TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
Lyric Story ~SixTONES~

一覧ページ

「Lyric Story ~SixTONES~」のメインビジュアル

Lyric Story ~SixTONES~

23 - ・(最終話)

♥

129

2023年01月25日

シェアするシェアする
報告する

窓ガラスの水滴を見ていると、しばらく留まったあとツーっと滑って流れていった。

断続的に降り続く雨は、休むことなく街を濡らしていく。

それにつられ、目頭が熱くなる感覚があった。瞬きをすると、溢れていく。

なぜ泣いているのか自分でもわからなかった。

もう物語の最後に辿り着きそうなのに、その最終章まで情けないなんて嫌だな、と思った。

まあレディーを泣かせないだけいいか、と勝手に解釈をする。

このシーンまでは良かったなんて言うつもりはない。

でも筋書きは全部彼女の手にあった。

僕は最初から最後まで、彼女の脚本で演じさせられていただけだ。

せめて僕にもスポットライトが当たればいいと願っていたのに、いつも脇役だった。

主演はあなた。今まではそうだった。でも違う誰かになる未来も、だんだん見えてきた。

今しかないと思った。バイプレーヤーの自分が、主役に向かって台詞を吐き捨てるのは。

言葉を発そうと息を吸ったとき、耳に彼女の声が届く。

「着いたよ」

気付いたときには、いつも僕が降りる駐車場だった。

もう少しだけ一緒にいたいと思ったが、早く降りて、と急かされる。

仕方なくドアを開け、雨の中歩きだそうとしたとき、車の窓が開いた。

「さよなら」

え、と耳を疑った。何を言っているのか。でも確かに彼女の声だった。

振り向くと、窓を閉じようとしている。腕をかけて阻み、

「さよならって…」

あなた。彼女に向けてそう言いたかったのに。

あまりにもストレートすぎる言葉は、無情にも僕の胸をえぐっていく。

たった4文字さえも、この消えそうな声じゃ誰にも聞こえない。

近づいてきたほうも主役、別れを切り出すほうも主役。ひどい戯曲だな、と思った。

がっくりと肩を落とし、車から離れる。エンジン音を立て、僕を残して行く。

視線を足元に向けたとき、シャツのポケットからはみ出ている紙に気づいた。

何が書いてあるのかわからず、怖い。でも見ないとわからない。

震える手で開くと、そこには、

『好きだった』

ありえない、絶対嘘だ、と思った。

好きならなぜ弄んだりしたのか。

僕の思い込みか、彼女なりの愛情表現か。

いつ“好き”から“好きだった”に変わったのかもわからない。

どうして別れを告げたのかもわからない。

理由すらも教えられず、僕は置き去り。

闇雲に駆け出していた。

訳ぐらい言ってくれてもいいだろ、ずるいだろ。そんな感情が渦巻く。

追いつくはずもないのに、濡れるのも気にせず、走った。

出口まで来たところで、足を止める。

息遣いが荒い。

走ったせいなのか、彼女のせいなのか、胸が苦しくなった。


終わり


——同じ世界を与えられた、二人の弱い男の物語——

完結

この作品はいかがでしたか?

129

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚