テラーノベル
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「ぼんさん、最近ちょっと元気ないですね」
収録前の控え室。
軽い雑談の流れで、ドズルは何気なくそう言った。
冗談のつもりだった。
いつもなら、ぼんさんは大げさに笑って返す。
「いやいや元気ですよ〜!」
「最年長なんで!」
そんな声が返ってくるはずだった。
だが、その日は少し違った。
「え? あー……いや、普通っすよ」
一拍。
ほんの一拍だけ間が空いた。
ぼんさんはすぐに笑顔を作った。
いつもと同じように見える笑顔。
けれど、どこか力が入っているようにも見えた。
「今日も頑張りましょ」
そう言って席に向かう背中は、普段と変わらない。
変わらないはずなのに、ドズルはなぜか目で追ってしまった。
収録が始まる。
「はいどうも〜ドズルでーす!」
元気な挨拶。
いつもの流れ。
いつものテンポ。
笑い声は上がる。
ゲームも進む。
動画としては問題ない。
むしろ、いつも通りだ。
それでも、ほんの少しだけ。
ぼんさんの声が、いつもより低い気がした。
((ボソッ…「最年長なんで、しっかりしないと」
軽く言ったその言葉が、
妙に残った。
収録が終わる。
各自、編集作業へ。
夜。
静かな作業部屋。
ぼんさんのPCには、編集ソフトとコメント管理画面が並んでいる。
動画のカットを進めながら、もう一つの画面を開く。
新着コメント。
応援の言葉。
笑ったという声。
いつも通りの感想。
その中に混じる、棘。
グループへのもの。
個人へのもの。
そして——自分へのもの。
ぼんさんは、表情を変えない。
慣れている。
もうずっと前から、慣れている。
削除。
非表示。
報告。
手は止まらない。
編集も同時に進める。
「大丈夫、大丈夫」
誰に言うでもなく、ぽつりと呟く。
“最年長”だから。
しっかりしないと。
みんなを支えないと。
その夜も、
ぼんさんは一人で作業を続けていた。
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プリ小説でお見掛けしてみたいと思っていたんですがログインしないといけなかったので助かります!絶対神作品だと思ってました!