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私の小学校では「ペア活動」がある。
1年生は6年生と、2年生は5年生とペアを組んで遊んだり、話したり。
他学年と交流する機会だ。
その「ペア活動」——
それが、彼と出会えたきっかけだった。
彼は私の3つ上の5年生。
とても赤の他人とは思えないほど親しみやすくて、
まるで実のお兄ちゃんのような存在だった。
でも、いつの間にか彼は——
私にとって「大切な人」になっていた。
「ひより、よろしく!」
彼の名前は一ノ瀬るい。私のペアになった5年生。
聞き覚えのある落ち着いた声に、私は驚いて顔を見上げた。
「あ、るいじゃん」
るいとは、塾で何度か会ったことがあった。
だから初対面でもなく、完全な知り合いというわけでもない、
ちょうどその中間。だけど私にとっては、もう“仲のいいお兄ちゃん”だった。
「俺がペアだよ、嬉しいでしょ?笑」
「るい、早く遊ぼ〜」
「わかったよ笑」
ペアの人が誰であっても、お兄さんお姉さんが大好きな私はすぐ仲良くなる。
でも、テンションが高すぎて、引かれたり、疲れさせたりしてしまうことも多かった。
でも、るいは違った。
たくさん遊んでくれたし、たくさん話もしてくれた。
今思うと、あれは“私のお世話係”みたいだったかもしれない。
るいは、私のわがままをいっぱい聞いてくれた。
昼休みになると、私はるいの教室のある階までのぼり、5年2組を目指す。
「るい〜!」
「はい、なに?笑」
「遊ぼ〜!!」
「はいね笑」
そんなやりとりを何度もした。
でもある日、こう言われた。
「るい〜!!」
「あー、ひよりちゃん…」
「るい、委員会でいなくてさ〜」
「ごめんね〜」
「えーそーなんだ…」
あの時は本当にさみしかった。
遊びたかった。
他の2年生はドッヂボールやサッカー、鬼ごっこ…みんなで遊んでいたけど、
私はるいとばかり遊んでもらっていた。
きっと、いや、絶対にるいも友達と遊びたかったはず。
でも、そんな気持ちを一度も表に出さなかった。
それが、るい。
本当に優しい心の持ち主だった。