テラーノベル
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太郎は小さい頃から「わがまま太郎」と呼ばれていた。
朝起きれば「ご飯は炊き立てじゃなきゃ嫌だ」と母に文句を言い、外に出れば「今日は晴れるはずだろう」と曇り空に怒る。
夕方には「夕焼けはもっと赤く燃えるべきだ」と空に注文までつける始末だ。
だが村人たちは彼を嫌わなかった。
「太郎だから仕方ない」と笑い飛ばす。
理由はただひとつ。
太郎は嘘をつかない。
幼馴染みの友人、一朗も太郎のわがままに呆れながら付き合う1人だ。
ある日、村の商店街で福引き大会が開かれた。
「俺は絶対に1等を当てる!」
「お前がそう言って当たったためしがないだろ……」
結果は5等のティッシュ。
太郎は真剣に怒り、商店街の人々は腹を抱えて笑った。
妹の花子はそんな兄に振り回されつつも、どこか安心していた。
兄はわがままだが、絶対に嘘をつかないからだ。
しかし、この平和な日常の裏で、村全体を巻き込む大騒動の火種が、少しずつ芽吹き始めていた。
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