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ミク
「レイは部活入るの?」
レイ
「別に……ミクは?」
ミク
「私は、帰宅部かな〜」
レイ
「……そう」
ミク
「……レイもさ! 一緒に帰宅部にならない?」
レイ
「えっ?」
〜放課後〜
ミク
「こっち! こっち!」
レイ
「どこ行くの?」
《ガラガラッ》
ミク
「じゃーん! いいでしょ、ここ!」
レイ
「どうしたの? この部屋」
ミク
「誰も使ってない部屋なんだ〜! たまたま通った時に見つけちゃって!」
レイ
「凄いね」
ミク
「まぁーね! 一人になりたい時によく使ってるんだ〜!」
レイ
「……あのさ」
ミク
「ん? なに?」
レイ
「ミク、私以外に……誰かと喋ってるの見たことないんだけど」
ミク
「……あー、それね」
レイ
「仲悪いの?」
ミク
「……悪くはないよ。ただね、みんなと合わせるのが苦手なだけ」
ミク
「みんなと話したり、過ごしたりが……出来ないんだ」
レイ
「……」
ミク
「だから、ずっと一人で過ごしてたの」
ミク
「……でも、レイと出会ってから毎日楽しいんだ!」
ミク
「レイは私の……初めての……友達だから!」
照れながら話す私に、レイはほんの一瞬だけ――優しく微笑んだ。
レイ
「……そう」
ミク
「えへへ!」
レイ
「……私も、ミクに会えて……よかった」
ミク
「えっ? 今なんて言ったの?」
レイ
「……うるさい、黙れ」
ミク
「え!? いきなり辛辣!?」
笑い合う。
その日常が、私の宝物だった。
――宝物。
その思い出を、私は自分の手で壊した。
ミク
「……レイ、元気かな」
『ふふっ……』
――ズ……ザザザザッ……。
楽しい記憶の景色が、ひび割れるようにノイズが走る。
砂嵐が一気に視界を覆い、景色が歪む。
暖かい色は、容赦なく――灰色に塗りつぶされた。
ミク
「でも、私は……!」
レイ
「平気だよ、大丈夫」
先生
「実は……」
ミク
「私は……もう、」
――ザザザザ……ザザッ……。
〜回想、終わり〜
ミク
「はぁ、はぁ、はぁ……」
(苦しい……胸が潰される……! 息が出来ない……!)
指先は氷みたいに冷えて、手足の震えが止まらない。
視界の端が滲んで、世界が遠ざかるように揺れる。
ミク
「はぁっ、はぁーっ、はぁっ……」
(誰か……助け――)
カケル
「おっ、おい! ミク!? 大丈夫か!」
焦ったカケルが駆け寄り、背中をさする。
ミク
「はぁー、はぁー、ゲホッ……」
少しずつ呼吸が戻ってくる。
カケル
「どうしたんだ!? 顔、真っ青だぞ!」
ミク
「うっ、うん……」
カケル
「保健室行くか? 汗すごいし、このままじゃ倒れるぞ!」
ミク
「……だい、ゲホッ……大丈夫」
カケル
「……そうか? あんまり無理するなよ?」
ミク
「……悪いけど、一人にさせて」
カケル
「えっ、いや、でも――」
ミク
「いいから! ……部活に戻って」
心配そうな彼を、強引に部屋から追い出す。
《ガラララッ……ドン!》
引き戸の閉まる音が、やけに大きく響いた。
カケルの足音は、なかなか遠ざからなかった。
ミク
『早く……居なくなってほしい……こんな自分……見せたくない』
やがて諦めたのか、足音は少しずつ消えた。
ミク
「……」
(やっと居なくなった……)
引き戸にもたれかかる。
静寂――でも、頭の奥ではまだノイズが止まらない。
ミク
『……まただ』
息が詰まる感覚と共に、涙が滲む。
視界がチカチカする。
ミク
「……な、なんで……私は」
ノイズが鼓膜を締めつける中、しゃがみ込み、震える声で――
ミク
「……ごめん」
(全て……私が悪いんだ)
弱く掠れた声だけが、静かに部屋に響いた。
後悔しても――もうあの日には、戻れないのに。
――つづく
〜ノイズに苦しむミクと駆け寄るカケル〜