テラーノベル
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「ウースマーン!インファンツ連れてきましたヨォー!」「キタヨー!」「ダー!ダッダッ!!」
私はインファンツと共にノーティワンズとウスマンが遊んでいた部屋に突撃しました。インファンツ達をノーティワンズの近くへ降ろし、ウスマンの対面に座りました。仲良く挨拶を交わす子供たちを見て、早速幸せな気分デス。子供たちはわかりやすいジョークでよく笑ってくれますから、大好きデス。傍に来るノーティワンズを撫でていると、ウスマンが言いました。
「待ってたよ、ジェスター。来る途中で外科医は見たかい?」
「あぁ、その質問が出るということは、外科医をサーに任せたのは貴方ですネ?」(サーは大人の男性の敬称)
「その通りさ」
私はここに来るまでに外科医を抱えたサー・ダダドゥに会いました。サーはその時私に外科医を持たせようとしてきましたが、私は見ましたヨ!
「離したくないと言わんばかりの抱き方で運んでましたヨ」
「…シリンジョンの逆鱗に触れなければいいけど」
「グッスリ寝てたので、大丈夫でしょう。サーが黙ってれば」
私はハングリースネークで子供達をくすぐってやります。どんなに外科医が怖くても、キャッキャッと笑う彼らには敵いませんね。ウスマンも便乗して肩車や飛行機など、怖いもの知らずの子供達に最適の遊びを始めました。大人になるほど怖くなるものが増えますけど、これもそうですね…。
「間違っても投げ飛ばさないでくださいヨ?ノーティワンズもかなり弱ってるんデスから」
「……悪かったと思ってるさ」
「!、責めたかったわけではないんデス!怪我して欲しくなかっただけで……ゴメンナサイ」
わかってるさ、ギグル。ジョーク禁止から開放されたと言えど、君は絶対傷つけるようなことは言わない。それに、心の痛みは君の方が知っているだろうからね……。
「いいよ。僕もいきなりすぎたね。もう少しゆっくりした遊びをしようか」
「ダー?」
「……!。あのですね、珍しい客人を呼んだんデスヨ。どうやら到着したようデス」
バンバンは扉を見やる。カードキーの音と共に開いたドアの向こうには、たくさんの未完成ジェスターがいた。
「彼らも培養槽から解放されましたし、せっかくならと誘ったのデスが。全員来るとは思いませんでしたヨ」
「仕方ないだろ。培養槽の奴ら含めて出歩くことが出来ない奴ばっかりなんだからな。迷子になられても困るし」
私を半分にするならば右側が「半ビター」で、左側が「半ギグル」でしょうか?珍しいことに、いつも喧嘩ばかりの半ビターと半ギグルが協力してマジシャン(上半身ジェスター)を運んでますネ。彼らはよく追いかけっこしてますからこの場所にも詳しいですし、ありがたいですネ。培養槽にいた頭のない個体が頭のみのポエマーを運び、片足のない個体は両腕の無い個体の方に捕まって進み、目と片腕のない個体は……おや?
「目なしはどこデスか?」
「あ?あぁ、もうすぐで来るぞ。保安官と一緒だ」
腕のない個体が答えた。私はその存在に笑顔を保てなくなりそうデス。
「保安官…デスか……」
「大丈夫かい?もし心配なら反対の扉から出れるけど」
心配して顔を覗き込むバンバン。私は裏切りと破壊を繰り返した大罪人。そうデス。わかってます。 向き合わなきゃ行けないって。でも、ほんとに合わせる顔がないんデス。かつての親友は私の存在価値を亡きものにし、更には相棒から最重要指名手配犯へと降格。その後、女王を笑わせたいがために最終的に王国を滅ぼし、逃走し、ダダドゥの軍門に下った……。親友を攻撃した挙句に無惨にも敗北。一命を取り留めたかと思えば、被害者たちの温厚に甘えて、自分の中で罪滅ぼしになることを願った手伝いを続ける日々。嗚呼、今思えば酷い話デス。ちっとも笑えない。私は自分に甘すぎます。最後に親友と話したのは、負けた時…。
そうだ、まだ彼とはまだちゃんと和解できていない。
「来たよ、オリジナル。どうする?」
「……入れてください。子供たちの前デスから、責められることも無いでしょう(ニコッ)」
「わ、かった…。保安官ー!こっちー!」
ガコッと再び扉が開けられる。そこには目なしと手を繋いでいる保安官がいた。ギグルは笑顔のまま目を見開いている。
「よう園長…と、ギグル」
「やぁ、シェリフ。君もここで遊んでくかい?」
「ッ!、ウスマンッ……」
私は無意識にウスマンの腕を掴み頭を横に振っていました。目の前に保安官がいるのに、私が大丈夫と言ったのに。拒絶してしまった。見るだけで精一杯でした……。
「……いや、俺は怪我もほぼ治ってるし、見回りせにゃならん。だから遠慮させてくれ」
「わかった。お勤めご苦労様」
「嗚呼」
シェリフは目なしを首なしに渡してすぐに出て行った。扉が閉まり、彼の姿が見えなくなってやっとギグルは落ち着きを取り戻した。さっきまで僕の腕を掴んでブルブル震えてたギグルを、シェリフはどう思ったかな…。
「僕としたことが、ごめんよ、大丈夫かい?」
「うぅッ、ウスマンッ……」
泣いちゃった。そうだよね。だって一度、彼に殺されてるんだもの……。さっきは無理に笑ってたけど、頑張って謝ろうとしたんでしょ?
「オリジナル…、大丈夫?」
「だ、大丈夫デス、ポエマー!すいません、ちょっと怖くなって……」
ゴシゴシと目元を擦り笑顔を見せるギグル。ノーティワンズやインファンツが心配そうに彼を見つめる中、目なしがギグルに言った。
『オリジナル。サッキ、僕ガ保安官ト歩イテタ時、保安官ハズット、オリジナルノ事心配シテタヨ。「ギグルは元気か」ッテ。「俺の事恨んでないか」ッテ』
目なしはふにゃっと私に笑って教えてくれました。正義感の強い彼は、多くの罪を働いた私を怒っているとばかり…。そりゃ、全部を許してるわけはないのは分かっています。その上で、分かり合おうとしてくれているのは、私にとってとても重大なチャンス。
「今度は、話せるでしょうか…。また怖くなって逃げてしまうんじゃ……」
「それは、体調が万全にならなきゃ逃げられないかもね。早く話したいのはわかるけど、お互いに心の余裕が出来てからでもいいんじゃないかな」
「そうデスね…今日は思いっきり子供たちに癒されちゃいましょうか!一旦ハグさせてください!」
「キャー!キャッキャッ!」「ダッ!ダダダダ!」
ギグルが子供達を思いっきり抱きしめる。ジェスターズも便乗して遊び始めた。バンバンは胸をなで下ろしながら心の中で願った。
神様がホントにいるのなら、どうか、もう彼らから笑顔を奪わないでくれ。人を笑顔にすることが彼の幸せ。何も悪いことなんてないんだから
自分がこれほどビターギグルという存在を大切に思っていることに少し驚きつつも、単なる同情だと思うことにして、バンバンも遊びに参加した。外科医と卿が迎えに来るまで、この殺風景な部屋は小さなバンバン幼稚園になった。