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MAKO
『はぁー…死にたい…』
ベッドの上でごろりと寝返りをうって、主は呟く。
別に今の生活に不満はないし、仕事も今はしていない。
特に何があるわけでもないが死にたかった。
死ぬことが救いで、死んだらもう頑張らなくていいんだ、という希望があって死にたかったのだが、ここ数日で意識はガラリと変わってしまった。
死ぬことも救いではなく、希望でもなくなった。
もうどこにも希望は無いし、何にも期待しない。
ただ、自分の役割を果たすだけ。
そういう生き方をすれば良いのでしょ?
そう思ってしまったのだ。
『ルカス、死にたいのがなくなった』
「それは嬉しいですが…主様、お辛そうですよ?」
『そんなのどうでもいいよ、気分が軽いの!
こんなに胸が軽いなんて久しぶり!
すっごくスッキリしてるの!』
「それは良いことかもしれませんが、私には主様が無理をして明るく振る舞っているように見えますよ?」
『そうなのかな?よく分からないや』
「体の症状は落ち着くどころか悪化していますし、体が重かったり頭が痛かったりするのではないですか?」
『体はいつも通り重いけど…頭痛とかはないし…お腹は下してるけどもう慣れたし、全然大丈夫!』
「どこが大丈夫なんですか…」
『頑張れば普通になれそう!これなら働けるよ〜』
「頑張ればという部分、もっとよく考えてください
どれだけの無理をなさるおつもりですか?
また仕事を休むようなことになったら迷惑をかけるとか、最悪死んでしまったらお葬式にもお金がかかるんですよ?」
主の目が死ぬ。
別に葬式のことを出されたからではない。
自分がもう大丈夫だと言っているのに信じてくれなくて苛ついているのだ。
『…去年おばあちゃんが死んでその遺産があるからお葬式してもなんとかなるよ』
「主様!そういうことではありません!」
『煩いな!なんなのよ!』
主は立ち上がってルカスを睨む。
一呼吸おいて、ルカスがゆっくり話し始めた。
「…主様は、死ぬことだけが希望で救いだと仰っていましたね?
でも、もう死にたくなくなったということは死ぬのを諦めたということ…死ぬのを諦めたという事は、同時に生きることを諦めたということです」
『…うん』
「主様、どうやって生きるおつもりですか?」
『もう希望も救いもなくなってしまった。
だけど、「こうしたら正解なんでしょ」「どうせ我慢したらいいんでしょ」っていう強固な考えがある。
それに従うだけだよ。
私は今何にも興味ないし、何にも希望がないけど満足してるんだよ?』
「ですが、それは「人生やりきった」と言う様な充実感は無いのでしょう?」
『無いけど、これでやっと生きられるようになったの。
死ぬことを諦めることだけが私の生きる方法だったんだから、これでいいの!』
「主様、視野狭窄が過ぎます!」
『視野狭窄なんていつものことでしょ、今までずーっとこれで生きてきたの!これでも何とかなってたの!これからも何とかなるの!』
「ならないから今こうして私と治療しているのではないですか!」
『もう良いよ、私は無理して倒れて死ぬよ!それが本望だから!それが私にとって唯一の仕返しだから』
「主様!」
ルカスの止める声も聞かず、主は指輪を外した。
これからはもう現実世界で生きていこう。
どうせ仕事もしないといけないと思っていたところだ。
ちょうどいい。
主は指輪をチェーンに通すと首から下げ、仕事を紹介してくれるように相談員に電話をかけたのだった…
コメント
1件
いやあ、もう胸が締め付けられたわ…。 ルカスの「死ぬのを諦めた=同時に生きることも諦めた」って指摘、本当にグサッときた。 主は「これでやっと生きられる」って言ってるけど、それが無理して明るく振る舞ってるだけなのが伝わってきて辛い。 指輪外して現実に戻ろうとする決意も、希望じゃなくて“諦めの先の生存戦略”って感じで、読んでてすごく苦しかった。 でも、この苦しさがリアルだからこそ、この先どうなっていくのか気になって仕方ない。 MAKOさん、重たいテーマを丁寧に描いてくれてありがとう。続きがすごく気になるわ🔥