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m「ぅ”、…きもちわる、、」
あれから1ヶ月後、さらに体調は悪化するばかりだった。
ベッドの上で、天井をぼーっと見つめる。
身体は力を込めようにも、脱力してしまって上手く動かせない。
それに、日に日に増す眩暈と吐き気でどうにかなってしまいそうだった。
そろそろ本格的にまずいかもな、とどこか他人事のように考えていた。
すると、ピンポーンと玄関から音がする。
宅配なんて頼んだ覚えはないのだけれど。
今日は、久しぶりに午後からの仕事だったので、朝から無理に身体を動かさなくても良いことに喜びを感じていたのに。
m「はぁ…、、だれなの、」
重い足を引きずりながら、誰が訪ねてきたのか確認する。
するとそこには、なにやらたくさんビニール袋を持った涼ちゃんが立っていた。
r「急にきちゃってごめんねぇ」
m「ううん、いま開けるね。鍵も開けとくから、」
ついでに玄関の鍵も開けておく。
そしてまた、足を引きずるようにしながらベッドに身を預ける。
そのまま僕は、再び眠りについた。
r「おじゃましまーす、…ってあれ?」
リビングにもときの姿が見えない。
まだ声が寝起きっぽかったから、寝室で寝ているんだろうか。
今日は何しに来たかというと、最近もときの体調が良くなさそうだったから、差し入れにと思い、いろいろ身体に良さそうなものを買ってきた。
あと、ちゃんと一度、確認しておきたかった。
今はどの程度の強さの抑制剤を使用しているのか、そして、ちゃんと効いているのか。
もときに聞いてみても、いつもはぐらかされてしまって上手く聞き出せない。
ほんとはあまり勝手に詮索するようなことはしたくないのだけれど、買い込んできた食品を棚に入れながら、薬の場所を探す。
すると奥の引き出しに、さまざまな薬が大量に入っていた。
r「う〜ん、どれだろ。」
見てみると、おそらく前に使用していたであろう抑制剤や、鎮痛剤や、風邪薬などさまざまなものが乱雑に仕舞われていた。
r「あ、これかな?」
一番手前側の方に、日付の新しいものが見つかる。
そっと手に取ると、抑制剤の名前を確認する。
r「ぇ、…これ」
それは、僕でも知ってる、飲むと絶大な効果があると噂のものだった。
効き目が強い分、副作用も強くなる傾向があるため、確か長期の使用は推奨されていなかった気がする。
いつから…?
この薬を使用し始めた日を、薬の入っている袋を見比べながら探していく。
一番前にもらった袋には、3ヶ月前の日付が記されていた。
r「うそ…」
そんな前から使ったいたなんて、、
それに、この薬に至るまでに、これほど薬の種類を変えていることも、なにもかも知らないことばかりだった。
思っていたより深刻な事態に、頭を抱える。
こんなことなら、多少無理矢理にでも何か他の解決策を示すべきだったかもしれないと、後悔が募る。
一通り確認すると、静かに棚に戻す。
もときに聞かなきゃいけない。
あのままでは、遅かれ早かれ本当に身体を壊してしまう。
しかし、実のところ、なぜ大森はそんなにプレイを嫌がるのか藤沢は分からなかった。
下手に口を出して問いただそうとすれば、きっと大森はぴしゃりと心を閉ざしてしまう。
前にも一度、体調を崩してしまった時に、どうして早く言わなかったのかと問い詰めたら、大森は頑なにプレイすることを拒み、しばらくあまり話してくれなくなった。
その時は結局、若井と僕で手を繋いで寝かしつけたり、ご飯をなるべく一緒に食べたりして徐々に落ち着かせていったのだが。
しかし、今の状態では、そのぐらいのことでは到底症状が良くなりそうにもない。
どうしたものかと、一人で頭を悩ます。
すると、人の気配に気がついたのか、もときが寝室から顔を出す。
m「…ん、ごめ、ねてた。」
r「こっちこそ朝からごめんね。」
m「んーん、涼ちゃんどしたの?」
r「あ、今日ね。いろいろ体に良さそうなもの買ってきたから、よかったら食べてね。」
m「あー、、ありがと、助かる。」
r「…それでさ、その、買ってきたもの棚に詰める時に、お薬がちらっと見えちゃって、、」
r「これ、すごく強いやつ、だよね、、?」
僕は、もときの顔色を伺いながらその抑制剤を差し出す。
それを見ると、もときの表情が明らかに曇る。
m「それ、みつけたの?なんで、、?」
m「…ごはん入れるところの棚と、場所、ちがくない?」
r「あ、いや、、」
m「なに?わざと、みたの?」
捲し立てるように問い詰められる。
まずい。今日は特に、踏み込んではいけない日だったのかもしれない。
僕は見誤ってしまったことを、小さく後悔する。
r「ごめん、、さがした。…もとき、このままじゃほんとに、身体壊しちゃいそうだったから」
m「…勝手なことしないでくれない?」
もときの声が、明らかな怒りを滲ませながら、低く、静かに響く。
r「そうだよね。ほんとにごめん。」
r「けど、実際どうするの?このままじゃ、身体もたないよ、?」
m「ッ、大丈夫だって言ってるじゃん、」
r「大丈夫じゃないから、…こんなことになってるんじゃないの?」
僕はもときの袖口を握る。
立っているのもやっとという様子で、指先は静かに震えていた。
r「ねぇッ、やなことも怖いこともしないから、もうちょっと頼ってよ、おねがい。」
m「ッ、手、はなして!!」
力なく腕を振る。
その姿が、痛々しくて少し泣きそうになる。
手を離し、もときの身体をそっと包むように抱きしめる。
そして、ずっと、思っていたことを口にする。
r「…どうしてそんなに、、僕たちのこと拒むの、?」
m「ッ、こばんで、なんか、、泣」
もときが静かに泣き出す。
僕は胸元が濡れていくのを感じながら、さっきよりも力を込めてぎゅっと抱きしめる。
そして、とんとんと子供をあやすように背中をさすり、泣き止むのを待つ。
m「ぅ”ぅ、ひっく、ぅ”、もぉ、ゃら”ぁ」
m「なんでッ、ぅ”、ぼく、だけッ」
r「もときはさ、僕とプレイ、、までいかなくてもいいから、ただ喋ったり、そういのもいや?」
m「そ、れは、…ぃやじゃない、、」
泣き止むと、少し耳の端が赤く染まっているのが目に止まる。
僕はもしかしてと思って、言葉を続ける。
r「こうやって、ただぎゅってするのは?…いや?」
m「ぃや、では、ない」
小さく呟く。
r「…じゃあさ、お昼まで。それまで今日は、こうやってぎゅってしてねよう?」
r「きっと、寝れてないんでしょ?」
大森は、静かに頷く。
そのまま、ひょいっと大森の身体を持ち上げ、寝室へ向かう。
ぽすっと身体を布団に埋めて、僕の腕の中に収まると、そのまますやすやと眠ってしまった。
こんなことで眠れるなら、毎日こうしてあげたいのに。
大森はそれを許してくれない。
見えない大きな線が、僕たちの間に横たわっているのをひしひしと感じる。
効果があるのかは分からないけれど、さらりと髪をすくように頭を撫でる。
真下で聞こえる規則的な息遣いに、目を閉じると僕もすっかり寝てしまっていた。
r「ん、、ぁ、ねちゃってたんだ」
まだすやすやと眠っているもときを起こさないように、時間を確認してするためスマホを手に取る。
気づけば、そろそろ起きないと仕事に遅れてしまいそうな時間になっていた。
r「もとき、そろそろ起きれる?」
軽く身体を揺する。
本当はもっと寝かせてあげたかったけれど、仕事を空けるわけにもいかないので、仕方なく起こそうとする。
しかし、寝起きが良い方ではないので、なかなか起きない。
m「ぅ”、んぅ、」
ちらりと目を開けたかと思うと、寝ぼけているのか僕の胸元に頭をぐりぐりと押し付ける。
不意打ちのデレに、頬が少し熱くなる。
r「…そろそろ、起きないと遅刻しちゃうよ?」
このままずっと甘えていてほしい気持ちと、起こさないとという使命感がせめぎ合う。
m「ぁ、ぁれ、ぼく、ねてた…?」
r「うん、体調はどう?」
m「ん、だいじょぶ。」
m「りょうちゃん、さっきはごめん。いっしょにねてくれてありがと。」
その言葉に、心がじわっと温かくなるのを感じた。
r「ねぇ、いや、じゃなかったらさ、これからもしばらくこうしない?」
m「ぇ、?いや、」
r「ほんとにッ、ただこうやって寝るだけだから。ね、?」
少し戸惑いの表情を見せながらも、こくっと小さく頷くと、渋々了承してくれた。
r「ありがと、もとき、だいすきだよ。」
少し心を許してくれたことが嬉しくて、ぎゅっと抱きしめると、もときの顔がほんのり赤くなる。
r「あれ、今ちょっと照れてくれた?笑」
m「ッ、そんなわけッ!!」