『桜が満開だよ。おらふくんと…一緒に見たかったな…』
〈危ないっつ‼︎〉
『おらふくんっ‼︎ねぇ、おらふくんってば‼︎目を覚ましてよ‼︎』
君は、目を閉じて、起きてくれない。
ただ、力が抜けて柔らかい手を握る事しかできなかった。
なんで自分のせいでおらふくんが死なないといけなかったのか。ボンネットと側面が凹んだ車、血がついた道路、ざわめいている野次馬、鳴り響くサイレンの音、そして血を流して苦しそうな君、どうしようもできずに崩れ落ちる自分。今でもはっきりと脳裏に浮かぶ。
世界は残酷だ。
君が死んでも世界は当たり前のように何も変わらないし、みんな何食わぬ顔して生活している。
君が死んでから…6ヶ月。今は桜が満開だ。遺影にお茶と近くの甘味処で買った和菓子を供え、手を合わせる。桜が満開だよ…俺は…今でも後悔してるんだ。おらふくんに守ってもらうべき人じゃない気がしてさ。だって、君のかけがえのない大切な命を俺に奪われたようなものなのに。
遺影の中の君は、いつも笑顔だ。でも、天国で泣いてないかな。
そっと桜の花びらを置いておく。
僕はおんりーを助けて死んでしまった。悔いはない。あの時、君が泣き崩れているのが聞こえて、うっすらと目を開けると、本当に君は悲しんでいたね。今でも、おんりーに会いたくて、会いに行っては泣いてしまう。泣かないって約束したのに。
〈おん…り…〉
『おらふくんっ…』
〈死んでもさ…っ…お互い、泣くのはやめよっ…〉
『うんっ…』
透明な身体になってしまった自分。おんりーに触れようとしても透けてしまう。桜…綺麗だな…手を伸ばす。すると、自分の身体が光り、思わず目を瞑る。
周りを見渡す。すると、そこは…僕が死んだ事故現場。
なんで?はっと横を見ると、おんりーがいる。
タイムリープ?いや、違う。
まさかの転生か…有名な映画でしか観た事がない光景だ。おんりーをこっそり追うと、横断歩道の近くのガードレールに花をたむける。
そして、手を合わせる。何を話してるのかはもうわからない。
咄嗟に声を掛けてしまう。
〈あっ…あのっ‼︎〉
『はい?』
〈ここでっ…何をしてるんですか?〉
『昔…僕の大切な友達が、僕を助けてくれたせいで…亡くなったんです。』
〈おらふくんが…ですね?〉
『なんで…知ってるんですか?』
〈まあ…僕と関わりがある、というか〉
〈 前世がおらふくんだから、 なんですよね…〉
『…おらふくん?』
〈おんりーっ…〉
〈会いに…来たよ…〉
『おらふくんっ‼︎会いたかった…‼︎』
〈大好き…〉
『俺も幸せだよっ…』
〈あれ…腕が透けて…〉
『なんで…?』
〈僕はあっちの世界に戻らないとなのかも。〉
『俺のせいで死んだのに…嫌だっ…』
〈僕はおんりーのために、大切な人を守るために死ねるなら…命は惜しまない。〉
〈だから…さ、おんりーが僕の分まで…生きて…〉
おらふくん…俺のせいなのに…
君に笑顔で〈大切な人のためなら命は惜しまない〉
なんて言われたら…生きるしかないじゃん。
君の分まで生きるね。
疲れた。金曜。
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