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賑やかなクリスマスマーケットに足を踏み入れると、甘いチョコレートの匂いと、焼き栗の香ばしい香りが漂ってきた。
「妹ちゃん、ほら」
悠真が立ち止まり、屋台で売っているホットココアを二つ受け取った。
「え、いいんですか?」
差し出された紙カップを両手で受け取ると、ほんのりと温かさが指先に広がる。
「冷えるだろ。……昔から寒がりだったし」
「……覚えてたんですね」
胸の奥がじんわりと熱を帯びる。
湯気に顔を隠すように口をつけると、隣から悠真の横顔がちらりと見えた。
夜空に照らされるその表情は、いつもよりも近く感じて――咲は思わず視線を逸らした。
(どうしよう……このままだと、本当に言葉にしてしまいそう)