終わった事だし。涼ちゃんのご両親が差し入れ送ってくれたから食べる?あっちも色々バタバタしてて、こっちに来れないからお礼だってさ」
「あー…うん。…一旦、飲み物買ってきて欲しい、かも…」
「…。ん、分かった。時間掛かったらごめんな」
キィ、バタン。
「ふぅ…。ねぇ涼ちゃん。昔よく涼ちゃんの家で集まって呑んでたよね。俺らが騒いで散らかしても、最終的に寝ちゃっても一言も文句言わずにまた入れてくれてさ。みんなの第2の実家みてえなもんだったよね。…それが今はこんな静かになっちゃってさ。家主も居なくなっちゃったけどさ…。」
懐かしい香りはまだ、かすかに残っている。
君の笑い声が聞こえた気がした。
「涼ちゃん」
紙に書かれた言葉に、俺は今後も呪われ続けるだろう。自分の事になると鈍臭いのに俺が密かに思っている事を見透かしていて。ほんと涼ちゃんの癖に。それでも涼ちゃんとの思い出は薄れていってしまう。だから、今は。この部屋があるまだ今は、俺の現状とか若井とどうしてるかとか。沢山言いたいことがあるんだ。
隠し持っていたロープを、まとめていたゴミ達の袋に放り投げる。
何も無い床にあぐらをかいて、まるで君と対話しているように。
外の湿気た匂いが部屋の中まで侵食してきていた。
「聞いてくれる?俺の独り言だと思ってさ。まずは…」
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読んでくださりありがとうございました!
唐突ですが、ここで終わりになります。一応アフターストーリーをもう1話あげる予定ではありますが、本当に長い間付き合って下さりありがとうございました。
投稿期間の長さから、筆が中々進まなかったことはお察しだと思われます…。命を扱うなら、自分だったら、3人だったらどうなるんだろう?などと当てはめながら考えていれば気付けば約2ヶ月。その日暮らし投稿の悪い所が大きく現れてしまいました。でも死の呆気なさや恋と愛の違い、言葉の重さなどは表現できた…かな?非常にくどい作品になった気がします。そもそも私の作品で読者想像型の終わり方が多いのかな。あまり天使病にも絡められていないような…?それでも最後まで読んでいただいた方ありがとうございます。これを反省にこれからも前進して行きます!
次は楽曲をイメージした、短めのものを連載しようかなと思っております。
是非読んで頂けると嬉しいです。
コメント
4件
完結、ありがとうございます😊 本当に、お疲れ様でした🙇🏻♀️ それぞれのお手紙を読んでいて、心がじんとして、なんだか、泣きそうになってしまいました😢 最後、元貴くんにハラハラしましたが、若井さんと、そして涼ちゃんが支えてくれるだろうと、少し安心しました🥺 新作も、楽しみにしています❣️
完結ありがとうございます🙏♥️💛 シビアなテーマは、作者様も気持ちが重くなりますよね💦 でも、最後はこういうカタチにして頂けて、私は嬉しかったです❣️ アフターストーリー、楽しみにしてます✨