テラーノベル
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文化祭が始まると同時に、魔獣カフェは予想以上の賑わいを見せていた。
「きゃあああっ! 本物のレオン殿下ですわ!」
「羊王子のお姿、尊すぎませんこと!?」
「こちらの席にも来てくださいませ!」
白い羊角をつけたレオンは、完璧な王子スマイルを一切崩さず、銀のトレイを手にテーブルを回っている。
「お待たせいたしました、お嬢様」
レオンがコットン・キャンディ・シープをイメージした白桃のムースをテーブルに置いた。
「きゃあああっ! 殿下が私にスイーツを運んでくださるなんて!」
「ここにいる可愛いレディたち全員に、甘いひとときを届けたいな」
その一言で、女子生徒たちは一斉に頬を染めた。
(悔しいけど、客寄せ効果がすごすぎるわ……!)
私は客席を見渡した。
席は常に満席。
ワークショップの整理券は、すでに午前分が終了している。
(よし。回転率、客単価、体験メニューの満足度……全部いい感じね!)
奥のワークショップ席では、フローラが羽うさぎメイド姿で、お客様に説明をしていた。
「では、こちらの羊さんに、そっと手をかざしてくださいね」
「こうですの?」
令嬢が恐る恐る手をかざすと、羊が「めぇ」と小さく鳴いた。
ふわふわの毛が、じんわりと淡い水色に染まっていく。
「まあ……!」
「水属性の魔力が強いようですね。とても澄んだ色です!」
フローラが優しく微笑むと、令嬢は感激したように頬を押さえた。
その後、羊の毛を少しだけ刈り取り、フローラが精霊魔法で細い蔓の繊維を混ぜていく。
淡い水色の毛糸が、切れにくく、しなやかな魔法糸へと変わっていった。
「植物の繊維を少し混ぜると、丈夫になるんです。キーホルダーにしても、ほつれにくいですよ」
「すごい……! フローラ様、手先が器用ですのね」
「えへへ。ありがとうございます」
フローラは照れくさそうに笑いながら、編み図を何枚か差し出した。
「羊さん型、リボン型、ハート型があります。初心者の方には、こちらのハート型がおすすめです」
(さすが私の推し! 可愛いだけじゃなくて有能すぎる!!)
私は心の中で拍手を送った。
客席では、ピボットのルピが「きゅいっ」と鳴きながら、お客様の間を軽やかに跳ねている。
小さな羽をぱたぱた揺らし、淡いピンクのリボンを巻いた足で、ちょこちょこと歩く姿に、あちこちから歓声が上がった。
「本物のピボットですの!?」
「可愛い……! 写真魔石、よろしいかしら!?」
「きゅいん!」
ルピも得意げに胸を張っている。
(よし。ルピ効果も抜群ね)
そう思った、その時だった。
「バイオレッタ様!」
入口付近から、元気な声が響いた。
振り返ると、プラチナシルバーの髪を揺らしながら、エルベルト公爵令嬢――リリアンヌが駆け込んでくるところだった。
その赤い瞳は、期待でキラキラと輝いている。
「魔獣カフェをなさっているんですのね! しかも、しかも……!」
リリアンヌの視線が、入口近くの警備担当へ向いた。
黒いオオカミ耳。黒い尻尾。
不機嫌そうな顔で腕を組んでいる、オオカミ姿のアレクである。
リリアンヌは、両手で口元を押さえた。
「アレク様が……オオカミ姿……!?」
「見るな」
アレクが低く唸る。
だが、リリアンヌは怯むどころか、感動に打ち震えていた。
「こ、これは、見てはいけない尊さですわ……! 剣を構えたお姿も最高ですが、耳つきのお姿も新境地……!」
私は苦笑しながら、彼女を席へ案内する。
「今日はワークショップも楽しんでいって」
「もちろんですわ! 私、自分の属性色でキーホルダーを作ってみたかったんですの!」
リリアンヌは嬉しそうに席についた。
けれどその直後、教室の入口に、招かれざる一団が現れた。
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