この作品はいかがでしたか?
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リ エ 夜 久 重 ス ト ー リ ー
何 で も 許 せ る 方 向 け
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* 次のニュースです。先月未明に東京都在住の男子高校生が行方不明になるという事件が発生しました。同じ部活に所属している部員に話を聞いたところ、行方不明になるまでに特に大きな変化は無かったとのことで、警察側は近隣住民への聞き込みも含め捜索を進める模様です。
広い割にベッドとテレビしかないような淋しい部屋へ監禁されてどれくらいが経っただろう。足には枷が取り付けられ、上半身自体は固定されていないものの、もはや逃げる気力さえ起こらない。曜日と日付の感覚が日に日に分からなくなり、常に一人でいることから生きる気さえも消失してしまいそうになる。そう思っていつも眠りにつくとふわっと何かが頭に触れる。堪えられなくなりそうな消失感を埋めてくれる今の自分が一番安心する、一番好きな感触。意識を取り戻すといつも微かに視界が滲んでいる。
『 も う 。 ま た 泣 い て た ん で す か 。 』
そんな言葉を掛けられては、ベッドへと腰を掛け、自身の頭に触れるその温もりへと猫のように身体を擦り付ける。最近はずっとこんな生活ばかりを送っている。不安になれば泣き寝入りをし、安心すれば再度涙を流す、自身を監禁する彼に縋るような生活。猫のような飼われように自分が猫だったら良かったのにと吐息を漏らすこともある。当然吐息を漏らせば涙も流れ、言葉を発することでさえも難しくなった今では、行為をするのにも、泣くのにも唯唸るように声を上げることしかできない。
『 俺 は ず っ と い ま す よ ? 』
違う。そうじゃない。ずっと一緒にいるなら、もうどこにもいかないで欲しい。そんなことも目で必死に訴えるが、当然バカなお前にはその願いさえも届かない。もう限界だと思い、必死に声を振り絞る「 ど … k 、 に も … … い 、 … く な … 。 」久しぶりに震わせた声帯はなんとも悲惨で羞恥心と悔しさでまたも涙を流す。そんな俺を座高の高いお前が見下ろして、優越感に浸っているかのようなこの上なく満足気な不気味な笑顔を浮かべる。嗚呼、全てこいつの思惑通りだったってことか。普段バカに見える俺の後輩はどうやら相当賢かったらしい。そんなこともどうでも良くて、不気味な笑顔にまた安心感を覚える。
『 ‘ 夜 久 さ ん ’ こ れ か ら は ず ぅ っ と 一 緒 で す か ら ね 。 』
このあと行方不明になった男子高校生が発見されることは無かったそうです。行方不明になっていたのは音駒高校3年生バレーボール部の夜久衛輔くん。彼が今どこで何をしているのか、生きているのかも誰も知らないそうです。唯一人を除いては。
[ 夜 久 衛 輔 く ん が 行 方 不 明 に な っ て い る こ と で 何 か 心 当 た り な ど は あ り ま せ ん か ? ]
「 特 に 変 化 は 無 か っ た で す ね 。 大 事 な 先 輩 な の で と て も 心 配 で す 。 」
もっと慌てるだろうと思っていた部員たちは、あまりの落ち着きぶりにインタビューだからだろうかと微かに不信感を抱いた。
短編小説「 ず ぅ っ と 一 緒 」
コメント
2件
いや、最高でした!!!!!!! なんかもう、はい。雰囲気が出ててゾクッときました!
不 穏 系 書 か せ て 頂 き ま し た 🙇🏻♀️ ‼️ 連 続 投 稿 は 中 々 珍 し く な い で す か ? ! よ か っ た ら 感 想 な ど お 待 ち し て お り ま す 🎀