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すちは昨日とは違い、いつも通りの余裕のある時間に目を覚ます。
昨日の夜、一昨日のように娯楽に身を投じなかったのは賢明な判断だったようだ。
翠『 着替えよう … 。 』
霞んだ目を手で擦り、シルクでできた薄緑色のパジャマのボタンをひとつ一つ外していって筋肉質な白い肌を露出させ、上裸の状態でクローゼットの中にあるハンガーにかかった制服を着る。
翠『 ネクタイ … 、あった 。 』
翠『 … やっぱり 慣れないな 。 』
微妙そうな顔をしてネクタイを結んで襟を整える。
革鞄に最小限の持っていくものを入れて箪笥の上に置いてある羊のぬいぐるみを撫でる。
翠『 じゃあ 行ってきます 。 』
桜の木の板材でつくられた写真立ての中のこちらを向いた目線の人物が映った写真を愛おしそうに眺め、微笑みを向けて部屋の扉を開けた。
_『 お兄ちゃん また 同じ 小説 読んでるの ? 』
翠『 うん 、何回 見返しても 面白くてね 。 』
_『 今 なんの やつ 読んでるの ? 』
翠『 犬事件 の やつ 。 』
_『 好きだねそれ 。 』
翠『 うん 。 』
すちは自身の弁当を作ってから母親が朝ごはんを作るためキッチンからリビングの机に移った。
熱すぎない程度の温度の珈琲を口に含み、好んで読んでいる推理小説を読む。
実の妹と雑談を交わしながら母親が作る朝ご飯を待つ。
_『 おはよ ぅ … 。 』
翠『 父さん おはよ − 。 』
_『 おはよ − 。 』
_『 おはよう 。 』
翠『 父さん いつも の とこ に 弁当 置いてあるから 。 』
_『 ありがと − 。 』
規則正しい朝を迎え、家族団欒に花を咲かせる。
それでもすちは何故か少し物足りない様子であった。
_『 お兄ちゃん また あの子 の こと 考えてる − 。 』
翠『 なんでわかったんだよ 。 』
_『 若いっていいな 。 』
翠『 そっち は なんで 感傷 に 浸ってんの ? 』
すちは妹や父親と言葉を交わし、スマートフォンを操作する。
画面の中に映る桜木蘭を眺めながらほんの少しだけ口角をあげる。
そんな兄の姿を見ながら少し呆れた様子の妹は見たこともない「その子」の姿を想像していた。
_『 お兄ちゃん その人 の 顔 見せてよ 。 』
翠『 やだよ ぉ … 。 』
_『 父さん も 見たいぞ 。( 取 』
翠『 ぁ っ 、ちょ っ 、返して !( 焦 』
_『 どんな顔 なんだろ − な − … 。 』
_『 私 も みせて ! 』
_『 私 も 。 』
翠『 母さん も !? 』
妹の我儘を嫌がる様子のすちの手の中にあるスマートフォンを父親が奪った。
それにすちは焦りスマートフォンを取り返そうとした。
気付けば母親も寄ってきていて、すち以外の家族がスマートフォンに映った画像を食い入るように見つめる。
_『 美人 じゃん ぇ 、話してみたい … 。 』
_『 女 の 子 に しては 髪 短いな 。 』
翠『 ちょっと ッ 、! 』
_『 … これ 男 の 子 じゃない ? 』
_ _『 … … は !? 』
焦った様子のすちを尻目に画面に映った写真を見て妹は願望を語り父親は少々不思議がっていた。
そんな中母親はその疑問を口にして、数秒の沈黙のあと大きな声が家に響いた。
_『 これ男 の 子 ? マジで ? 破壊力 えぐすぎじゃない ? 』
翠『 言わんとしてること は わかる 。 』
_『 … 父さん は 同性愛 でも いい と 思うぞ 。 』
翠『 なんだ その気 を 使ったような 物言いは 。 』
_『 可愛い じゃない 見る目 あるわ ~ っ 。 』
翠『 それ褒めてんの ? 』
_『 いや お兄ちゃん から 聞いた名前 らん だったからさ 、普通 に 女 の 子 かと 思ってた 。 』
翠『 聞いただけじゃそりゃ勘違いするよね 。 』
すちは家族が発する数々の言葉に一つ一つ反応して言葉を返した。
すちは視界の端に映る時計の針を見て素早くスマートフォンを取り返してから出来上がった朝ご飯を机で頬張った。
翠『 ん 、じゃあ 行ってくる 。 』
_『 あ ! 話 切り上げた !! 』
_『 帰ってきたら また 話 聞かせてね − 。 』
翠( 帰りたくなくなってきたんだけど 。 )
少量であったからかすちはすぐに完食し話を切り上げて玄関へ向かった。
いつものように家族が見送りの形で玄関にくる。
_『 やっぱり 好きな子 が いると 学校 に 行きたくなるもんだな 。 』
_『 それぐらい あの子 が 好きなのね ~ 。 』
翠『 そろそろ 口 塞いだら ? 』
_『 我が息子 辛辣 。 』
_『 お兄ちゃん 偶 に 辛辣 に なるよね 。 』
翠『 そっち が 悪いんでしょ 、もう 行ってくる 。 』
_『 行ってらっしゃ ~ い 。 』
_『 行ってらっしゃい ! 』
_『 行ってらっしゃい 。 』
翠『 … 行ってきます 。( 微笑 』
すちは家族へ微笑みを向けて外へと足を運んだ。
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桃『 すち ! おはよ ! 』
翠『 おはよ 、らんらん 。 』
教室に入っていつもの挨拶を交わす。
ささやかではあるがすちにとってはとても楽しい時間の一つだ。
桃『 席替えっていつあるんだろ 。 』
桃『 頻度的 に もうちょっと じゃんか 。 』
翠『 そうだね 、あと 2、3日 じゃない ? 』
桃『 ふ − ん 、楽しみ − 。( 笑 』
すちは今日も恋い慕う相手の笑みに嬉しさを覚える。
『 いつか 恋人 に なりたい 。 』という願いを心の内に秘めて 。
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