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学校終わりの開放感に麗は伸びをした。
「麗さん、よかったら送らせて。もう遅いから」
クラスメイトのあちこちピアスが開いたものすごーく派手なパンクファッションをしている男の子に声をかけられ、麗は微笑んだ。
「ありがとう。気持ちだけもらっておくね。 ところで、課題どこまでできた?」
見た目の激しさとはうらはらに気の良い年下のクラスメイトとは仲良くしている。
なんでもパンクファッション界の王になりたいらしい。
パンクファッション界の王ってなんだろう?
「六割ってところかなー。 それで……麗さん、……今日この後なんだけど、時間ある? 課題一緒にやりたくて……」
学校では若い子たちに囲まれるだろうと覚悟していたが、意外と麗よりも年上の人もいて、なんとか浮かずにやっていけていた。
「今日はちょっと先約があるねん。でも約束までにちょっと時間あるし、教室に戻って……。ああ、あかんわごめん、もう来てるわ、せっかちな」
近くの駐車場に明彦がいたので麗は指さした。
今日は有給消化で明彦は仕事がないらしく、夕方から二人で出かける予定だった。
所謂デートである。
「わー、イケメンが高級車乗ってるー。彼氏?」
死んだような声で男の子がそう言った。
明彦がイケメンすぎて、出会い頭に腰が引ける男性をこれまで何度も見てきたのでさもありなんである。
「あはは、まあそんなとこ」
恋人からやり直し中の別居中の旦那だなんてわけのわからないことは言えず、麗は適当にごまかした。
「それじゃあ、また、明日ね」
「……待って麗さん。俺はただでは転ばない男! 彼氏さんにパンクファッションに興味ないか聞いていて! モデルになってほしいから!」
「ないと思うなー」
パンクな格好をして、ピアスをジャラジャラつけ、舌を出して中指を立てる明彦を想像してしまう。
(意外と似合うかも……?)
またねと、男の子に手を振って、明彦の車に乗った。
「迎えに来てくれてありがとー。パンクファッション興味ある?」
「誰だあの男は。興味ない」
不機嫌そうな声に明彦がまた嫉妬しているのだと麗は笑った。
「クラスメイトの男の子、ええ子やねん」
「狙われてるんじゃないのか」
「何言うてんの。あの子まだ18歳やで、ないない。あの子から見たら、ただのどこにでもいるお姉さん、いや、最早おばさんやわ」
「俺の麗はいつでも可愛い」
「はいはい、ありがとう」
ムッとしながら車を運転する明彦がなんだか面白い。
明彦はかなり嫉妬心が強いのだと、麗はようやく理解していた。