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「理由なんてそんなの、わざわざヤクザとお知り合いになんて、普通はなりたくないだろ」


笹川の問いかけに、宮本は傾げていた首を元に戻し、抱きしめている橋本を見つめる。


「たまたま、陽さんのお父さんがヤクザだった。ご兄弟も、その道の人だということですよね。俺は別にかまわないです」

「雅輝、怖くないのか? 俺が笹川さんと逢うだけで、すげぇ怖がっていただろ」


(顔を青くして、思いっきり怯えていたというのに――)


「ハッキリ言って怖いです。でも陽さんは陽さんだから。もし何かあったら、一緒に逃げればいいかなって」


逃げると言った宮本を、笹川は眉間に深いしわを作って声をかける。


「逃げるだと?」


その顔は、何を言ってるんだという疑問と軽蔑が入り混じったものに、橋本の目に映った。


「はい。危ないなって思ったら、陽さんを連れて車で逃げます。どんなオンボロ車でも、絶対に逃げきれる自信はありますので」

「ぷぷっ、アハハハ!」


宮本としては恋人を守るために、格好よく宣言したのかもしれない。だが詳しい事情を知らない笹川の態度と、熱くなっている宮本の温度差が両極端すぎて、橋本はどうしても笑わずにはいられなかった。


「雅輝、車がなかったらどうするんだよ?」

「むぅ。とにかく車がある場所まで逃げる」


無茶ぶりな提案に、笑いが込みあげてきた。自分の考えを躊躇いなく言ってのけるところが宮本らしくて、愛おしさに拍車がかかる。


「それって俺が単独で戦ってる間に、おまえが何とかして車を確保したのちに、現場に乗りつけて、一緒に逃げるとでも言いたいのか?」

「そんな感じになるかもです」

「橋本さん、何を寝ぼけたことを言ってるんだ」

「俺が好きになった男は、言ったことを必ずやってのけるヤツなんです。だからこそ、全力で頑張らなきゃいけない」


涙が溜まるくらいに笑いすぎた橋本を見ながら、今度は笹川が首を傾げた。


「ドラマや映画じゃあるまいし、都合よく段取りができるとは思えないけどなぁ」


他にも何か文句を言い続ける言葉を無視して、意を決したような面持ちの宮本と見つめ合った。


「陽さんが俺を守ると言うなら、俺も陽さんを絶対に守ります」

「雅輝……」

「はいはい、美しい愛情を確かめ合ってるところ悪いが、この状況をどうやって引っくり返すんだぁ?」


口調に合わせて、二度手拍子した笹川の声で、躰に絡んでいた両腕を互いに離し、その場に並んで立つ。


「笹川さん相手に、俺らは手も足も出ないのはわかってる。ここは、見逃してくれないだろうか?」


姿勢を正して頭を下げる橋本に倣い、宮本も一緒になって下げた。


「大事な手帳をきちんと預かってくれたし、本来ならそのままスルーするのが、筋だと思うんだけどなぁ。どうしても気になるんだ、おまえが」


笹川は言いながら、ビシッと宮本に指差す。


「俺ですか?」

「ああ。名前は?」

「宮本雅輝です……」

「宮本、あのとき――俺がおまえに向かって突進したとき、あそこに突っ立っていたが、俺の動きを見て、ほんのわずかに上半身を逃がしたよな?」


後方に向かって親指を差した笹川の問いかけに、宮本は顎に手を添えながら、何度も瞬きをした。


「うーん、動かしたつもりはなかったんですけど、動いてました?」

「覚えがないのなら――」


意味ありげに瞳を細めた笹川を見て、宮本の躰を押しのけるべく、橋本は反射的に右腕を伸ばした。

攻撃の合図になってる、笹川の顔色を悟った上での行動だったのに、手を伸ばしたときには隣にいた宮本がいなかった。


「え?」


そこにはすでに笹川がいて、驚く橋本の様子を満面の笑みで見下ろす。


「橋本さん宮本のヤツ、普段は何をやってんだ? 俺の動きを見切る動体視力は、並じゃねぇよ」

「雅輝の動体視力?」

「逃げ方は隙だらけで下手くそだけど、鍛えたらそれなりになるぜ。おいコラ、待てよ!」

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