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ホークス『』
燈矢「」
第2話 【常連さんは、今日も笑う。】
カラン。
「いらっしゃい。」
翌日の午後。
大学の講義を終えたホークスは、また(『Blue Flame Cafe』)の扉を開いた。
カウンターの奥では、燈矢がコーヒー豆を挽いている。
昨日と同じ、気だるそうな表情。
だけど、その姿を見ただけでホークスの胸は少し軽くなった。
『こんにちは。』
「……また来たのか。」
【そんな嫌そうな顔しなくても。』
「してねぇ。」
【してるって。』
燈矢は露骨に眉をひそめた。
「注文。」
『じゃあ、昨日と同じブレンドで。』
「……。」
燈矢は何も言わず、コーヒーを淹れ始める。
その横顔を見ながら、ホークスはカウンター席に腰掛けた。
静かな店内。
コーヒーの香り。
前世では想像もできなかった光景だった。
「お待たせ。」
『ありがとう。』
カップを受け取りながら、ホークスは何気なく尋ねる。
『お店、一人でやってるんですか?』
「基本は。」
【大変じゃない?』
「別に。」
相変わらず短い返事だ。
それでも、昨日よりは会話が続いている気がする。
「大学は。」
『え?』
「何学んでんだ。」
『あー、経済学です。』
「ふーん。」
『興味なさそう。』
「実際、ねぇし。」
『ひどいなぁ。』
ホークスが笑うと、燈矢は露骨に嫌そうな顔をした。
「……何だよ。」
『いや、燈矢さんって優しいなって。』
「は?」
『ちゃんと会話してくれるし。』
「それ接客。」
『でも、『気をつけて帰れ』って言ってくれた。』
「……。」
『覚えてます?』
「……知らねぇ。」
耳が少し赤い。
ホークスは吹き出しそうになるのを堪えた。
前世でもそうだった。
素直じゃなくて。
不器用で。
でも、完全に無関心な相手には、こんなふうに言葉をかけたりしない。
「そういえば。」
『ん?』
「大学、近いのか。」
『歩いて十分くらい。』
「そっ。」
『何ですか?』
「いや、常連になりやすいなって。」
『……え?』
『……じゃあ、お言葉に甘えてそうします。』
燈矢は小さく舌打ちした。
「……暇なのか。」
『結構忙しいですよ?』
「そうは見えねぇ。」
『燈矢さんは?』
「店あるから。」
『休みとかないの?』
「ある。」
『何してるんです?』
「寝る。」
『もったいない!』
「うるせぇ。」
そんな、どうでもいい会話。
だけどホークスにとっては、何より大切だった。
前世では叶わなかった。
敵でもヒーローでもない。
ただの二人として話す時間。
「……なぁ。」
『はい?』
「お前。」
燈矢は少し言いづらそうに目を逸らした。
「名前。」
『え?』
「まだ聞いてねぇ。」
ホークスは目を見開く。
それから、ゆっくり笑った。
『鷹見啓悟です。』
「……ケイゴ。」
『はい。』
「覚えた。」
何気ない一言。
なのに。
胸がいっぱいになる。
『……嬉しい。』
「何が。」
『名前、覚えてもらえたから。』
「大袈裟。」
『燈矢さんにとってはそうでも、俺にとっては大事なんですよ。』
「……変な奴。」
燈矢は呆れたように言った。
でも、その声はどこか柔らかかった。
店を出る頃には、外は夕焼けに染まっていた。
『じゃあ、また来ます。』
「……。」
『燈矢さん?』
「……好きにしろ。」
『それって、来てもいいってこと?』
「追い返してねぇだろ。」
『やった。』
「……うるせぇ。」
カラン。
扉が閉まる。
燈矢は、しばらくそのドアを見つめていた。
「……ケイゴ。」
口の中で名前を転がす。
その瞬間。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
「『……啓悟。』」
知らない声。
知らないはずなのに。
どうしてか、懐かしい。
「……何だ、今の。」
頭を振って、洗い物を再開する。
きっと疲れているだけだ。
そう思いながらも。
「……明日も来んのか、あいつ。」
ぽつりと零れた言葉に、自分で眉をひそめた。
「……だから、何なんだよ。」
誰に言うでもなく呟く。
だけど。
翌日も、その次の日も。
金色の瞳をした大学生が現れることを。
少しだけ、待っている自分がいた。
第3話へ続く
「『いつもの』って、まだ言うな。」
ーーNEXT♡
コメント
1件
読み終えたわ…!第2話、めっちゃ良かった。灯矢が「名前」を尋ねる流れ、あそこ本当に好き。“覚えた”の一言がこんなに沁みるなんて思わなかった。ホークス(啓悟)が「嬉しい」って言うシーン、こっちまで胸がじんわりきた。灯矢の口調は相変わらず刺々しいのに、呼び方で距離が縮まってるのが伝わってくるのが上手い。最後の「明日も来んのか」の独り言、めちゃくちゃ可愛かったです1119さん。続きめっちゃ気になる🔥