テラーノベル
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4日目。合宿も、もう明日でおわり。
明日が、来て欲しくない。
今日も休憩の時間を狙ってサッカーコートに向かう。
いつもの芝生に高光の姿が見える。
「たかみつくーん」
声をかけると同時に冷たいドリンクを首につけた。
「うひゃっ」
高光は情けの無い声をあげた。
「なにそれ可愛いー」
朱里はにやにやしながら隣に座った。
「私の事、待っててくれたの?」
「うん。来てくれるかなって」
「来ちゃった」
首を傾げながら、えへへと笑った。
「明日で合宿終わりだよね?早いの?」
「そうだね。午前中練習やって11時くらいに帰る予定」
「そっか〜。寂しくなるなあ」
高光は前を向いたまま呟いた。
「あの」
朱里は意を決したように口を開けた。
「今日の夜、花火大会一緒に行きませんか?」
「……デートのお誘いです」
高光の目を見つめたまま、最後まで言葉を続けた。
ちゃんと言えた。
そう思った途端、急に恥ずかしくなった。
真っ赤な顔の朱里を見るなり高光は俯き、目を逸らした。
「……デートのお誘い。だね。ありがとう。」
「すごく嬉しいんだけど、答えられないかも」
朱里の顔を見ることはできなかった。
「先に約束あった?なら無理になんて言わない。」
「ううん。あのね、朱里ちゃんに言ってなかった事がある。」
高光は朱里の手を取り、自身の胸に当てる。
「私、女なんだ。」
「……え?」
「嘘ついててごめん。」
頭が追いつかなかった。
目の前にいるのはさっきまで話していた高光のままだった。
ただ、手の感触は温かく、柔らかい。それを示しているようだった。
「っなんでそんな、名前は?それも嘘?ずっと私からかわれてたの?」
朱里は身を乗り出して訴える。声が震えていた。
「高光瞳。高光は苗字。」
「ずっと黙ってたのは……朱里ちゃんが会いに来なくなるのが嫌だったから。からかうような気持ちは無かったよ。この4日間。朱里ちゃんに会えるのが何より楽しみだった。花火大会、一緒に行けたら、とても嬉しいなって思ってた。」
「だけど、デートならダメだ。こんな騙して行くのは不誠実だと思った」
高光は淡々と話した。
しばらく沈黙が続いた。
嘘をつかれていたことよりも、今までの言葉まで嘘だったと言われる方が怖かった。
「……私のこと、からかってたんじゃないんだよね」
「うん」
「私と過ごした時間は嘘じゃないよね」
「うん」
「……じゃあさ、私、瞳ちゃんとデートがしたい。」
高光は顔をあげる。
「……え?」
「瞳ちゃんが良ければだけど。たかみつ君でも、瞳ちゃんでも。今日ここでさよならは嫌。一緒にさ、花火デートしよう」
朱里は真っ直ぐな目をしていた。
「……いいの?私でも。」
腕で顔を隠しながら、困ったように首を傾ける仕草が、やけに可愛らしく見えた。
「瞳ちゃんがいい」
朱里は笑いかけた。
「おい、高光。休憩終わるぞ」
後ろから声がした。颯だ。
「あ、ごめんもう時間か!」
「なんの話してたの?」
「花火大会、ふたりで行こって」
「えへへ、デートの約束」
朱里が後ろから答える
「へぇ…やっぱりお前男なんだな」
低く吐き捨てるように言った。
高光の表情が少し曇ったのを朱里は見逃さなかった。
「颯くんさぁ…意地悪ばっかり言っても女の子は振り向かないよ?」
朱里の一言が颯の胸にざくりと刺さる。
颯は一瞬言葉を詰まらせ、すぐに背を向けた。
「知らねーよ。先戻る」
颯はばつが悪そうに立ち去った。
「じゃあ、17時半にここでまた。練習頑張ってね」
朱里も自身のコートに戻っていった。
コメント
1件
読み終わりました。第4話、一気に物語の核心が動いた感じがして心臓がドキドキしましたね。 朱里が勇気を出して花火大会に誘ったところからの展開、まさか高光から「女だ」とカミングアウトされるとは思わず、手を胸に当てる演出がすごく印象的でした。それに対して朱里が「瞳ちゃん」と呼び直して、「今日ここでさよならは嫌」って選ぶ流れ、自然で温かくてじんときました。颯の投げかけも、この先の人間関係に影を落としそうで気になります。 4日間で築いた距離感が丁寧に描かれていて、とても好きな回です。続きが気になりますね。