待ちに待ったお出掛けの日だ。浮かれて中也から目を離さない様にしないとな。
「早く行こうぜ!」
「はいはい、一寸待ってね。」
普段は私が色んな処に連れ回して居たんだけどな。
…よし、準備出来たし行こう。
「お~!」
目輝いてるなぁ。
あ、クレープ売ってる。
「ねぇねぇ中也、クレープ購わない?」
「購う!」
中也は好きだった苺猪口選びそうだなぁ。
私は正直要らないな。
矢っ張り中也は苺猪口を選んだ。クレープを頬張る中也。私は目の前に広がる空を眺めて居た。
良い天気とは云えないな。
「是美味いけど食うか?」
「私は大丈夫だよ。」
「え~。」
明らかにシュンとした。一寸心が痛む。
「や、矢っ張り一口貰おうかな。」
「本当か!?」
にっこにこだ。顔の周りにキラキラが飛んでそうな程。本当に判り易い。
「如何だ?美味いか?」
「うん。美味しいよ。」
本当は美味しくは無い。味がしないから。
「なら善かった!」
中也の嬉しそうな顔を見ると、何故だか此方迄笑顔に成る。不思議だな。
「そろそろ次の処行こっか。」
「うん!」
何時の間にか空は晴れて居た。
其の後、二人でよく行ったレストランで食事をした。
私はあまり食欲が湧かなかった為、凄く軽い物を頼んだ。中也は何時も此処で食べて居た物を頼んで居た。
「美味い!」
「善かったね~。」
「うん!!」
滅茶苦茶美味しそうに食べる。可愛い。何故中也ってこんな可愛いんだろう。
…早く記憶戻らないかな。
「御馳走様でした!」
何時の間にか食べ終わって居た様だ。
お会計を済ませ、又二人で歩いて居た時の事。乱歩さんに偶然会った。
「やぁ太宰。素敵帽子君の調子は如何だい?」
「記憶は戻って居ませんね。」
中也は私の横で乱歩さんに貰ったお菓子を頬張って居る。
あ、そうだ。と何かを思い出した乱歩さん。
「是あげる。」
植木鉢を貰った。
「鈴蘭の蕾。此の侭病室に置いときなよ。」
鈴蘭は春に咲く筈。今は冬真っ只中だ。如何して?
「あ、此の侭だと咲かないから。ねぇ素敵帽…じゃなくて、中原中也君。」
「はい?」
「是、病室に戻ったら植木鉢に植えてね。あ、太宰は触っちゃ駄目だぞ。」
不思議に思い乍、私達は其れを承諾した。
其の後私達は病室に戻り、中也は植木鉢に乱歩さんに貰った肥料の様な物を植えた。もう十六時。夕飯を食べたり、雑談したりしてたらもう二十一時。
そう云えば、明日は薬が完成する日。待ち遠しい。
コメント
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乱歩さんはなにを企んでいるのかなー? 薬のんで治るといいけど..,