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そんな小さなソファーではなく、3人座っても少し余裕があるくらい
4人でピッタリくらいのソファーなので座れるといえば座れる。
ただ女の子の真ん中に座るというのはどうもあれだったので
未だにラグの上で胡座をかいている。
するとその膠着状態に見かねて妃馬さんがグイッっと姫冬ちゃんの方へ寄る。
「うおっ」
と言い姫冬ちゃんは僕から見て右側の肘置きに蹌踉めく。
「ここ。どうぞ」
と妃馬さんは
さっきまで妃馬さんが座っていたところを掌をこちらに見せた状態で「どうぞ」とする。
わざわざ席を空けてくれたのに断るのも申し訳ないと思い立ち上がり
「あ、じゃあ。ありがとうございます」
と言いながらソファーに腰を下ろす。今まで妃馬さんが座っていたので生温かい。
「仲良いですよね」
僕の左側でわちゃわちゃしてる妃馬さんと姫冬ちゃんに声をかける。
「はい!仲良しです!」
「ねぇ!お姉ちゃん暑い!」
「ねぇ〜仲良いよねぇ〜」
「ちょっと離れて!人肌キモい」
相変わらず仲良く戯れ合っている姉妹を微笑みながら見る。
根津家にお邪魔してから時間が経ったようで
「じゃんけんっ…ぽん!うふふふふふぅ〜」
と聞こえてきて、あぁ、もう7時かと思った。
その後ドンドンッっという太鼓の音が聞こえ
パッっとテレビを見ると百舌鳥さんとはないたちさんの番組が始まっていた。
曲のサビ部分の音程を外さずに歌うという番組だ。
きっとこれは他の芸人さんがMCを務めたら一瞬で打ち切りになる内容だが
百舌鳥さんとはないたちさんの実力あっての番組だと思っている。
そのテレビを見る。ほんの冒頭、今日は誰がチャレンジするとか
百舌鳥さんやはないたちさんのツッコミのワードが出たところで
「おかずできたよ〜」
と妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんがダイニングテーブルにお皿を運んでいた。
そういえばごま油の香りが漂っていた。僕はソファーから立ち上がりキッチンへ向かう。
「よかったらお皿とか運びます」
「あら。座ってていいのに。じゃあこれ運んでもらえる?」
「はい。もちろんです」
そう言い妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんから
鶏肉の盛られたお皿を受け取り、ダイニングテーブルへ運ぶ。
すると妃馬さんと姫冬ちゃんとすれ違う。パッっとキッチンのほうを振り返ると
「ママ私もお皿出すよ」
「私も手伝う」
2人もお母さんの手伝いに行っていた。
「あら珍しい。じゃあ妃馬はお箸と小皿出して?
で姫冬はコップ出して氷入れてテーブルにお願い」
2人は言われたように動いた。僕はただ1品を運んだだけで棒立ちしていた。
すると
「あ、そうだ。妃馬、姫冬どっちもいいから部屋からイス持ってきて?
暑ノ井くんの座るとこないから」
そう言われると
「あ、じゃあ私持ってくるよ」
と姫冬ちゃんが廊下にかけていく。
妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんはお味噌汁をお椀に入れており
2つを受け取って妃馬さんがダイニングテーブルに来ていた。
僕は邪魔しないように妃馬さんとすれ違い、キッチンへ向かう。
「あ、ありがとうねぇ〜。あっ熱いから気をつけてね」
と言われ
「あ、はい」
両手に1つずつ受け取り、ダイニングテーブルへ運ぶ。
妃馬さんとすれ違い、お味噌汁を置いて、もう一度キッチンへ向かうと
今度は片手にお味噌汁の入ったお椀
もう一方にお米の盛られたお茶碗を持った妃馬さんとすれ違う。
僕もキッチンへ向かうとお米の盛られたお茶碗を2つ渡された。
お味噌汁の入ったお椀も熱かったが、お米の盛られたお茶碗は別の感覚の熱さがあった。
お味噌汁の入ったお椀はじわぁ〜という熱さで、お米の入ったお茶碗は鋭い熱さがあった。
両手に持ったお茶碗を置くと
「ママーこれでいいかな?」
「あぁ、うんいいんじゃない?」
「これに座ってもらう?」
「あぁ〜どうしよっか。でもそれは姫冬と暑ノ井くんで話して決めたら?」
「あーい」
そんな会話が聞こえ、姫冬ちゃんが木製のイスを運んできた。
「あぁ、ありがとう持つよ」
そう言いイスを受け取る。
「あ、ありがとうございます!」
「ここ?でいいかな?」
とダイニングテーブルのイスがないキッチンと対面する場所に置こうとして聞く。
「あ、はい。ここですね」
僕はイスをそっと置く。
ダイニングテーブルとセットのイスとは違い、少し背もたれが低いイスだった。
「あ、そうだ。暑ノ井先輩どこ座ります?」
「いや、ここでいいよ。皆さん定位置あるだろうし」
「わかりました!」
「ごめんね。使わせてもらうね」
「はい!全然!」
そしてダイニングテーブルの上には美味しそうな料理が並んだ。
妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんが料理を終え、ソファーのほうへ向かう。
妃馬さんと姫冬ちゃんは座っているが来客の僕が先に座っているのもどうかと思い
イスの背もたれを右手で触りながら、なんとなしに立っていた。
コンコンコンとノックの音が聞こえる。音の方を見る。
ソファーの背もたれ側の壁にドアがあり
そのドアを妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんがノックしていた。
カッチャンとドアノブを下げ、妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんが部屋に半身を入れる。
ドアの隙間から光が漏れていた。
「ねぇ、晩ご飯できたよ」
そう妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんが部屋の中に声を投げかける。
「あ、そっか。もう夜か。わかった。今行くよ」
優しそうな男性の声が聞こえた。
恐らく、というか十中八九妃馬さんと姫冬ちゃんのお父さんだろう。
妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんがこちらへ戻ってくる。
「あ、座って座って」
と子をかけられる。
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言いながら妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんが座るのを見届けてからゆっくりと座る。
ほんの少し経ってから先程妃馬さんと姫冬ちゃんのお母さんが開けたドアがまた開き
中から黒Tシャツに黒いスウェット素材のパンツの服を着た
ほんの少しお腹が出た目の細い男の人が出てきた。
「お?お客さん?」
見た目から想定した声そのままの声で
ずっと笑っているような細い目でこちらを見る。僕は立ち上がり
「あ、お邪魔させていただいてます。暑ノ井怜夢です」
と挨拶をする。
「あ、どうもどうも。えぇ〜と?」
と妃馬さんと姫冬ちゃんに視線を移したので
「あ、お2人と同じ大学で妃馬さんとは同学年で、姫冬さんとは同じサークルに所属してます」
と質問を汲み取り答える。
「あ、そうなのね。2人のことよろしくね」
優しくそう言われてほんの少し緊張が解けて
「あ、はい。あ、いえ、こちらこそよろしくお願いします」
と頭を下げる。
「そんな畏まらないで。ね。じゃあご飯食べよう。あ、座って座って」
と言われ
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言いゆっくりと恐らく妃馬さんと姫冬ちゃんのお父さんであろう方が座るのと同時に座る。
目の前にはお米の盛られたお茶碗
お味噌汁と思っていたけど卵の溶かれた中華スープの入ったお椀
小皿が置いてありテーブルの中央には少し酢の強い甘酸っぱい匂いのする鶏肉
ごま油にほんの少しニンニクが香るほうれん草のナムル。
そしてご自由にどうぞと言わんばかりの納豆が5つ置いてあった。
「いただきます」
十中八九妃馬さんと姫冬ちゃんのお父さんと思われる人が最初に言った。
それに続くようにみんな各々言い始めた。僕も恐る恐る
「いただきます」
と声に出しお箸を手に取る。