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そして、社会人となって数人目の彼と別れることになった。
「今回の彼は会社のお得意先に勤めてるんだよね。大丈夫なの?」
サアヤが聞く。サアヤは現在保育園併設の幼稚園で働いている。
「超円満だよ。あなたの成長をこれからも見守っていきたいとか言われたよ」
それを聞いてコトリが爆笑している。私は泣きたいよ。もう結婚してもいいと思える程の優良物件だったんだから。
「なんでだろうねー? イチゴってそんなに甘えっ子な感じじゃないしね」
コトリはデザイン系の会社で忙しく働いている。私たちは今、三人ともフリーである。私が今日約二ヶ月お付き合いした彼と別れたから。
私ももうすぐ二十五歳。大人になった分、お付き合いが始まると先に進むペースが早くなる。
今回の彼とも仕事で出会い、意気投合してお付き合いを申し込まれて了承して、とんとん拍子でお泊まりするようになった。
そして三回目から「お泊まり」のみとなった。手を繋いで寝るだけになったのだ。またその日が来たか。
もう私は様子を見るのはやめて単刀直入に聞いた。
「もしかして、もう私を抱くつもりはないですか?」
と。そしてその場で別れることになった。
納得いかない! 私は決してロリなわけでも、妹キャラでもべったり甘え系なわけでもないの。普通! 普通に恋愛をしていたつもりなの!
特に就職してからは、自立した大人同士の付き合いを意識していたし、仕事だって普通にできている。
それなのに、彼氏になった人たちは皆、私の心配をして、守るように大切にし始める。最初はあった性交渉も、そんな不純な気持ちを私に抱いちゃいけないと思うようになるらしい。
私のどこにそんな要素が?
実際、私と別れた男たちは次の彼女とは普通に付き合っているらしい。私に性的に魅力がないだけだったのかなと落ち込む。すると彼らはたまに私に、
「困ったことはない? なんでも相談しろよ」
なんて優しい言葉をかけてくる。今付き合っている彼女には睨まれる。
なんなのこれ?
もう一度言わせて。なんなの、これ!
「いっそ、体目当ての男と付き合いたいかも」
「やめなよー」
「そうだよ。きっといるって、お父さん化しない男がさ」
「てゆーかさぁ、イチゴがお父さんを生産している間、私とコトリ何もないんだけど!」
「いやー! 言わないで、頑張って目を逸らしてるんだから!」
私たちは笑ったり嘆いたりしながら、飲んで食べて、店を出たのは十一時頃だった。
明日は全員休みだ。
帰る? どうする二件目? なんて話しながら駅の方へ向かって歩いていると、途中にどうみても喫茶店なんだけど、「占いの館」と看板が付いているファンシーなお店があった。行きには気付かなかったな。他の二人もそう言っていた。
「十二時までやってるって」
コトリが看板に書いてある文を読んだ。
「行ってみたい!」
サアヤも乗り気だ。
「ちょっと酔ってるけど大丈夫かしら」
と言いつつ、私も興味が抑えられなかった。今後の恋愛運どうなんですか、と聞きたかった。
嘘でもいいから次は大丈夫と言って欲しい。
中に入ると他にお客さんはいなかったけど、割と普通に可愛らしい喫茶店だった。入り口の説明を読むと、占い希望者は他より少しだけ高いドリンクを頼んで飲みながら待っていれば、占い師さんが席に来るというシステムらしい。
「ごめんなさーい。今日はもうお客さん来ないと思って他の人返しちゃったのよ。三人まとめてでいいかしら? もちろんサービスするわ」
マダム? なのか、奥から出てきた年齢性別不詳の派手な方が、表の看板をclosedにして戻ってきた。お好きな席にどうぞと言って、飲み物の注文を聞いてきた。
壁にかかっていた小さなホワイトボードに「おすすめ 紅茶ダージリン(占い付き)」と書いてあったので、三人ともそれを頼んだ。
私たちは三人で大きめのソファに横並びに座り、
「ちょっと緊張してきた」
なんて言い合っていた。
「お・ま・た・せ・さま〜」
とても良い香りの紅茶が運ばれてきた。いい感じに酔いも覚めてきたかも。
「三人とも、恋愛運でいいのよね?」
『はいっ!』
声を揃えて答える。そして、三人で座っているソファの向かい側にマダム? が座った。
「アタシはツクシ。ツクシちゃんて呼んでね。一応店長なのよ」
シルバーと紫のグラデーションのボブヘアのツクシちゃんは相変わらずどちらかわからないけど、もうツクシちゃんでいいか、と思わせる説得力があった。
ツクシちゃんはタロットで占うみたいだ。
「まずはあなたね。簡単そうだから」
と、コトリを指名。シャッシャッとかき混ぜてみたことがない形にカードを並べていく。
「えっ、簡単ってどういうこと?」
コトリは口を尖らせて言ったが、ガン無視されてしばらく待つとツクシちゃんに結果を伝えられた。
「だって勤め先に好きな人いるでしょ。相性もいいし、もうすぐうまくいくわよ、結婚にまで持っていけるかはお互いの努力次第ね。彼の母親がキーパーソンだから」
コトリは尖らせた口をそのままあんぐりさせていた。
「ちょっと! 聞いてないんだけど、上司なの部下なの何歳なのー!」
サアヤと私が猛追する。
「待って! だってまだ仲良くなったばかりで、今度渋谷のデザイン展に行こうって話になっただけなのよー」
ツクシちゃんは楽しそうにニコニコしながら私たちの様子を見ている。
コトリは続ける。
「でもね、いつもハンカチとかピシッとアイロンがかかってて、『今日は母と待ち合わせだから、じゃっ』とか言って帰る時があるの。マザコンかなって少し疑ってるんだ」
「……」
私たちはなんと返せばいいのかわからなくて少し黙ってしまった。
するとツクシちゃんが、
「あなたは前世で立派なマザコンを育てた女よ。あなたにとって男を自分命に育て上げることなんてその気になればなんでもないことなの。思うようにやってごらん」
と励ましてくれた。ツクシちゃんは不思議なことを言ってるけど、一見控えめに見えて男をしっかり尻に敷くタイプのコトリなら、子離れできていない姑にも勝てる、何故か私もそう思った。
「前世も見えるんですか!」
興奮するサアヤに、ツクシちゃんは、
「全員じゃないの。特徴的な人だけわかるのよ」
とウインクして答えた。
「さ、次は……あなたね」
サアヤの番が来た。