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涼川 七海 suzukawananami.
糸師凛 itosirinn.
「幼 馴 染 。」
「遅せぇ」
開口一番、それ。
「ごめんってば、先生に捕まってたの」
玄関の前。腕を組んで待ってるのは
糸師凛 。
昔からずっと一緒の、幼なじみ。
「言い訳いらねぇ」
「はいはい」
そう言いながら隣に並ぶと、彼は少しだけ歩幅を緩めた。
——こういうとこ、変わってない。
「ねぇ凛」
「あ”?なんだよ」
「今日さ、部活の先輩に告白された」
足が止まる。
「……は?」
ゆっくり振り向くその顔、ちょっと怖い。
「ちゃんと断ったよ」
「当たり前だろ」
即答。
ちょっと笑いそうになる。
「なんで?」
「……は?」
「なんで“当たり前”なの?」
わざと聞くと、彼は眉をひそめた。
「お前が、そんな簡単に誰か選ぶわけねぇだろ」
「それだけ?」
「……それだけだ」
目、逸らしてるくせに。
小さい頃。
転んだら手を引いてくれたのも、
泣いたら黙って隣にいてくれたのも、全部この人だった。
「凛ってさ」
「なんだよ」
「ずっと隣にいるよね」
「……だから?」
「当たり前みたいに」
そう言うと、彼は少しだけ黙る。
風が通り抜ける。
「……当たり前だろ」
低く、短く。
でもその声は 、どこか強かった。
次の日。
学校で、またその先輩に話しかけられた。
「ほんとに無理?」
「ごめんなさい」
ちゃんと断ったはずなのに、
しつこくて、少しだけ困る。
そのとき。
「——しつこい」
横から、低い声。
振り向くまでもない。
「凛…」
「断られてんの分かんねぇのか」
空気が、一瞬で変わる。
「な、なんだよお前…」
「関係ねぇだろ」
そう言いながら、私の腕を軽く引いた。
「行くぞ」
そのまま、廊下を歩き出す。
少し速い足取り。
「ちょ、凛、引っ張りすぎ」
「うるせぇ」
でも、手は離さない。
人気のない階段で、やっと止まる。
「……なんで来たの」
聞くと、彼は舌打ちした。
「見えたからだよ」
「なにが」
「お前が困ってんの」
一瞬、言葉に詰まる。
「別に、平気だったよ」
そう言うと、彼の眉がぴくっと動いた。
「平気じゃねぇだろ」
「え」
「顔」
短く、それだけ。
ちゃんと見てるんだ、って思った。
少しの沈黙。
近い距離。
でも、触れそうで触れない。
「……なぁ」
先に口を開いたのは、彼だった。
「他のやつに呼ばれて、簡単に行くな」
「え?」
「断るなら、最初から近づくな」
言い方はきついのに。
その奥が、分かってしまう。
「……やきもち?」
言った瞬間。
ぐっと距離が詰まる。
「違ぇ」
即否定。でも近い。
「じゃあなに」
逃げないで聞くと、彼は一瞬だけ黙った。
「……」
そして。
「——俺のだからだろ」
頭、真っ白。
「は……?」
「昔からずっと一緒にいて」
少しだけ視線を逸らして。
「今さら他のやつに取られるとか、意味分かんねぇ」
心臓が、うるさすぎる。
「それって…」
「言わせんな」
でも、逃げない。
「ちゃんと聞きたい」
そう言うと、彼は小さく息を吐いた。
観念したみたいに。
「……好きだ」
一言だけ。
でも、重いくらいまっすぐ。
「お前がいい」
気づけば、少し笑ってた。
「遅いよ」
「うるせぇ」
「私、ずっと前から好きだったのに」
その瞬間。
彼の目が、少しだけ見開く。
「……は?」
「だから」
一歩、近づく。
「これからも隣、いていい?」
今度は、ちゃんと。
彼のほうから、距離を詰めた。
でも触れない。
そのギリギリで。
「……離す気ねぇよ」
小さく、でもはっきり。
幼なじみってずるい。
離れられない理由が、最初からあるから。
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