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青年は両手で頭を抑えた。
ギリシャ人。クルド人。トルコ人。大城壁。エンタシス。柱頭。聖人の彫刻。ボーリング。コンピニバイト。引越屋。部品工場。
「でもどうして、分解してるんだろう?」石段に屈折している青年の影が、とまどっている「ビザンツ帝国とかトルコ共和国とか、コンスタンティノポリスとかイスタンブールとか、量子力学とか宇宙力学とか、電磁力とか重力とか、プロバイダーとか電話局とか工事業者と営業とかサポートセンターとか故障係とか」
犬の鳴き声が遠くなる。太陽が、ヨーロッパのモスクに近づく。アヤソフィアもブルーモスクも、影になる。
「部品を留める。部品が集まる。エンジンになる。部品が集まる。車になる、はず」青年の手が動いている。
旅人は笑った。
「まだ続いてるのかい」
「部品工場にずっといたけど、車は造れなかった。その作業のことしか詳しくなれなかった」と青年は一人ブツブツ言っている「いきなりだけど、君ならどうやって車つくる?」