あれから私たちはコンビニに行きお目当ての麦芽飲料と買うと少し遠回りでシェアハウスへ戻った。
店を出て自然と寄り添い、何にも言わず大きな手をおずおずと掴んだ。
するとシヴァさんも、何も言わずに私の手を包み込んでくれた。
「次は秋に会えるといいなぁ」
「無理はしないでいいから。るなさんの用事優先でいいよ」
「…シヴァさん寂しくないんですか?」
またしばらく会えなくなるなんて寂しいよ。
最初は想っているだけでよかった。次は恋人同士になれるだけでよかった。
名前に関係がついてるだけでよかったのに、いまでは全然物足りない。
「寂しい…だろそりゃあ」
シヴァさんはきゅっと眉間に皺を寄せて恥ずかしいのかぶっきらぼうに答えた。
「今度は俺が会いに行く」
すぐにふわっとした柔らかい笑みを浮かべてこう言われた。
もうだめ、胸がぎゅっとなる。
大好きな気持ちっておっきくなっていくんだ。
ひとり心臓を鷲掴みにされてると、あのさぁ、とシヴァさんがためらいがちに口を開いた。
「るなさん、俺らの関係みんなに言わない?」
「みんなにですか?」
「内緒にしてあげたいのはやまやまなんだ、ホントはな。るなさんに会いにいく頻度高くなりそーだから、誤魔化しづらくなってきそうで…」
ようは、こうだ。
土日に撮影が集中するから毎回嘘をついてるのも大変なんだろう。
なおきりさんとうりりん、えとちゃんにフォローしてもらうのも流石に申し訳ない。
ならいっそのこと皆に宣言しておけば後ろめたさなく会えるということ…なんだって。
シヴァさんが順を追って説明してくれた。
「るなは大丈夫です!みんなに言いましょう」
「提案しといて何だけど、無理してない?」
「ぜんぜん!みんなに知ってもらえれば、二人で秘密にしないで遊びに行けますからっ」
こそこそと遊ぶより晴れやかな気持ちで遊んだほうがいいに決まってよね。
「あっ、そしたらシヴァさんのお家に遊びに行きたいなぁ」
「ちょ、本気で言ってんの!?」
「ダメでした?」
るなの話にシヴァさんが慌て出す。
どうしたんだろう、シヴァさんVR買ったって教えてくれたし、一緒にゲームしたら楽しいなと思ったんだけど…
そしたらなんでか盛大なため息をつかれた。
「ちゃんとるなさんが意味わかったら、呼んであげるからね…」
意味がわかるってどういうことですか?
と顔を覗き込んで聞いてみたら
そーゆーとこほんと困る、とかなんとかぶつぶつ言って跳ねた後ろ頭を乱暴に掻きむしっていた。
「忘れ物ない?」
「はいっ」
「またいつでも遊びにおいで」
弾丸一泊二日のサマランツアーはもう時期終盤を迎える。
着慣れた淡い水色のふんわりトップスに黒のショートパンツ。サンダルを履いてトートバッグを持って準備オッケー。
みんなが玄関までお見送りしてくれた。
「駅までいかなくていーの?」
「大丈夫です、みんなこれから撮影あるんでしょ?」
「別に時間遅らせたら」
「だめだめ、リスナーのるな怒りますよ?遅くなったら寝落ちしちゃう人出てくるんじゃないですか」
それはオレのことかよ、とゆあんくんが拗ねるとみんなが笑った。
「あれ、シヴァさん?」
「おーいるいる、ここ」
出る支度を整えたシヴァさんが、みんなの間を通り抜け玄関に腰を下ろした。
「…?どっかいくの?撮影は?」
「すぐそこまで送るだけだから」
「えーっと、そうなんだ…??」
さも当然の用意靴を履き私のトートバッグを代わりに肩へとかけた。
意味のわからない七人は目が点になってその場に立ち尽くしている。
そりゃ、そうなっちゃうよね。
「彼女の見送りくらいさせてよ、んじゃ行ってきまーす」
「えっと、あの、そゆことです!お世話になりました!」
ほらいこ、と声をかけられ慌ててシヴァさんにくっついてった。
閉まっていく扉の隙間からはぽかんとしたみんなだけが見える。
「おいで」
完全に閉まった扉を確認して、大きな手が私の前に伸びてくる。
ぎゅっと握るとぐいっと引っ張られ自然とくっついた。
それと同時に阿鼻叫喚がここまで聞こえてくる。耳が割れちゃう。
「うっさ」
「そんな意外だったのかな?…シヴァさん帰ってから色々聞かれない?」
「ま、そこは仕方ねーよ。大した問題じゃないから」
なんだかんだでシヴァさんも歳上のオトコのヒトだ。普段は見せないような余裕の笑みに、またまた心臓が早鐘を打った。
「ちょ、じゃぱぱが倒れたぞっ!!」
「起きてー!じゃっぴー!!」
「「…」」
シェアハウスのなかで続く修羅に、私たち二人顔を見合わせた。何だか大変そうだけど、ううん、考えちゃいけないような…。
「今日の撮影…開始時間遅くなるな」
「ですねぇ…」
「でもこれで、るなさんとこ行ってきますって堂々と言えるわ」
右斜め上に顎をあげると、にやりと笑う口元からはギザギザの歯が見え隠れしてる。
つられて私も笑ってると
握る手を強められ、もう一度引き寄せられた。
コメント
8件
一区切りおめでとうございます!✨️🐸❄めちゃめちゃ尊いです💕 のななさんのおかげで🐸❄好きになれました!!💕ありがとうございます!💕🦖さん倒れちゃったの面白かったです🤣
初めまして!!🙇♀️ コメント失礼します!! 本当に素敵なお話で,1日で一気に 読み進めてしまいました…笑! 心理描写とかセリフとかメンバーが 実際に会話しているようでした❗️ もう解像度が高すぎて…💓 🐸❄️1番好きなCPになりました🫣💕
とりあえず一区切りです。こちらのお話は日記のように書いておりますので気まぐれに続きます😅