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「そこで私は策を変えました。先生を探しながら、属性魔法の研究で名をなすことを決めたのです。そうすれば、いつか権力を得たら、正式にあなたを呼び戻す場所を用意できる、と」

「そんな理由だけで、たった5年で理事になったと……?」

「私には、人生をかけるだけの理由でした。もちろん、実家が公爵家ということもあるでしょうが、新技の開発、魔素との反応実験などかなりの成果を上げましたから。

それもこれも先生に教わったおかげです。先生は魔術を含めた魔法を、基本構造から教えてくれました。その考え方は、属性魔法の研究にも生かせるものでしたから」


彼女は嬉しげに、そう振り返ると、カバンの中からノートを取り出して見せる。


そこに書かれてあるものは、まぁ懐かしい。

かつて俺が魔術の構造を解説した際の授業内容がびっしりと書かれてある。


たしかに指導した覚えはあるが、ほんの二年程度の期間だ。

その後の努力は自分の努力であろうに、リーナは俺のおかげだと強調する。


「それで、俺を見つけたのはどうやって?」

「この五年間、あなたを探さなかった日はありません。

この間、情報収集をしていたら、耳に入ったんです。『田舎町の初級ダンジョンにヒュドラが現れ、それを何者かが倒した』と」


「……え、それだけの情報で? そんなの俺じゃない他の凄腕冒険者かもしれないだろ」


「いいえ、そのニュースを聞いてすぐに分かりました。誰にも見られないうちにあの大物を倒すなんて芸当は、一流の魔術師でなければできません。

私の知る限り、あなたを置いて他にはいない。だから、すぐにこの町には行きつきました。あとは捜索隊を送って、見つけました」


……自分の生徒ながら、なんて思い込みが強いのだろう。

そのうえ、推理も強引すぎる。


だが、その結果として、俺の元へとたどり着いているのだから、その行動力は恐ろしい。


……あと、俺への執着ぶりも怖い領域に入っていると思う。


昔から慕ってくれてはいたが、ここまで強烈ではなかったはずだ。

せいぜい、毎日のように研究室に顔を出して、お茶を淹れてくれて手作りの菓子を……って、それも今にして思えばかなりやばいな、うん。


俺がそんなふうに過去を振り返っていたら、彼女は机の上に置いた俺の手の上、そっと手を重ねてくる。


「先生、本当に会えてよかった」


声が震えていたから見上げてみれば、彼女の瞳には涙がにじんでいた。

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