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コメント
4件
第4話、めっちゃ面白かったです……!「表」の華ちゃんと「裏」のバドのギャップがやばい。白銀の髪が伸びて青年になる描写、一瞬で世界観に引き込まれました。莉音くんの明るさと戦闘時の切れ味の差も好き。命乞いの嘘を見抜くシーン、ゾクッとしました…。最後の乃愛さんパートで思わず笑っちゃったのも含めて、キャラの魅力がぎゅっと詰まった回でした✨
午後九時。
静かなワンルームに、電子音が鳴り響いた。
ソファに座っていた華は、ゆっくりとスマートフォンへ視線を落とす。
画面に表示されていたのは、一通の暗号メールだった。
【対象十名】
【東雲区・第三歓楽街】
【本日中】
短い文章。
華は、小さく息を吐く。
「…仕事か」
ふと、視線が机の端へ向いた。
そこには、今日書道部で書いた半紙が置かれている。
『華』
まだ乾ききっていない墨の匂いが、部屋に微かに残っていた。
――『華ちゃんって、字も綺麗なんだね!』
――『師匠!! 俺の隣座ってください!!』
――『ちょっと莉音! 部室で暴れない!』
昼間の騒がしい声が脳裏をよぎる。
「……今日は、はしゃぎすぎたな」
ぽつりと漏れた独り言。
こんな感覚は久しぶりだった。
誰かと笑って。
誰かと言葉を交わして。
そんな“普通”みたいな時間を、自分が過ごしていたことが少し不思議だった。
だが――。
華は静かに目を閉じる。
それはあくまで、“表”の顔だ。
自分が生きる場所は、こちらではない。
制服のリボンを外す。
その瞬間、少女の身体が静かに変化を始めた。
白銀のボブカットがさらりと伸び、肩を越え、腰まで届く。
華奢な輪郭は鋭さを帯び、少女だった姿は青年のものへ変わっていく。
数秒後。
そこに立っていたのは、高校一年生の朔晦華ではない。
裏社会で“バド”と呼ばれる殺し屋であった。
藍色の瞳が、細められる。
“バド”は、静かに呟く。
「……行くか」
夜の繁華街。
ネオンが濡れた路面を照らし、雑踏のざわめきが街を満たしている。
その喧騒から少し離れた裏路地で、バドは莉音と待ち合わせをしていた。
バドを見るなり、莉音はぱっと顔を輝かせる。
「いやー! 師匠、マジかっこいいっす!」
「……」
バドは無言のまま歩き続ける。
「師匠が誰かと組むなんて珍しいっすよね」
莉音は隣を歩きながら笑う。
「まぁ、俺としては嬉しいんすけど」
「……今回は人数が多い」
「十人でしたっけ?」
「そうだな」
バドは短く答えた。
莉音は肩を回しながら、楽しそうに笑う。
「久しぶりに暴れられそうっすね」
「油断はするな」
「分かってますって」
そう言いながらも、莉音の声はどこか弾んでいた。
「そろそろ行くぞ」
「はーい。あ、帰りに小籠包食べてもいいっすか?」
#大正
奏楽雅
331
#勘違い
かませ犬S
455
#男主人公
パラレル・ゲーマー
173
にとり
1
「ああ」
「やった!!」
軽い会話を交わしながら、二人は夜の奥へ進んでいく。
目的地は、繁華街外れの雑居ビル。
人通りの少ない裏路地には、重たい空気が漂っていた。
「……いましたね」
莉音が小さく呟く。
路地の先に、三人の男たちが立っていた。
「ここは俺が――」
片付けます。
莉音がそう言い終わる前だった。
白銀が、一瞬だけ夜を裂いた。
「……え」
三人の男が状況を理解するより早く、バドはその間を通り抜けていた。
次の瞬間。
三人同時に崩れ落ちる。
静寂。
バドは何事もなかったかのように立っていた。
「あーーーっ!!」
莉音が頬を膨らませる。
「俺がカッコつけようと思ったのにーーー!!」
「落ち着け」
バドが静かに言う。
「まだいる」
その瞬間。
周囲の空気が変わった。
建物の陰。
非常階段。
奥の通路。
複数の気配が一気に現れる。
「囲め!!」
怒声が飛ぶ。
その瞬間、
莉音の表情が、すっと冷たくなった。
先ほどまでの軽い雰囲気が嘘かのように。
現れたのは、“裏側”の人間の顔だった。
「……師匠、右お願いします」
「ああ」
二人は同時に動き出した。
左右へ分かれる。
バドは静かに距離を詰め、次々と相手を無力化していく。
莉音もまた、流れるような動きで敵を制圧していった。
息を合わせる必要すらない。
長年組んできたかのような連携だった。
短い戦闘の末。
路地裏には静寂だけが残る。
「ふぅ……」
莉音が軽く息を吐いた。
「残るは――」
視線の先。
一人の男が地面へ座り込んでいた。
「ま、待ってくれ……!」
男は震える声で訴える。
「俺には家族がいるんだ……! 娘もまだ小さくて……!」
必死の命乞い。
その瞬間。
莉音の耳に、鋭い耳鳴りが走った。
キィィン――。
頭の奥を揺らす、不快な音。
莉音は静かに目を細める。
それが意味するものを、彼は知っていた。
数秒後。
路地裏に再び静寂が戻る。
莉音は小さく息を吐いた。
「……師匠」
「なんだ」
「こいつ、嘘ついてましたよ」
「……そうか」
バドは短く答える。
莉音は視線を落とした。
(……今回は、嘘でよかった)
仕事をしていると、命乞いをする人間によく会う。
家族がいる。
守りたい人がいる。
帰りを待ってくれている人がいる。
その言葉が本当のことも、時々ある。
だが――。
それでも、彼らは止まれない。
それが、殺し屋になるということだ。
そして――
【嘘を見抜く力】を授かった、佐々木莉音の帰結だった。
「……仕事、お疲れ」
バドが静かに言った。
莉音は顔を上げる。
「小籠包、食べに行くか」
その瞬間、
莉音の顔がぱっと明るくなった。
「はい!!!!」
さっきまでの空気が嘘みたいに、満面の笑みだった。
そんな弟子を見て、バドは小さく微笑む。
夜風が白銀の髪を揺らす中、二人は並んで繁華街の灯りへ歩き出した。
その頃、乃愛は――。
「だから、大丈夫だってば真央!」
「いいんですよ、お嬢様。恥ずかしがらなくて。わたくしが、隅々まで磨き上げて差し上げますから」
「だからそれが嫌だって言ってるの! もう、お風呂くらい一人で入れますぅーーー!!」
豪華な調度品に囲まれたバスルームの前で、乃愛は執事の真央と全力で揉めていた。
真央のお嬢様「愛」は、もはや過保護の域を超えている。放っておけば湯船の温度管理からパジャマの着せ替えまで全部やりかねない勢いだ。
「扉閉めるからね! 入ってこないでよ!」
「ああ、お嬢様! つれないお言葉……! ですがそんな冷たいお姿もまた可憐で……!」
乃愛もまた、
真央という強敵(?)を相手に、夜を戦い抜いていたのだった。