テラーノベル
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‥凛月希さん(漢字間違ってたらすいません)
遅れたけど誕生日おめでとうございます!✨️
まずメッセージから!
凛月希さんへ!
テラーノベルを始めるきっかけとなった理由は2つあり、その一つが凛月希さんのおかげです!
私は昔から入院していまして、いつも暇だったんです。たまたま、広告でテラーを見つけて始めたのが1つ目です!
2つ目は、凛月希さんのおかげなんです。
凛月希さんの昔の作品にはなるんですが、「病んでる方達へ」って言う作品なんですが、それに本当に感動?しました!
あの言葉があってからこそ、今の私がいると思うんです!本当に、あの投稿を見てよかったです!
もちろん他の作品も好きです!!例えば「大嫌いなあいつと」がすきです!!あれはもう完全にハマってしまって、今でも定期的に読み返してるほどですwあんなに感動する作品は他に見たことありません!
これからも頑張ってください!就活も頑張ってください!
続いては〜、(急に話変わってすいません)小説ですね!
あ、今いつになったらイラストを出すんね?って思ったそこの誰か!イラストは描いてません!
というとでも思ったかアアア(((すいません
ちゃんと描きましたけど、一番最後にしときます✨️✨️w
それでは小説をどうぞ!
「人生は花と華に満ちている」
第1話 春、君が来た日
四月の風は少し冷たくて、だけど、どこかくすぐったいくらい甘かった。
新しい制服、新しいクラス、新しい教室の匂い。黒板のチョークの粉と、誰かがつけている柔軟剤の香りが混ざって、胸が少しだけ締めつけられる。
俺の名前はりうら。高校二年生。
この春、新しいクラスになって最初に感じたのは、嬉しさじゃなく、ぽっかり空いた穴みたいなものだった。
去年、同じクラスだった仲のいいやつらと全員ばらばらになって、知ってる顔がいなくなった。思ったよりずっと、それが寂しくて、黒板の前で話してる担任の声が、どこか遠くに聞こえた。
「転校生を紹介する」
担任のその一言に、教室の空気がふっと変わる。
「ほな、入ってこい」
その声と同時に、教室のドアが開いた。
入ってきたのは、背の高い男の子だった。ストレートの長い黒髪に、ほんのり笑った目元。制服の着方はきちんとしてるのに、どこかラフな雰囲気があって……なにより、声が優しかった。
「ども、あにきって呼ばれてます。ホンマの名前はちょっとややこしいんで、呼びたいように呼んでくれたらええわ。出身は大阪。たこ焼き焼けます。よろしゅう」
その瞬間、クラスがどっと沸いた。
拍手と笑い声。さっきまでの緊張がうそのように消えて、なんとなくその場に、春の光が差し込んだみたいだった。
——不思議な奴だな、と思った。
人見知りもせず、空気も壊さず、それどころか明るく包み込んでしまうような存在感。俺の胸にぽっかり空いた穴に、ふっと風が吹いた気がした。
そして、彼は担任に促されて、空いていた俺の隣の席に座った。
「……よっ、隣さん。よろしくな」
そう言って笑うあにきの声は、なんだか春風みたいにやさしかった。
◇
それから、あにきとの日々が始まった。
彼はすぐにクラスの人気者になった。男子にも女子にも分け隔てなく優しくて、ふざけたりからかったりしながらも、ちゃんと相手の顔を見て話す人だった。
だけど、なぜか——あにきは、昼休みになると決まって俺のところに来た。
「なあ、今日の弁当、交換せえへん?」
「え? でも俺の、そんなに美味しくないよ?」
「かまへんかまへん。俺が食べたいのは……そっちのタマゴ焼きやねん」
「……なんで?」
「なんとなくや」
そんな風に笑って、俺の弁当から卵焼きをひょいと取っていく。
他愛もない会話が、気づけば日課になっていた。
廊下を歩けば並んで歩き、部活の見学に行くときもなぜか隣にいて、「帰り、一緒に帰ろか?」と自然に言ってくる。
最初は「なんで俺?」って思ってたけど——あにきといると、不思議と心がほぐれていった。
その笑顔に救われてるのは、俺の方だったのかもしれない。
◇
ある日の放課後、俺たちは二人で裏庭のベンチに座っていた。
「……ここ、いいよな。静かで、風が気持ちよくて」
そう呟いた俺に、あにきが小さく笑って言った。
「りうら、ほんま風の話よぉするなあ」
「ん? ……あ、そうかも」
「風とか花とか、好きなん?」
「うん、なんか……全部流れていくけど、ふとした瞬間に気づくとさ、生きてるって感じがする」
「……ええな、それ」
あにきは目を細めて、空を見上げた。
夕陽が彼の横顔を照らして、なぜかその姿に、胸がぎゅっとなった。
まるで、その瞬間だけ時間が止まったみたいだった。
◇
春が少しずつ深まり、桜が散っていった頃。
あにきは、学校では相変わらず明るく振る舞っていたけど、放課後になるとふっと静かになることが増えた。
「……あにき、最近元気ない?」
ある日、思い切って聞いてみた。
すると彼は、一瞬驚いたように目を丸くしてから、そっと笑った。
「……ばれとったか」
「うん。だって、あにき、すぐ顔に出るから」
「そうかぁ……せやな」
少しだけ黙ったあと、あにきは続けた。
「ちょっとだけな、考え事しててん。でも、もう大丈夫や。りうらがおってくれるし」
「……なんで、俺?」
その問いに、あにきはまっすぐ俺を見た。
「なんでって……そら、りうらが俺の心に春をくれたからや」
その言葉に、胸がじんとした。
——ああ、俺も、同じなんだ。
あにきといると、世界が少しあたたかく感じる。
それは、友達とか、ただの隣の席ってだけじゃない。
もっと深くて、もっと大切な——そんな気がした。
◇
その夜、布団にくるまりながら俺は思い出していた。
あにきの笑顔。声。言葉。
「りうらが俺の心に春をくれた」
——あれは、ただの冗談なんかじゃなかった。
自分でもよくわからないまま、涙が頬を伝った。
あたたかくて、切なくて、愛おしい。
俺は、きっと……もう、恋をしている。
第2話 風が運んだ想い
文化祭の準備がはじまると、教室が急に騒がしくなった。
誰が何をする、衣装はどうする、買い出しの班をどう分けるか……そんな声が飛び交う中、俺は少し離れた窓際からそれを眺めていた。
「りうらー、お前も手伝えやー!」
男子の誰かが笑いながら叫ぶ。
その声に笑って返そうとしたとき、俺の隣に、あの声がふっと現れる。
「ほら、行こか。逃げ道はないで」
あにきだ。
いつもみたいに、笑ってる。けど、なんだろう。最近のあにきは、少しだけ——表情の奥が曇って見える。
「なんか、疲れてない? 最近」
聞いた瞬間、あにきはほんの一瞬だけ目を伏せて、それから優しく笑った。
「なんや、よう見とるなあ。大丈夫や。ちょっと寝不足なだけやし」
「……ほんとに?」
「ほんまや。けど、心配してくれて、ありがとな」
その「ありがとう」が、やけにやさしくて、胸にじんと染み込んだ。
◇
俺たちのクラスは、文化祭で「喫茶店」をやることになった。
男子は給仕か厨房、女子は制服のメイド風の衣装で……ってのが一応の振り分けだったけど、あにきはなぜか厨房を希望した。
「俺、オムライス得意やねん」
「マジで? 料理できるんだ」
「うん。小さい頃から妹の弁当作ってたからな。腕にはちょっと自信あるで」
「……なんか、すげぇな。かっこいい」
そう言った俺に、あにきはちょっと照れたように笑った。
「りうらにそう言われると、なんか……嬉しいな」
そのときの顔を、俺は今でも忘れられない。
◇
文化祭当日。
喫茶店は予想以上に繁盛して、俺たちはてんてこ舞いだった。
厨房に立つあにきの姿は、正直、目を奪われるほど格好よかった。
エプロン姿で、テキパキと動く。
笑顔で指示を出し、疲れた顔ひとつせず、黙々と働く。
俺は、ホール担当でお客さんの案内やオーダーを取っていたけど、ついつい厨房のあにきの方を見てしまう。
「りうらー、注文飛んでるぞ!」
「わ、ごめん!」
つい見とれてた……なんて、言えるわけもなく、俺は慌てて伝票を書き直した。
◇
午後、ひと段落した頃、あにきが厨房からふらっと出てきた。
「ちょっと外の風、吸うてくるわ。りうらも来いへん?」
そう誘われて、俺たちは裏庭へ抜けた。
誰もいない静かな場所。春にあにきと座った、あのベンチ。
「なあ……りうら。文化祭、楽しい?」
「……うん。すごく」
「そっか。なら、よかった」
あにきは少しだけ笑って、空を見上げた。
秋の空は高くて、雲が風に流れていく。
「……俺な、こうしてりうらと喋る時間、めっちゃ好きやねん」
「……うん。俺も、好き」
言葉にするのが、こんなに緊張するなんて思わなかった。
でも、あにきの目を見たら、どうしても伝えたくなった。
そのとき、あにきがふいに言った。
「りうらはさ……“好き”って、どういう気持ちやと思う?」
「……え?」
「ごめん、変なこと聞いたな」
「いや、ちがう。……俺、最近ずっと考えてた」
「ん?」
「誰かと話してるだけで、嬉しくなる。
その人のことを思い出すと、胸がぎゅってなる。
言葉を交わさなくても、隣にいるだけで、心が静かになる——そんな気持ちが、“好き”っていうのかもしれないって」
俺は自分でも驚くほど自然に、そう言っていた。
言ってから、気づいた。
その“誰か”は、目の前のあにきだってことに。
あにきは少し目を見開いて、それからゆっくりと微笑んだ。
「……せやな。俺も、そう思うわ」
ふたりの間を、秋の風がふわりと通り抜けた。
沈黙は、気まずさじゃなかった。
やさしく、あたたかい沈黙だった。
◇
その日の帰り道、俺たちは並んで歩いた。
言葉は少なかったけど、それが心地よかった。
校門の前で、ふとあにきが立ち止まる。
「なあ、りうら」
「うん?」
「……もし、俺がどこか遠くに行くことになっても、忘れんといてな」
その言葉に、心臓がきゅっと縮む。
「……え?」
「いや、なんでもない。今日は、ありがとな。めっちゃ楽しかった」
「……うん、俺も」
その背中が、夕陽に溶けていくのを、ただ見送った。
何かが、少しずつ変わりはじめている。
でも、それがどこへ向かっているのか、俺にはまだ、わからなかった。
第3話 秘密の痛み、君の笑顔
秋が深まり、木々の葉が色づき始めた頃。
俺は、あにきの様子がいつもと違うことに気づいていた。
笑顔は変わらない。でも、ふとした瞬間に見せる疲れた顔。
長い階段を登るとき、少し息を切らしているように見えた。
授業中、肩で息をしていることもあった。
「……最近、ちょっとしんどそうだね?」
そう言ったのは、俺たちのクラスの委員長だった。
「いや……気のせいだよ。あにき、毎日明るいし」
「……うん。でも、なんかさ……無理してるように見えるっていうか」
それを聞いて、胸がざわついた。
——気づいてるのは、俺だけじゃなかったんだ。
◇
ある日、放課後。
あにきは珍しく、部活にも顔を出さずに帰っていた。
その翌日も、そのまた翌日も——。
「……最近、あにき来ないな」
「体調でも悪いんちゃう?」
心配になって、俺は放課後、意を決して職員室に行った。
「あにきのこと、ちょっと心配で……最近、様子が変なんです」
担任は少しだけ言葉に詰まり、それから静かに言った。
「……そうか。実は、彼の家から“しばらくの間、通院のために早退や欠席が増えるかもしれない”って連絡が来ててな」
「通院……?」
「あまり詳しくは言えないけど、君が心配してくれるのは、彼も嬉しいと思うよ」
通院。
病気。
あにきの笑顔が、頭に浮かんだ。
——ずっと、無理してたんだ。
俺たちの前で、あの明るい顔の裏で、何かを隠してた。
その夜、眠れなかった。
胸が苦しくて、呼吸が浅くて、あにきの姿ばかりが浮かんできた。
◇
翌日、あにきは学校に来た。
でも、その顔は少しだけ青白くて、足取りも重かった。
「……大丈夫なの?」
俺が声をかけると、あにきは「んー、まぁな」と笑った。
いつもの笑顔。でも、目は笑っていなかった。
昼休み、あにきは屋上にいた。
俺は黙って後を追い、隣に座る。
「……ほんまは、気づいてたんやろ?」
「……うん」
あにきは、少しだけ目を伏せた。
「ごめんな、言わんくて」
「……言わなくても、わかった。無理してるって」
風が吹いた。秋の冷たい風。
だけど、俺の胸の奥の方は、それ以上に冷たく感じていた。
「なあ、りうら。俺、来月、入院するねん」
「……そっか」
「手術や。まあ、たいしたことないって言われとるけど……ほんまは、ちょっと怖いねん」
そう言って、あにきは小さく笑った。
でも、その笑顔は震えていた。
「死ぬかもしれへんって……思ってもうてな。そんなん、情けないけど」
「……そんなことないよ」
気づいたら、俺はあにきの手を握っていた。
「怖いなら、怖いって言って。俺がいる。ずっと、そばにいるから」
あにきの目に、涙が浮かんだ。
「……ありがとう、りうら。ほんま、お前がおってくれて、よかった」
その瞬間、言葉以上の何かが、ふたりの間に流れた気がした。
握った手の温もりが、心の痛みを溶かしていくようだった。
◇
それからの日々、俺はできる限りあにきのそばにいた。
病院へ行く前に連絡をくれたら、一緒に下校した。
授業のノートも写して渡した。
お互い、言葉は少なかったけど、それで十分だった。
ある日の帰り道、あにきがぽつりと呟いた。
「俺な、最初この学校に来たとき、何も期待してへんかった」
「……うん」
「どうせまた、病気で途中で抜けなあかんかもって思ってたから。友達とか、関係作るの、怖かったんや」
その声は、ほんの少しだけ震えていた。
「でも、りうらに出会って、変わった。毎日が楽しくて、生きてるって感じた。ほんま、救われたんや」
「……俺もだよ」
気づいたら、あにきを見つめていた。
「俺も、あにきが来てくれて、救われた。最初、クラス替えで落ち込んでたけど……あにきが隣に座ってくれて、話しかけてくれて……毎日が、輝いて見えるようになったんだ」
あにきが、目を見開く。
俺は、はっきりと続けた。
「……俺、あにきのこと、好きだよ」
言ってしまった。
でも、悔いはなかった。
俺の全部を乗せた言葉だった。
◇
あにきは、しばらく黙っていた。
そして——そっと、俺の手を握り返した。
「……俺も、好きや。ずっと、言いたかってん」
そのとき、あにきの目から、静かに涙がこぼれた。
俺も、泣いていた。
お互いの温度が、指先を通して、まっすぐ心に伝わっていく。
——この手を、絶対に離さない。
そう、強く誓った。
第4話 花が散っても、ここにいる
冬の足音が近づく頃、あにきの入院が決まった。
教室の隅にぽっかり空いた席が、寒々しくて、俺は何度もそこを見てしまう。
プリントを束ねて持っていくと、あにきはベッドの上で、少し照れくさそうに笑った。
「ほんま、ありがとな。こうして来てくれるの、めっちゃ心強いわ」
「当たり前だろ。俺、あにきの“クラスメイト”で、“恋人”なんだからさ」
そう言って渡したプリントの束に、あにきがそっと手を添える。
その指先が、細くて少し冷たい。
「なあ、りうら。俺、明日、手術や」
「うん」
「失敗することは、滅多にないって聞いたけどな……それでも、もしもがあったらって思うと、怖いねん」
あにきの声は小さく、夜の病室の静けさに吸い込まれていく。
「だから……ひとつ、頼みがある」
「なに?」
「あのさ。もしも、もしも俺が……」
「やめろよ、そんな“もしも”の話」
思わず遮った俺に、あにきは微笑んで、けれど真剣な目で言葉を続けた。
「……この世界におらんくなっても、りうらの中で、俺を忘れんといてほしい」
「——」
「笑ったときも、泣いたときも、怒ったときも、ぜんぶぜんぶ、花びらみたく心に残しててほしい。俺と過ごした日々を、“咲いてた証”にしてほしいんや」
「……やめてよ、そんなの。そんなこと言われたら……泣くに決まってるだろ」
こらえていた涙が、ぽたりと膝に落ちた。
自分でも、止められなかった。
「俺、ぜったい忘れないよ。
だって、俺の人生には、もうあにきが咲いてるんだ。——満開に」
あにきが目を見開いたまま、ゆっくりと笑った。
「……ありがとう。ほんま、ありがとうな」
◇
その夜、帰り道の校庭をひとり歩いていると、ふと、春の日の記憶が蘇った。
出会った日、桜の下であにきがくれたあの言葉。
「人生はな、華と花に満ちてるんやで。気づかんだけで、よう見たら、咲いてるねん」
あの時は、なんとなく聞き流したけれど——
いま、その意味がわかる気がする。
“花”と”華”は日々の中に咲いてる。
笑顔の中に。何気ない言葉の中に。
そして——あにきと過ごした、すべての時間の中に。
ポケットの中、あにきがくれた小さな押し花を握る。
それは、あの春の日にふたりで拾った、校庭の名も知らない小さな白い花だった。
「……明日、絶対にまた、会おう」
俺は空を見上げて、そっとつぶやいた。
「また、春が来る」
そう信じて。
◇
手術当日。
俺は授業そっちのけで病院へ向かった。
病室の扉の前で、あにきの母親が俺に気づいて、やさしく微笑んだ。
「ありがとうね、来てくれて。りうらくんの話、よく聞いてるのよ」
「いえ……俺も、あにきに……救われたから」
小さく会釈して病室に入ると、あにきがベッドに座っていた。
手術着姿、点滴の管。
「……来てくれたんか」
「ああ。来るに決まってんだろ。ばか」
ぎこちない笑い合い。だけど、心はつながっていた。
「りうら。ちょっと手、貸してくれへん?」
「うん」
そっと差し出した手を、あにきがぎゅっと握った。
「俺、戻ってくるからな」
「……ああ。約束、だろ?」
「せや。約束や」
その手を、ずっと離したくなかった。
でも、手術室のドアが開いて、看護師さんが声をかけた。
別れ際、あにきが振り返って言った。
「りうらの笑顔、俺の中でも、咲いてるからな」
その言葉とともに、扉が閉まる。
俺の手の中には、あにきの温もりがまだ残っていた。
花と華は、散っても、消えない。
心に咲いたまま、そこにいる。
第5話 花の名前を、君に
手術は、朝の九時から始まった。
俺は病院の待合室に座ったまま、ずっと両手を強く組み、祈るように目を閉じていた。
時計の針の音だけが、やけに大きく響く。
あにきが、扉の向こうで命と向き合っている。
そう思うだけで、何もできない自分が情けなくなった。
——代われるなら、代わってやりたかった。
——せめて、少しでも痛みを減らしてやれたらよかったのに。
そんなことばかり考えていた。
やがて、手術は五時間後に終わった。
医師の言葉は、まるで夢みたいだった。
「手術は無事に終わりました。ご家族の支えも大きかったと思います」
俺はその場にへたり込むように座り込み、喉の奥で「ありがとう」と何度も繰り返した。
心が、涙になって溢れ出した。
この世界で、まだ——
あにきが、生きている。
◇
病室に入ったのは、面会時間ギリギリの夕方だった。
白いシーツに包まれたあにきの姿が、目の前にあった。
点滴、酸素、モニター。
機械音が規則正しく響くたびに、「生きてる」と実感できた。
「……りうら、来てくれたんか」
かすれた声だったけど、ちゃんと俺の名前を呼んでくれた。
俺はベッドの傍まで歩み寄り、そっと手を握った。
「当たり前だろ。あにきが“絶対戻ってくる”って言ったから、信じてたんだ」
あにきの目元に、うっすら涙がにじむ。
「夢の中でも思ったんや。——りうらに、もう会えんかもしれへんって」
「ばか。会えたじゃん」
「……ああ。ほんま、会えてよかった」
その瞬間、俺たちは何も言わずに笑い合った。
言葉なんて、いらなかった。
ただ、手の温もりだけがすべてを語っていた。
◇
季節は、やがて春へと向かっていった。
退院したあにきは、少しずつ学校にも顔を出せるようになった。
まだ体力は完全じゃないけど、いつもの明るさは、変わっていなかった。
「おーい、りうら! 屋上行こや!」
そんな声を聞くたび、胸の奥がきゅっと締めつけられるような、
でも温かい気持ちになる。
ある日、ふたりで校庭の花壇を眺めていたとき、あにきがぽつりと言った。
「なあ、あの日、手術の前に言ってた“花と華のこと”、覚えてる?」
「うん」
「俺、自分の中で、ようやく“花の名前”が決まった気がするねん」
俺は少し笑って、そっと問い返した。
「……なんて名前?」
あにきは、ふわっと笑って、まっすぐ俺を見つめた。
「“りうら”や。俺の中で一番きれいに咲いた花の名前。
人生でいちばん大事な花の名前や」
その言葉を聞いた瞬間、胸がいっぱいになった。
「……ばか。そんなの、反則だろ」
「せやな。でも本気や。
俺、生きて、こうしてりうらに気持ち伝えられて、ほんまによかったと思ってる」
「……俺も」
俺は、あにきの手を取った。
「俺も、ずっとずっと“あにき”っていう華を抱えて生きてく。
どんなに離れても、季節が巡っても、俺の心に咲いてるから」
◇
卒業式の日。
あにきは、少しだけ制服を着崩して、晴れやかな顔で立っていた。
花壇の前で、記念写真を撮るとき。
「——あ、そうそう。これ、お前に渡したかったんや」
あにきがそっとポケットから取り出したのは、小さな白い押し花だった。
それは、あの日ふたりで拾った花と、同じものだった。
「“人生は華と花に満ちてる”って言ったやろ?
ほんまやなって、いま思えるねん」
「……うん。俺も」
花と華が散っても、春はまた巡ってくる。
悲しみがあっても、笑顔はその上に咲く。
そう、ふたりが出会えたように。
「未来が不安でも、俺たちなら大丈夫やろ?」
「——ああ。だってもう、“同じ花と華の名前”で咲いてるからな」
その日、俺たちは笑って、泣いた。
そして、“これから”を約束した。
◇
未来の話をしよう。
あにきと暮らす部屋には、小さな花瓶がある。
季節ごとに、色んな花を活ける。
でも、必ず一輪だけ——あの日の、あの小さな白い花を添えるのが、ふたりの約束。
過去も、苦しみも、そして愛も。
全部が詰まった、俺たちだけの“花と華の名前”だから。
——人生は、華と花に満ちている。
今日もまた、ふたりの花と華が、そっと咲いている。
end〜
はい!小説はおわりです!
続きてはイラストです!!線画ですがお許しを!😭w
なんかもとの案と違ってすいません😭
なんか左側が大変なことにはなってるんですが、ご了承ください😭
あと、よければ塗ってください!
これはおまけなんで!これもよければ塗ってください!
ウェブで保存したほうが多分綺麗です!
凛月希様以外はいけませんからね!?(保存等)
いい1年を過ごしてくださいね!
それでは!👋
コメント
4件
なんかすごい感動してしまって泣けてきました😭 小説もイラストまでありがとうございます!✨ イラストは暇な時に塗らせていただきますね!本当にありがとうございます!!
...小説も絵も書くなんて...なんて素敵(?) 私なんて絵だけだよ??