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静かな夜、月明かりが煌めく中、東雲伊瑠夏は薄暗い書斎で古い書物をめくりながら、思索に沈んでいた。彼の手には魔法の呪文が書かれたページが広がり、メガネ越しに真剣な眼差しを向けている。真剣な表情とは裏腹に、心の奥では不安が渦巻いていた。
「またその本を読んでるの?」
声が響く。振り返ると、誠がドアの入り口に立っていた。彼の表情は明るく、いつもの調子で接してくる。しかし、その無邪気さの裏に潜む影を、伊瑠夏は感じ取っていた。
「呪術師としての責任があるからね。」
伊瑠夏は冷静に答えるが、誠の目に映る自分の姿が、どこか孤独に映っていることを感じた。誠はいつも彼の親友であり、共に戦った仲間だったはずだ。しかし、最近彼の心には疑念が広がっていた。
「そんな堅苦しいこと言わないで、もう少し楽しもうよ!」
誠は笑顔を浮かべながら、近づいてくる。その無邪気さに、伊瑠夏は懐かしさを感じつつも、同時に心の奥に潜む不安がさらに大きくなっていく。
「お前が裏切ったのに、どうしてそんなに平然としていられるんだ。」
伊瑠夏はついに口を開いた。その声には、抑えきれない怒りと悲しみが混ざり合っていた。誠の表情が一瞬硬直し、その後、少し驚いたように目を見開く。
「それは…仕方なかったんだ。」
誠は言い訳のように呟くが、その声には揺らぎがあった。伊瑠夏はその様子を見て、心の中で何かが崩れ落ちる感覚を覚えた。
「仕方ないって…そんな言葉で済む問題じゃないだろ!」
伊瑠夏の声は高まっていた。彼の目には涙が浮かび、誠を見つめる視線は怒りに満ちていた。しかし、誠はその目を受け止めることができず、視線を逸らしてしまう。
「ごめん、兄さん。俺は…俺は兄さんを守るために選んだんだ。」
誠は弱々しい声で呟いた。その言葉は伊瑠夏の心に深く突き刺さり、彼の心の奥に潜む感情が爆発する。伊瑠夏は誠に近づき、強く彼の肩を掴んだ。
「俺のことを裏切ったのに、どうしてまだそんなことを言えるんだ!」
伊瑠夏の声が部屋の中に響き渡る。誠は彼の手を感じ、心が痛む。伊瑠夏の目に映る自分の姿が、彼を裏切った存在に思えてならなかった。
「兄さん、お願いだ。信じてくれ…俺はまだ、兄さんを…」
言葉が続かず、誠はそのまま口を閉じる。彼の心の中には、伊瑠夏への強い想いと、彼を傷つけてしまった罪悪感が渦巻いていた。
「もうお前を信じることはできない。」
伊瑠夏は強い口調で言い放ち、心の奥に深い痛みを感じながらも、彼を突き放した。しかし、その瞬間、誠は一歩近づき、優しく伊瑠夏の頬に手を当てた。
「兄さん、俺はお前のことが大好きなんだ。」
その言葉は、今までのどの言葉よりも重く、強く響いた。伊瑠夏は一瞬驚き、その瞬間、誠の真剣な目に見つめられる。彼の心が揺れ動き、冷たく引き裂かれた感情が少しずつ崩れ落ちていく。
「俺も…お前が大好きだ。」
思わず漏れたその言葉に、伊瑠夏は驚きつつも心の奥で静かな感情が沸き上がる。しかし、その感情を口にすることができず、彼は目を逸らした。
「なら、俺を許してくれ。俺は本当にお前を守りたかったんだ。」
誠は少しずつ近づき、その指先が伊瑠夏の頬に触れる。その瞬間、伊瑠夏は彼の温もりを感じ、心の中で何かが変わっていくのを感じた。
「…許すことなんてできないかもしれない。でも、俺はお前を必要としている。」
伊瑠夏はついに心の奥にあった気持ちを吐露し、その瞬間、誠の目が輝いた。彼は優しく伊瑠夏を引き寄せ、唇が重なった。
キスは深く、互いの心の距離を一瞬で埋めてしまうような感覚だった。誠の温もりが伊瑠夏を包み込み、彼の心の中にあった不安が少しずつ消えていく。二人は静かな夜の中、互いの心の痛みを理解し合いながら、新たな絆を結んでいくのだった。舌を絡ませながら唾液の糸を引いて二人は部屋を去る。そして、シャツをお互いに脱ぎながら、寝室へと向かっていった