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わあ、第1話からもう緊迫とユーモアが絶妙ですね!パリを舞台に、パトカーで勤務するK-Tさんと、それを追いかけるカキさんたちのズレた掛け合いが面白すぎます。「Kさんがいる方角!」と叫ぶカキさんに、冷静にツッコミを入れるマサカゲさんやメバルさんの絶妙な距離感。そしてK-Tさんが気づきながらも「知り合いではない」と淡々と流すところがもう…笑いました。エッフェル塔へ向かう展開、続きが気になります!
フランス、パリ。
朝の街を、一台のパトカーが走っていた。
石造りの建物が並ぶ通りを抜け、交差点を曲がる。車内には、フランス人警察官のルノーと、黒い制服を着たK-Tが乗っていた。
K-Tは助手席で、端末に表示された地図を確認している。
「次の交差点を左。昨日、通報のあった区域を確認する」
ルノーがフランス語で答える。
「了解。ところで、君は本当に休暇を取らなくていいのか?」
「勤務中だ」
「いや、そういう意味ではなくてだな。せっかくフランスに来たのなら、観光くらい――」
「必要ない」
K-Tは短く答え、窓の外へ視線を向けた。
カフェのテラス。朝の市場。自転車で走る人々。
その中に、明らかに観光客とは思えない五人組がいた。
先頭を歩くカキが、地図を両手で広げている。
「この反応だ! 間違いない! Kさんはこの辺りにいる!」
「GPSの反応は、K-Tが残した端末のものだろう。数日前の記録だ」
マサカゲが冷静に指摘する。
「つまり、Kさんがここにいたってことだ!」
「現在いるとは限らない」
「でも、いるかもしれない!」
「その理屈で、さっきから同じ通りを三周している」
メバルがため息をついた。
アオノは小型端末を覗き込みながら、周囲を確認している。
「反応は微弱です。近くにK-Tさんの使用した通信機器がある可能性はありますが、本人の位置とは一致しません」
「ほら見ろ! 近くにいる!」
「話を聞いていなかったのか?」
ミステーは通りの向こうにある看板を眺めていた。
「文字が、知らない服を着ている」
「フランス語だからな」
「では、着替えれば読める?」
「読めるようにはならないと思うよ」
そのとき、カキが突然、道路の向こうを指差した。
「あっ!」
五人が一斉に振り返る。
遠くから、青い回転灯をつけたパトカーが近づいてきた。
「Kさんだ!」
「違う可能性のほうが高い」
「いや、あの無駄のない走り方! あれはKさんに違いない!」
「パトカーの走り方に個人差はあるのか?」
カキは道路へ駆け出そうとした。
メバルが襟首をつかむ。
「待って。車道に出たら危ない」
「でもKさんが!」
「パトカーなら、いくらでもフランスにいる」
「Kさんは一人しかいない!」
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K-Takasaka
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「だから見分けられないんだよ」
パトカーは五人の前を通り過ぎていった。
助手席のK-Tは、前方の歩行者と交差点の状況を確認している。
その視界の端に、こちらへ身を乗り出しているカキの姿が入った。
黒い髪。大きな声。異様に見覚えのある動き。
K-Tは一瞬だけ、目を細めた。
「……似た奴がいる」
運転していたルノーが、バックミラーを見る。
「知り合いか?」
「違う」
「そうか?」
「あれは観光客だ」
「観光客は、普通、走っているパトカーに向かって叫ばないと思うが」
「フランスの観光客ではない」
パトカーはそのまま通りを進んだ。
後方では、カキがまだ叫んでいた。
「待ってろ、Kさん! 今、俺たちが迎えに行くからな!」
K-Tは無線機に手を伸ばす。
『中央区、交差点付近で騒ぎ。確認を頼む』
ルノーが苦笑した。
「さっきの連中か?」
「別件だ」
「本当に?」
「勤務中だ」
K-Tはそれ以上、答えなかった。
その頃、五人は通りの角で作戦会議を開いていた。
「今の車両を追う」
マサカゲが地図を広げる。
「ナンバーは確認したか?」
「見てない!」
カキが元気よく答える。
「車種は?」
「パトカー!」
「国籍は?」
「フランス!」
「それでは絞り込めない」
メバルが頭を抱えた。
「そもそも、本当にK-Tだったの?」
「絶対にそうだ!」
カキは胸を張った。
「俺には分かる。あの背中、あの無言、あのパトカー!」
「パトカーはK-Tの特徴ではないよ」
アオノが画面を見ながら言った。
「市内の警察車両の位置を表示します。先ほどの車両は、現在、私たちから約八百メートル先です」
「よし、追うぞ!」
「待て」
マサカゲがカキの肩をつかんだ。
「走って追いつける距離ではない。車を使う」
「最初からそう言えばいいだろ!」
「最初から走り出そうとしたのはお前だ」
五人は近くに停めていた車へ戻った。
運転席にカキが乗り込もうとする。
メバルが即座に止めた。
「カキ、運転は私がする」
「俺だってフランスの道を走れる!」
「右側通行に慣れていない人間が言う台詞じゃないよ」
「日本でも右側を走ったことはある!」
「それは歩道だろう」
結局、メバルが運転席につき、マサカゲが助手席、残りの三人が後部座席に乗った。
車は勢いよく発進した。
しかし、最初の交差点で左折するはずが直進し、次の角では一方通行の標識を見落としかけた。
「違う! こっちだ!」
カキが叫ぶ。
「どっちだ?」
「Kさんがいるほう!」
「方角を言え!」
「Kさんのいる方角!」
「それが分からないから聞いている!」
アオノが端末を操作する。
「パトカーの位置が更新されました。現在地は……」
「どこだ?」
「私たちの後方です」
全員が振り返った。
遠くから、一台のパトカーが近づいてくる。
まさに、先ほどの車両だった。
K-Tは前方の巡回区域を確認しており、五人の車には気づいていない。
五人もまた、後ろから来るパトカーではなく、前方の通りを見ていた。
「先に行かれた!」
カキが叫ぶ。
「今のは後ろから来ていたが」
「きっと高速移動したんだ!」
「パトカーにそのような機能はない」
メバルは車を路肩に寄せ、地図を確認した。
その横を、K-Tの乗るパトカーがゆっくり通り過ぎていく。
K-Tは窓越しに、路上で騒ぐ五人の姿を見た。
カキが地図を逆さに持ち、マサカゲがそれを直し、メバルが運転席から身を乗り出している。アオノは端末を操作し、ミステーは通りの鳩に話しかけていた。
K-Tは無線に視線を戻した。
「……いるな」
ルノーが聞き返す。
「何か言ったか?」
「何でもない」
パトカーは交差点の向こうへ消えていった。
五人は、最後までそれに気づかなかった。
「よし!」
カキが地図を握りしめる。
「次はエッフェル塔だ!」
「なぜそうなる?」
「Kさんなら、きっとあそこにいる!」
「根拠は?」
「フランスだから!」
メバルは深いため息をつき、車を発進させた。
一方、K-Tのパトカーには無線が入る。
『エッフェル塔周辺で観光客同士のトラブル。警戒に向かってくれ』
K-Tは短く答えた。
「了解」
二台の車が、別々の道を走り始める。
向かう先は、同じエッフェル塔。
片方は正式な警察任務。
もう片方は、根拠のない追跡劇。
そして、その二台はまたしても、ほとんど同じ場所を目指していた。
ただし、五人はまだ知らない。
K-Tが逃げているのではなく、最初から堂々とパトカーに乗っていることを。
そしてK-Tのほうは、五人がフランスまで来ていることを、すでに把握していた。
K-Tは窓の外を見た。
「……面倒な観光客だ」
その声を聞いたルノーが尋ねる。
「本当に、知り合いではないのか?」
K-Tは少しだけ間を置いた。
「違う」
パトカーは、エッフェル塔の方向へ走り続けた。