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必死にルガルガンの手から逃れようと暴れるが、ルガルガンは慌てる様子なくまるで赤子でもあやすかのようにニャオハをぷらぷらと揺らす。
「ニャオハ!」
雪乃が叫ぶ。
ニャオハも必死に抵抗して頑張ってくれている。逃げ出そうと足掻いている。
だったら…。
空の色が変わり始め、夜の帳が下りる。
小さな赤い光が、水平線の向こうへ消えていく。
「ーーーニャオハ、“このは”!!!」
雪乃は思いっ切り叫んだ。
ニャオハに届くように。
ニャオハはハッとし、ブワッと毛を逆立てる。
すると緑色の体毛が光り始め、木の葉となってルガルガンに飛んでいった。
至近距離でこのはをくらったルガルガンは驚きと衝撃でその手を離した。
ずっと摘まれていた首根っこを離され、屋上から地面へ落下していくニャオハ。
「草凪さん!」
「雪乃!」
瀬戸と美希が叫ぶ。
雪乃は手の中にあったボールのボタンを押し、そして上空へと思いっ切り投げた。
「ニャオハ!!!」
緑色に赤い雫模様が描かれたボールが、まっすぐ落下中のニャオハに向かって飛んでいく。
それは、一瞬の出来事で。
スローモーションのように感じた。
「にゃおーー!!」
ニャオハは嬉しそうに笑いながら、そのボールへぶつかった。
空から夕陽が消え、夜が訪れた時、
ニャオハは雪乃の腕の中にいた。
「遅くなってごめんね、ニャオハ」
その温かい腕の中で、ニャオハは安心して目を閉じた。
「………」
「な、何かよー分からへんけど、一件落着?」
黙り込むゾムの隣で、シャオロンが口を開く。
その瞬間、ゾムが屋上の手すりに足を掛けた。
「ちよ、何してんねんゾム!」
屋上から飛び降りようとする友人に慌てるシャオロン。
「ムカつくから追いかける」
「はぁ!?」
しかし、後ろから春翔にフードを掴まれ引っ張られる。
「こら、風紀の目の前で堂々と飛び降りようとすんな」
「うお、ちょ、首絞まるて!」
その様子を下から見ていた雪乃たちは、これ以上ここにいる意味はないと一目散に逃げていった。
「ほら、お前らもさっさと下校しろ」
雪乃とニャオハの選択を見届けた春翔は、ゾムのフードを引っ張りながら屋上から出ていこうとする。
「ぐえ、しぬ…」
「だ、大丈夫かゾム」
フードを引っ張られ首が絞まるゾムと、それを心配するシャオロン。
「春翔、何か怒ってる…?」
「あ?怒ってねーよ。怒ってねーけどこいつには事情聴取する必要がある。だよな?ゾム」
確実に怒っている春翔の問いかけに、ゾムが答えることはなかった。
そんな様子を見てシャオロンは息をつく。
やっぱり妹のことが大事なんじゃん。
妹のために怒るその姿は、ただの兄だった。