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中根と紅い君
第一話
春からの学校生活に胸を高ぶらせていた。そんな矢先、地獄のような出来事が起きた。私の名前は百合。吹奏楽部に入っている。弟は中学1年生で優と言う。バスケ部に入っているらしい。私の担任は中根という。常人離れしたような考えを時々出すが、普段はしっかりとした”教師”に見えた。そんな先生のことは嫌いではなかったが、好きでもない。いてもいなくても変わらない、ただの他人。当たり前のように学校で過ごして、勉強して、帰る。そんな当たり前の生活、当たり前の生活。こんな、ありきたりな幸せな生活に亀裂が入ったのは、この前のことだった。9月半ば、私は普段通り学校へ通っていた。その日は雨だった。曇っていて、灰色の空が私を包み込む。教室までの階段、道のり、全てが長く感じた。挨拶をして、会話を交わす。そこまでは普段通りだった。担任の中根は少し訝しげな笑みを漏らしながら、黒板にチョークで文字を書く。日付の数字からひらがな、漢字までが、いつもよりシュッとした、字。怪しかった。そこで気づいていれば防げた事故なんだ。自責の念で溜まってゆく、私の心。