⚠血
─侑視点─
治の異常さに気がついたのが数日前。
俺はそれから少し距離を取るようになった。
同居している以上、家では今まで通りにするしかないが、学校では極力接しないようにしていた。
まあ、当たり前に治には怪しまれるわけで。
「侑。なんで避けるん」
なんでって、そりゃ怖いからに決まってる。
この前、モブからある噂を聞いたのだ。
─────
「なぁ、侑」
「ん、なんや」
「あの治のウワサ、ほんとなん?」
「?」
思い当たる節がなかったため、ウワサとはなんなのか聞き返した。
「侑が知らんのも当たり前か。治な、裏で侑と仲良くしてるやつを牽制してるんやて」
「ケンセイ?なんや、それ」
「うーん、なんやろ。侑を独り占めしたいから、他の人を寄せ付けないようにする、的な感じやな」
「え、こわ。なんやそれ、治がほんとにやっとんの?」
全然気づかなかった。違和感が無いほど、隠密に行われていたのだろう。
「なんか、ちょっと怖いわ」
じゃあ一緒に住もうと提案してきたのは、ずっと俺の近くに居るため?
それなら、今までの行動にも納得がいく。
「ちょっと距離置いた方がええんやない?」
「せやな、」
治の闇を知ってり、怖くなって避け始めたのはこの時からだった。
─────
本当かわからないが、意識して過ごしているうちに、たしかにそうかもしれないと思えてきた。
そこで、俺はある提案をした。絶対に拒否られると思ったが、それは確かめるためでもあった。
半分真面目、半分賭け。
「俺出てく」
「…は、なんで??」
その瞬間、空気がピリついた。見たことがない治の表情、声、その全てが怖く感じた。
確実に怒っている。ウワサは本当なのかもしれない。ただの友情だけなら、こんな反応はしないはずだ。
「なぁ、侑。なんでなん、不満でもあった?」
そんなん、いくらでもある。この前は風呂に入ってきたし、女子と雑談していたあとも、何を話したとか、細かい内容まで聞いてきたし、別に近くもないのに距離が近いとか、文句も言ってきた。今思えば、これもおかしい。
治はぐい、と詰め寄ってくる。身長差はほとんどないはずなのに、ものすごい圧を感じた。
「そ、そういう所も、何かと縛ってくる所も、うんざりなんや!」
「….侑」
その瞬間、首元に激しい痛みを感じた。
バチバチッ
「え、…」
意識が飛びかける中で、なにをされたかやっと理解する。全身の皮膚がピリピリとして、少し痛い。
衝撃で倒れた俺を、治は上向きに寝かせ直し、奥の部屋へと消えていった。
少しして戻ってきた治の手には長いロープが握られていた。この後どうなるか想像できてしまって、今すぐこの場から逃げ出したくなった。
「ぉ、さ、む…」
「およ、まだ意識あったんか。意外とタフなんやなぁ」
次の瞬間、さっきよりも激しい痛みとともに、俺は意識を手放した。
─────
「…..(目覚ます」
「..、?」
「あ、侑起きた?おはよぉ」
「治?どこにおるの、?」
声はするのに、姿は見えない。目を開けても、視界は真っ暗なままで怖い。
「目隠ししとるからな、怖いやろ?暗いの。苦手やもんなぁ。でも、侑逃げるからな。我慢してや」
「いや、治…、怖い、っ、」
こわい、治、…
「おさむ、とってや、..うぅ…」
俺は暗いところが苦手。いわゆる暗所恐怖症ってやつだ。
今すぐ目隠しを取りたいが、足は椅子の脚に固定されていて、腕は背もたれの後ろで縛られているため、身動きを取ることができない。
最悪な状況だ。
「侑、俺がなんでこんなことしとるかわかる?」
「、わからん..」
治の考えていることなんか、知ったことではない。
あぁ、こんなことになるんなら、あんな提案、しなければよかった。
ほんまもんのアホや。
「なんであんなこと言うたん?何不自由なく生活出来とったやろ?」
「やって、…」
なんて言えば、この後訪れる最悪な事態から免れることができるのだろうか。どう言い訳をすれば、治は怒らないだろうか。
いや、無理だな。この沈黙さえも、治の機嫌を損ねている。
恐怖で上手く頭は回らないし、言い訳を考えるのも、段々アホらしくなってきた。
「なぁ、聞こえとる?なんで?」
コツコツと、靴の音が聞こえて、治の気配がだんだん近くなる。
目の前に来たかと思いきや、椅子を揺らすほどの力で背もたれに手をつかれる。
「ぅ、」
グラリと椅子が後ろに倒れそうになったが、治が太ももの間のスペースに膝をつき、もとに戻る。
「なあ侑」
俺に覆い被さるような体制の治。
治の服が体に触れた時、自分が上裸なんだと気づいた。
「治…?」
多分治の頭がすぐ近くにある。髪の毛が首筋に当たってくすぐったい。湿った息を肩で感じる。
短く吸った息が聞こえたあと、首の根元に刃物を当てられたような痛みが走った。
「い”ったッ”!?」
たぶん、噛まれた。
治は俺の叫びなんか無視して、カジカジ、カブカブと首らへんを噛み続けた。
傷口に歯を立てられたり、同じところをずっと噛み続けられたり、はたまたじゅうっと吸いつかれたり。
人生で経験したことのない痛みで、思わず涙がこぼれた。
「おさッ、いたい!いたいっ!あぁ”ッ!…」
激痛で頭がおかしくなるほど、噛まれ続けた。
俺の顔は涙とよだれでぐちゃぐちゃで、治は俺の顔を見て、ちょっと笑っていた。
本当に獣に捕食されているみたいで、治が治じゃないみたいで、怖かった。
数分後、治はやっと口を離した。
「はぁ、っはぁ」
傷口がジクジクと痛む。血がツーっと流れる感覚。またそれを治が舐めた。
「侑、目隠し取るで」
照明が眩しくて、目がチカチカする。まだ目には涙が溜まっていて、上手く治を捉えることが出来ない。
だんだん照明の明るさに慣れてきて、治がはっきり見えるようになった。
口を見ると、血がべっとり付いていて、反射的に首元を見る。
それは思ったよりも重症で、広範囲に広がっていた。
歯型が数え切れないほど付いていて、血が滲むどころの話ではなかった。
こんな経験、もう二度としたくない。きっと2度目はこんなことでは済まないだろうから。
「おさむ、ごめん、もうあんなこと言わんから…」
すると治は満足そうに微笑んだ。そして、腕の縄を解きながら話し始めた。
「それでええんよ。侑は、ずっと俺と住んでたらええ。もうどこにも行かせん。俺だけの侑や」
そういい、優しく抱きしめてきた。
俺のことが好きで好きでたまらない治を見ていたら、なんだかさっきまでのこともどうでもよく思えてきて。
重すぎる愛も、それだけ大事に思ってくれている証拠。
「ずっと一緒やで。でないとまたおかしくなってまうから」
「うん、」
さっきまでの恐怖も、忘れてしまった。
「侑、ずっと一緒におってくれる?」
「うん、おるよ」
腕を背中に回せば、治は少し驚いた顔をして、また強く抱きしめてきた。
ほんま、どこで間違えたんかな。
──────
────
──
─数年後─
「侑、ただいま」
「治!おかえり!」
前よりもずっと笑うことが多くなった治。髪も銀髪から金髪になり、大人になってパーマもかけた。
俺がやりたいと思ってた髪型、やってくれたんや。
「今日は何してたん?」
「治の試合の録画見てた!ジャッカルVSアドラーズのやつ!」
「あぁ、これか」
広い部屋に実況の声が響く。
『ここで宮侑のサーブ!_決まったー!!怒涛の3連続サービスエースー!!』
「このシーン好きや。よくアドラーズ相手にサービスエースとれたよな」
「絶好調やったんや」
そう微笑む治に、昔の面影はなかった。
ほんまに俺にそっくり。
「さ、天気予報でも見よ」
治は偏頭痛持ちで、明日の天気次第でコンディションが変わるから、そういう日は前の日から対策をする。
俺はそばにあった雑誌を眺め始めた。
天気予報が終わり、ニュースが流れ始めた。
「やっとかいな」
治の独り言が聞こえて、思わずそちらに目を向ける。
『昨夜、午後𓏸時𓏸𓏸分に××市で宮治さん(24)が行方不明になっていることが明らかになりました。』
『警視庁の調べによると、高校から親族とは別に住んでおり、連絡がつかなくなったことで事態が発覚した、そうです。』
『まだ捜査は続いており…』
ぼんやりとテレビを眺める。
一生見つからんとええな。てか、見つけられないやろうけど。
俺も、治も。
END
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久しぶりです🙌
ちょーきり悪いけど、一応これで終わりです😖
まじ最近書きたいのが多すぎて😓
こっからはちょっと雑談です
最近Tiktokで軍服のやつ流行ってますよね…!あれ、なんかめっちゃ良くないですか😳😳
共感者いるかなぁ?いてくれたら嬉しい🥹
じゃあ、ばいばーい👋
コメント
6件

a@0なj3や@6はd4こ3の3そ5/Ξ„√“000やj5わw3や'3さ_-@???? 日本語喋れないくらいやばいんよ………もうマジ最高(´ཀ`) いや、こんなラストの展開誰にも予想できないって!!Ranすごすぎるでしょ??天才???いや、言うまでもなく天才か Ranの作品何でも大好きだから次も楽しみにしてるね💕
ほうほう……このようにして僕をニヤニヤさせるとは(?) ンギャァァァァァ!! 読んでてさまじこんな感じの顔だよ ( ´◜ᾥ◝`) えまさかのまさかの、治が大人侑になりすまし(?)をしている!?まじで最高だ😇💕 親がいんのに叫びそうになったけど我慢した僕偉(?) もぅさこういう治侑が大好物すぎる…🤤 えまってわかるなんか軍服流行ってるよね!? 完結したのか…🥲まぁ次もまってるね!
ラストまさかの展開で1人でめっちゃ盛り上がってしまった、、、!!! 今回のお話もめっちゃ良かったです! 投稿ありがとうございます!