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「日差しに当たる君はまるで、人間のようだった。」

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「日差しに当たる君はまるで、人間のようだった。」

1 - 「日差しに当たる君はまるで、人間のようだった。」

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2023年04月26日

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皆さんどうも!

今回は昔書いた小説を冴潔ver.にして出してみました

昔のなので少しおかしくてもスルーして頂くと幸いです!

では、どうぞ!






「日差しに当たる君はまるで、人間のようだった。」





桃色のカーテン。汚れひとつもないまるで新品のような白いベッド。大きな窓には飲食店、一軒家、マンションが小さく並ぶ景色が見える。

そう、ここは…。

病院である。

俺は「糸師 冴」(いとし さえ)

なぜ、こうなったのかというと俺は学校帰りにいつも通っている坂道から石につまずいて思いっきり転んだのだ。それだけだ。それだけなのに、骨折をした。俺はなんて足が弱いのだろうか、鍛えないと。そんな俺に「だせぇ」と笑う弟、凛。ぶん殴ってやりたい。


翌日の朝。病院の朝食を摂るために長い廊下を渡り食堂へ行く。

「あら、今から朝食?早いわね。」と、看護師が話しかけてきた。

「はい、昨日なかなか眠れなかったので。」俺はそう返す。

食堂につくと、一番端の日当たりがいい席をとり目の前のラップに包まれている朝食を見る。パン3つにマーガリン、サラダ、そして牛乳。実にシンプルな朝食だ。俺はこのあとも暇だろうし、どうするかと思いながら黙々と食べながら考える。そして廊下を通る時に広場のような所があったなと思い出す。

(これ食べたら見に行ってみるか。暇だしな。)

朝食を食べ終わり、席を離れ食器を返す。そして目的の場所へと向かう。向かった先につき、中をのぞき込むと青年が1人、椅子に座っていた。本を読んでいるようだ。1歩近づいて様子を見てみると横顔が見えた。

イラスト作者:妹 (少しアレンジしたけど…)

画像

(綺麗だ。)

青みがかった黒髪にまつ毛、日にあたる大きい綺麗なブルーの瞳。白い肌に赤い唇。何もかもが綺麗だった。俺は気になり、そいつに話しかけた。

「なぁ」

青年が振り返る。

「何を読んでるんだ?」

俺は聞く。そうすると青年がキョトンと目を丸くした。ちょっとおかしくて俺はふっと笑ってしまった。すると、彼は耳を赤くし、慌てて言った。

「ご、ごめん…。あんまり話しかけられる事ないからつい。」

(なるほど、そういうことか。)

「あぁ、驚かせて悪い。少し気になって声をかけただけだ。」

彼はさらに驚いた。

「お、俺を?」

「あぁ。」


さらにその翌日、いつも通り朝食を食べ、今日も広場に行く。広場につくとやはり昨日の青年がいた。だけど名前が分からないから

「昨日の…だよな?」

と、聞いてみる。

「うん」

その後、2人でのんびり話をした。彼の名前は「世一」(よいち)というらしい。彼はとても穏やかで落ちついてて、だけど無邪気で全てにおいて愛おしかった。大袈裟すぎる?ううん、そんなことはねぇ。本当のことだ。

「冴はなんで入院してるの?」

「実は…だせぇ話なんだが、石につまずいて坂道から転げ落ちた。それで骨折。」

「えぇ、痛そう」

「笑わねぇのか?」

「笑わないよ、骨折痛そう」

「俺の弟は石につまずいて坂道から転げ落ちるのだせぇとか言って笑ってきたぞ?」

「えぇ…酷いな。ふはっ」

彼が笑った。花が咲いたかのように。とても可愛い。

「…」

「冴…?笑っちゃってごめんな?」

彼が不安そうに見つめてくる。そんなに心配しなくていい。だって。可愛すぎて停止しているだけだ。

ある日のこと、いつも通り話をしていた。俺はもうそろそろ退院だからこの時間を大切にする。

「なぁ、世一」

俺がそう呼んだ瞬間。

ザワザワ ザワザワ

広場の向こう側が看護師の焦りと不安の声が混じった話し声が聞こえた。誰かがきっと事故にあったのだろう。そう考えていると

「はぁ…はぁ…」

世一が苦しめ始めた。

「世一?!」

「落ちつけ!」

(まずい、どうするか)

俺は焦りはじめて、助けを呼んだ瞬間。

「冴…?」

気がついたら世一が名前を呼んでいた。さっきの看護師たちの声も聞こえない、ただただ静かだった。

「どうしたの、大丈夫か?」

あれは幻だったのか?世一の声ははっきりしているしなんともなさそうだ。俺がおかしかっただけなのか。

「悪い、なんでもねぇ」

俺はそう言い、部屋に戻った。


翌日、ついに明日退院する。世一にも言わなければと広場に行く。

「世一!」

俺が名前を呼びながら近づくと世一は目を見開いた。

「冴?昨日は大丈夫だった?!」

「あぁ。悪かった、いきなり部屋に帰って。」

「よかった。うん、大丈夫。」

世一は安心したかのように微笑んだ。明日にはもうこの笑顔が見れないのか。

(そうだ、明日退院することを言わなければ…)

俺は世一に言いにくかったがきちんと伝えた。

「俺、明日退院する。」

そういうと世一は少し悲しそうにした。でもそれは一瞬だけですぐに微笑んだ。

「良かったな!」

俺は………なんだかとても悲しかった。


退院日。今日の昼頃にこの病院から家へ帰る。

「今日でお別れか。」

世一にお別れの挨拶をいうために広場へ行く。だけど、そこには誰も…いなかった。いつも座ってる場所に世一がもっていた本が置いてあっただけだった。それを見て俺は思った。

(世一にきちんとお別れがしたい。)

俺はそこであることに気がついた。

(世一の病室ってどこだ?)

そう思い、近くにいた看護師に世一の部屋はどこかと聞いた。が、

「世一君…?誰かしら…」

(は?何言ってんだこいつ)

患者の名前を知らない看護師なんかいるはずが無い。だからほかの看護師にも聞いてみることにした。

「世一……うーん。」

だけど、だれも分かりはしない。なんでだ?そして後ろにいた看護師が、言った。

「苗字って分かる?」

「えっ…」


結局、世一という存在は誰にもわからなかった。あれは夢か?いや、俺の前ではちゃんと存在していた。人間として。

(人間として…?)

この作品はいかがでしたか?

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