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少女が振り返り、オレンジ色のジャンパー撃ちぬいた。
その瞬間、俺は入り口脇に重ねられたバリケードから抜け出すと、廊下に飛び込んだ。
少女の放った一撃は、故意に漏らしたエンジンオイルとブレーキフルードが気化して充満していたガレージを爆発させた。
俺はその爆風に飛ばされる形で、廊下に投げ出された。
足の先に火が引火し、俺は慌ててシャツを脱いでそれを叩き消した。
―――彼女が撃ちぬいた“俺”は、
ジャンバーの影から覗かせた、彼女の父の遺影だった。
生きてる。
生きてる―――!
興奮している場合ではない。
ガレージから炎が迫ってくる。
俺は立ち上がった。
窓は開かない。壊せない。玄関も然りだ。
2階の窓はどうなっているかわからないが、煙は上にのぼるスピードが早いと聞く。
この騒ぎで少なくとも消防車は確実に来る。
彼らが助けてくれるまでの間、どこにいるのが一番生存確率が高いだろうか。
バチバチバチバチという派手な音と共に、身体中を包むような熱気と、喉を刺すような激臭が襲う。
―――くそっ!考えろ!!
俺は辺りを見回した。
そこには―――。
地下へと続く階段があった。