テラーノベル
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12月
今年もとうとう冬がやってきた。
もう12月後半。ここら辺は結構冷えるため早めに雪が降る。きっと1月に入る頃には積もっているだろう。
赤「紫ー帰ろーぜ」
紫「おけー」
いつも通りの帰り道。隣には寒そうにしている赤。
この前のテストでもらった条件。『相手になんでもいうことを聞かせられる』。
赤は俺とのデートに使った。
紫「………赤」
赤「ん?」
紫「この前のテストやつさ、使っていい?」
赤「あぁ〜、何にするん?w」
紫「明日………どっか行かん?」
赤「明日?……え、///」
紫「……、//」
赤「………いいよ、///」
紫「…wありがと」
赤「笑うな、//」
なぜこんなに照れているのか。簡単な話、明日はそう。
紫「クリスマスかぁ……はぇー、」
赤「それ終わったら受験かぁ、」
紫「やめろ、今それを出してくんな、」
赤「wwwごめんってw」
紫「明日どこいく?w」
赤「え?俺決めていいん?」
紫「いいよw」
赤「っ!じゃあ______w」
楽しそうにスマホをこちらに向けて話す赤。
明日はきっといい日になる。
紫「じゃあ行くか」
赤「どっからいく⁉︎」
紫「………子供w」
赤「子供じゃねぇよ」
結局赤の提案でユ◯バのような遊園地に行くことになった。
普通よ遊園地よりもダイナミックで楽しいアスレチックがあるらしい。
赤「パッと見ユ◯バ………」
紫「赤、それ言ったら今日もう終わり」
赤「確かに」
俺たちは最初に、ここで1番怖いジェットコースターに乗ることになった。
どんどん登っていくジェットコースターに対して帰りたくても帰れない実感と落下した感覚の脳内再生に襲われる。
赤「………やばい、もう帰りたい」
紫「……………、」
赤「?、紫………って顔真っ青じゃn、⁉︎」
猛スピードで落下するジェットコースター。止まることを知らずアクセル全開のスピードで動いていく。
赤、紫「………………」
結局2人ともあまりの怖さに声を出せず失神。下に降りてからもしばらくフラフラだった。
赤「…………うっ、」
紫「…………大丈夫か?」
赤「こ、コーヒーカップ乗ろう、」
紫「…………おけ、」
隣で真っ青な顔をしながらコーヒーカップに乗りたいと言い出す赤。
せっかく来たし、自分が言い始めたことだと責任を感じているのか、それともただ満喫したいだけなのか。
ペットボトルの水を一口飲んで俺たちはコーヒーカップを目指した。
赤「紫!コーヒーカップっ!」
紫「…………酔いは?」
赤「コーヒーカップ見たら冷めたわ」
紫「すごいなお前」
スタッフ『次の方は赤色のカップへどうぞ〜!』
紫「っ!」
たまたまなのは十分にわかっているが、やはり『赤』と言われると少し反応してしまう。
カップの中は思ったよりも広かった。
向かいに座る部分があって真ん中にカップを回すための円盤がついている。
赤と俺は向かい合わせに座り、しっかりと円盤を持つ。
赤「これどんだけ回んの?」
紫「知らねーまた酔うなよ?w」
赤「わかってるってw」
スタッフ『それでは〜楽しいパーティーをお楽しみくださぁ〜い!』
スタッフさんの掛け声と共に陽気な音楽が流れ始め、カップが動く。
赤は一生懸命円盤を回しているが意外と硬いのか全く回っていない。
赤「ッッ〜〜!!」
紫「………w」
俺はカバンからスマホを取り出し、向かいに座る赤に向ける。
カシャッッと音がし、一生懸命回す赤が切り抜かれた。
赤「おい、今撮っただろッッ!w」
紫「ごめんってw手伝うから怒んなw」
俺も円盤に手をかけぐるっと回す。少し力を入れただけですんなり回る円盤。
紫「うぉっ、」
赤「えっ、⁉︎」
思ったよりも軽すぎたため、少し声が漏れると同時に赤がバランスを崩し俺の方に倒れてくる。
あまりに力をかけすぎたのだろう。いきなり動いた反動で結構強く突進される。
紫「いてぇ……、赤大丈夫?」
赤「ごめん紫、ちょっと力加えすぎた…//」
紫「俺は大丈夫、…/」
赤「………ごめん、//」
2人とも今の状況に恥ずかしくなりよくわからない感じでソロソロと離れる。
結局、その後お互い顔を真っ赤にしながら無言で、回るカップと陽気な音楽を楽しんだ。
もうすぐ昼。
人もだんだん増えてき、混む前に店に入ることになった。
赤「何食べる?」
紫「赤は?」
赤「俺は_____」
紫「ハンバーガー?w」
赤「っ⁉︎なんで⁉︎」
紫「あw図星?w」
赤「うるせー!w」
赤は外で飯を食べる時大抵ハンバーガーを食べる。なのに体重を気にして普段はカロリーが少ないものを食べている。
赤にとっては出かける幸せとハンバーガーを食べる幸せを一緒に実感したいのだろう。
いつも頑張っている赤。幸せを楽しそうに堪能する赤。
普段頑張りを表に出さないところが可愛くて仕方がなかった。
この前、なぜ普段ハンバーガーを食べないのか聞いた時恥ずかしそうに太るからと答えた時は少しでも欲張っていいのではないかと思ったほどだ。
赤「んぅ、紫は⁉︎何にすんの?」
紫「杏仁豆腐」
赤「ここに杏仁豆腐あんの?」
紫「知らねぇ、なかったら俺もハンバーガー」
赤「じゃあ杏仁豆腐ある店探すかぁ、」
結局、もちろん杏仁豆腐を置いている店などなく、2人でハンバーガーを頬張ることになった。
赤はチーズバーガー。俺はテリヤキだ。
紫「久しぶりにハンバーガー食べた」
赤「え?普段何食べてんの?」
紫「言い方もっとあるだろ…普段大体コンビニ飯」
赤「…………自炊しねーの?」
紫「カップラーメンなら作れる」
赤「それ自炊じゃねーよっ⁉︎」
紫「立派な自炊だろ」
お湯をカップに入れる。自炊の代表と言っても過言ではないほどの自炊だ。
でも実際、俺は料理が苦手だ。何をどうすればいいのか全く理解できない。
そんな俺に比べて、赤は結構料理が得意だった。
レシピ見ればなんでもできるくね?と言われた時は、思わず拳が出かけたが、悔しながら、赤の料理は結構美味しい。
時々赤に弁当やら晩飯を作ってもらう時があるくらい。
赤「お前はまずカップラーメン以外を作れるようになれ、」
紫「………じゃあ赤は卵割れるようになろーな?ニコッ」
赤「なっ!………っっ、!」
この前赤の家で一緒に料理をした時、赤が台所で思いっきり卵を叩き潰して割っていたことを思い出す。
紫「まさか叩き割るとはw」
赤「加減がわかんねーんだよ!」
紫「はいはいwまた今度教えてあげまちゅねw」
赤「うるせー!」
赤「楽しかったけどだいぶ疲れた、w」
紫「遊び尽くしたしなw」
赤「次からもっと計画立てた方が良さそうだな、」
紫「っ!」
『次から』。赤にとってはどうでもいい一言なのかもしれないがすごく嬉しい一言だ。
今の赤と、この先の約束が出来ることは、俺にとってはとても幸せだった。
ゲートから外に出ると綺麗なクリスマスツリーとイルミネーションが出迎えてくれる。
ぼんやりと光るライトが隣にいる赤を照らす。
赤の目はいつもよりもすごく輝いて宝石のように見えた。
はらはらと雪が降ってくる。
紫「今年はホワイトクリスマスだな」
赤「綺麗………っ!紫!」
紫「ん?」
元気良く、優しい声で俺の名前を呼び、真正面でにっこりと満面の笑みを咲かす。
赤「メリークリスマス!」
紫「っ!wメリークリスマス、赤」
そう告げる赤の表情は雪の中、キラキラと輝く花のようだった。
どんなプレゼントよりも、どんな宝石よりも赤が隣にいてくれるだけで、俺にとっては最高のクリスマス。
1月
そろそろテストが近づく、遊んでいられる時期も過ぎ去り教室では俺も赤もみんな必死に勉強していた。
緑「紫ちゃーん、先生が生徒会長の件で呼んでたよー」
紫「引き継ぎの件か、緑あざす、」
緑「大変そうだね、少しは休みなよ?」
紫「休まないと緑にめちゃめちゃ怒られそうw」
緑「もうご飯作ってやらねw」
紫「休むわw」
緑「ww頑張ってね」
紫「めんどくせぇ、」
緑「おぉ、ストレート、」
紫「んんー、しんど、」
結局緑と別れた後、今年使った資料、請求書、反省点、進行速度などが書いている紙の束をひたすら仕分ける作業を1時間。
もう脳も体も動かない状態で教室に帰ると誰もいない中1人の人影。
もう下校時刻はとうにすぎているのに自分のカバンを枕にしてスヤスヤと眠る赤。
紫「……赤?もう帰るぞ?」
赤「んぅ、………いうまぁ?」
舌が回らないのか滑舌悪く俺の名前を呼ぶ。寝起きの声でいつもよりもよほど赤ちゃんのように見える。
紫「バブなつ……ボソッ」
赤「んんっ…?え……紫、」
紫「赤、もう下校時刻過ぎてるから、帰るよ?」
赤「紫待ってた、」
紫「ん、ありがと」
赤「勉強してたら寝ちゃった、」
紫「………そっか…帰ろっか、」
赤「ん、」
本当に赤ちゃんのように見えてしまう。
赤を起こしゆったりと帰る支度をする赤は本当に眠そうで、今にもどこかにぶつかるんじゃないかと思うくらい目が空いていない。
フラフラとカバンを取りまるでゾンビのような脱力感でこちらに寄ってくる。
赤「ん、帰ろ、」
紫「赤、危ないから、目空けないと、」
赤「んん、…………じゃあ紫がおぶって、//」
紫「……え?」
赤「………はい、///」
少し照れながらこちらに両手を伸ばす赤。全く状況を理解できない俺。数秒その状態で固まった後、先に口を開いたのは赤だった。
赤「………、はいっ!///」
もう一度両手を伸ばし直し、俺に抱きついてくる。やってしまったものは仕方ない、とでも思っているのだろうか、一向に離れる気が感じられない。
このままでは一生帰れないので仕方なく赤をおぶって帰ることにした。
にしても、好きな子をおぶる。いきなり段階を踏み過ぎたような気がする。明らかに、階段を3段くらい飛ばしている。
少し重く、とても暖かい感覚を背中に預けながら校門をくぐる。
赤「………重くない?」
紫「……ちょっと重い」
赤「最低、」
紫「おい背負ってやってるのこっちだぞ」
赤「ありがとw、//」
少しいたずらっ子のような笑い声が聞こえる。ただの友達だったらこの時点で放り投げていただろう。
なのに、好きな人というだけで、それすらも愛おしく、離したくないという感覚に落ちる。
人とはここまで意識が違うだけで行動も違う。本当に不思議でおかしな話だと感じてしまう。
赤「………紫、受験、頑張ろうね」
紫「………だな、」
明るい夕日に照らされ、すぐに着いてしまう赤の家まで歩く。
きっと、離したいないなぁと思いながら赤の家の前で別れを告げる様子を思い浮かべ、もっと道が長ければなぁ、と思ってしまう。
もうすぐ、決断の時。きっとあなたに、良い結果を伝えられるように。
2月
赤「紫っ!久しぶり!」
紫「元気そうでよかったw」
2月後半。お互いの受験が終わり結果が出たので久しぶりに会おうということになった。
俺の場合は志望校の受験日が少し早めなため。赤の場合は、3月には起きていられるかわからないため、少し早めに受けさせてもらったらしい。
近くのカフェまで行き、2人でゆったり時間を過ごす。
お互いコーヒーとミルクを注文し、飯が来るまで結果を伝えようということになった。
紫「………赤、どうだった?」
赤「っ!ニコッ」
赤は笑顔を咲かせ、片手をピースにしながら『受かった』。と一言。
それだけで俺の中は幸福に満たされていく。
紫「よかったニコッ、お祝いだなw」
赤「いや、まだ紫が残ってるから!」
紫「俺も受かったw」
赤「すげーじゃん!おめでとうっ!」
紫「ありがとw」
赤「………そろそろさ、学校聞いていいの、?」
紫「っ!、」
わかってた。もうそろそろ聞かれると思っていた。でも、やはり口に出すのは怖い。
紫「………今日の夜空いてる?」
赤「………?空いてるけど」
紫「この前の海いかね?」
赤「ショッピングモールの近く?」
紫「そう」
赤「っ!おけ、じゃあそこで」
覚悟を決めたからには、ちゃんと伝えなくてはいけない。どんな結果も、怖がらずに。
その後出てきたオムライスはとても美味しかったが、緊張のせいか、少し苦く感じた。
オムライスを食べ終わり、赤は他のやつにも会いに行くらしくすぐに別れた。
もう2月、なかなかの寒さの中家に足を運ぶ。
正直怖い。大好きな赤に。1番愛しいあいつに、現実を打ち明けることがこれほどまでに怖いとは思わなかった。
どんなに抗っても現実は変わらない。そんなの自分が1番わかっている。だからもっと怖い。抗えない恐怖が襲う。
紫「言えねーよ………赤と________、」
約束の時間が来た。じっとしていられなくて10分前くらいに着いてしまった。
この前と違って、暗く静かな海。空にはおまけ程度の星、その星を消してしまうかのような大きな月が上がっていた。
紫「早く来過ぎた………赤が絡むといつもこうだな、w」
どんな時も、君がいるだけで落ち着かなくなる。冷静さも欠ける。
赤「おまたせっ!」
パタパタとサンダルを鳴らしながら赤が近づいてくる。
少し走ったのか息が切れていた。
紫「大丈夫、俺が早く着きすぎた」
赤「俺も、なんかっ、じっとしてらんなくてっ!w」
紫「別に走らなくてよかったのにw」
赤「ハァッハァッ、………死”ぬ”、」
紫「おいw」
いつも通りの赤で少し気が緩む。きっと赤なら、大丈夫。
紫「赤、学校の……話」
赤「っ!……うん」
紫「あのさッッ、………」
赤「…………」
思うように声が出ない。緊張と恐怖と焦りで体が震える。
ちゃんと、言うって決めたじゃねーかよ、
赤は大丈夫って、否定しないってお前が1番わかってんだろ⁉︎………わかってんのに、
紫「ッッ、…………!」
赤「………紫、今日月綺麗じゃね?w」
紫「え、」
赤「星全然見えねーわw」
紫「、」
何事もなかったようにカラッと笑う赤。月を指差しながら俺の方を見る。
赤「この前さ、ここで言ったじゃん」
『紫のことは何でも分かる自信あるよ?俺w』
『こんなに綺麗に見えたの……もしかしたら紫がいるからかもねw』
紫「………、」
赤「何でも分かるよ。ちゃんと分かってる」
紫「………っ、」
赤「無理に言って欲しいわけじゃないし、言えなかったら一生言わなくてもいい」
紫「ちがっ…!そうじゃなくてッッ、」
赤「………ひとつだけ、分かってて欲しい」
紫「、?なに?」
赤「俺は、紫を否定しない」
紫「っ!」
赤はまっすぐこっちを見て、言葉を一つ一つ溢しながら話す。
赤「俺の嫌なことは嫌って言うし、ダメなことはダメって言う。でもそれは紫を否定していい理由にはならないし、するつもりもない」
紫「…………」
赤「だから、俺にちゃんと教えて欲しい。いつでもいいから、どんな時でも、ちゃんと聞いて、答えるから」
紫「………赤」
そう、怖がることはない。俺が好きになった人は、もともとこういう人だったじゃないか。忘れちゃダメなこと忘れてた。
いつでも話を聞いてくれて、欲しい答えをくれる。どんな時でも相手を気遣ってくれる。だからと言って自分の意見を無理やり曲げたりはしない。
そんなまっすぐな赤が、大好きになった。
赤「ん、なに?」
その優しい瞳も、優しい声も、言葉も行動も
紫「赤、俺は」
ずっと昔から、奇病と戦う君が、ずっとずっと……
「赤が大好きです」
赤「…………え、?学校の、話じゃ、」
紫「ごめん、あとから言うつもりだったんだけど、」
赤「…………っ!ポロポロ」
紫「っ⁉︎ちょ、ごめん、いや、困らせる気はなくて____」
赤「っ!w俺も!」
「紫が大好きですっ!」
赤「まさかの両思いとは、」
紫「ビビった、運使い果たした」
赤「いや、言い過ぎw」
あのあと赤は大号泣。俺は内容をさっぱり理解できない状況でまさにカオス。
結局お互いが落ち着いたのは思いを伝え合ってから数十分後だった。
赤「ん、寒っ」
紫「冬だし、海だし、雪降ってるしw」
赤「ロマンチックなんかただ最悪なシュチュエーションなんかわからんw」
紫「www」
大丈夫。もう、怖くない。
紫「赤、俺の学校のこと」
赤「っ!ん、」
紫「俺の受けた学校、”海外”なんだよね」
赤「………」
紫「約4年間の留学。だから、こんなこと言った後でごめん、一緒にはいられない」
全然大丈夫と言ったら嘘になる。寂しさと言ってしまった緊張。少し涙が出そうになる。
赤「………そっか、話してくれてありがと、」
でも、そんな俺をいつも導いてくれるのは赤だから。
赤「4年間。ちゃんとここで待ってる。だから安心して行ってきて!」
紫「っ!」
赤「それでさ、紫が帰ってきたら________」
赤が眠るまであと10日___。
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