オロチが滅びた後、村には一時的な安堵が広がった。しかし、その安堵はすぐに消え去った。オロチの腐敗した体から湧き出た黒い液体は、地面を汚染し、付近の植物や動物に異変をもたらしていた。草木は枯れ、動物たちは狂気に囚われ、やがて死に絶えていった。村人たちはその地を「呪われた地」と呼び、近づくことを避けた。
だが、ツバキの呪いは終わっていなかった。オロチの体内から生まれた新たな存在は、徐々に力を蓄えていた。闇の中で蠢くその存在は、オロチの残骸から吸収した呪いと狂気を糧に成長していたのだ。
村の神官、カネサダはこの異変に気づき、村の運命を案じていた。彼は古巻物を読み解き、ツバキの正体と彼女の呪いについての真実を知った。ツバキは、生前、深い恨みを抱えていた村の外れの小さな集落で生まれ育った。彼女の家族は村人たちに迫害され、無残に殺されたのだ。彼女はその復讐を誓い、力を身につけた。そして、その力をもってオロチに挑み、村を滅ぼそうとしたのだった。
カネサダは村の長老たちに危険を伝え、新災が近づいていることを告げた。村人たちは恐怖に怯えながらも、何か手を打つべきだと考え始めた。だが、オロチの呪いから生まれた存在は、すでに復活の時を待っていた。
ある晩、村の老人が、光を目撃した。呪われた地から、煙が立ち上り、何かがうごめいているのを見たのだ。老人はすぐに村に知らせに行ったが、誰も彼の言葉を信じようとしなかった。彼が嘆く間に、黒い煙はゆっくりと村へ向かって広がっていった。
次の朝、村人たちは異変に気づいた。夜のうちに村の外れに住む家族全員が、何の痕跡も残さず消えていたのだ。家の中は荒らされ、壁には不気味な黒い印が残っていた。カネサダはそれを見て、オロチの呪いが再び動き始めたことを悟った。
時間が経つにつれ、呪いは広がり始めた。村人は次々と姿を消し、残された者も狂気に囚われていった。やがて、カネサダは呪いの元凶を突き止めるため、ツバキが生まれた地へと向かった。そこには、ツバキの怨念とオロチの呪いが混ざり合い、恐ろしい姿をした怪物が待ち構えていた。
その怪物は、ツバキの復讐の化身であり、オロチの破壊力を持って村を再び滅ぼそうとしていた。カネサダは、古代の力を使ってこれを封印しようと試みたが、呪いの力は想像を超えて強大だった。
村は、再び恐怖と絶望に包まれ、唯一の希望であるカネサダも、次第に呪いの力に飲み込まれていった。そして、黒い煙が村全体を覆い尽くしたとき、全てが静まり返った。
村は、誰一人として残らず、黒い霧の中に消え去った。その後、その地を訪れた者たちは、かつてそこに村があったことを知る術もなく、ただ無限に続く黒い荒野を目の当たりにするだけだった。
しかし、霧の中で、何かがうごめいているのを感じる者もいた。それは、ツバキの呪いが今もなお続いていることを示していたのかもしれない。
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