Runa side
ミーティングが長引いてしまい、最終下校時間が迫り急いで階段を駆け降りようとすると、
「あ、待って!月ちゃん」
光琉君に呼び止められ振り向くと、妙にニヤニヤしていた。
「何?急がないと最終下校のチャイムなっちゃうよ?」
「ほら、璃音」
光琉君が後ろに隠れていた璃音の背中を押した。
「あ、あのさ…LINE交換してくれない?」
「なんだそんなこと?」
「え?」
「いいよ。吹奏楽部の女子は全員持ってるから誰かに聞いて。」
私はできるだけ早口で喋った。
「よし、ダッシュ!」
みんなで駆け下りた。
「こんなに簡単だったとは…」
「ん?」
「なんでもない」
「ふー。セーフ」
私たちは全力で走って校門を出た。
「あ、今日恋雪ちゃん用事あるから先に帰るって言ってたな」
夜道は怖いからちょっと苦手なんだよね…
「じゃあ俺が一緒に帰ってあげようか?」
「え?いいの?」
璃音がいるならすごく安心できる。
「でも璃音家の方向違うし…」
「別に月の家の方向からでも帰れるしいいよ。」
「じゃあお言葉に甘えて。」
帰ろうと歩き出したその時。
「月ちゃん!」
「え?」
後ろから一条君が走ってきた。
「ごめん、どうしても伝えたいことがあって。」
「え?…」
「月ちゃん、もしかして僕のこと好きでいてくれたりする?」
え…
「な、なんで」
「最近の態度見てたらもしかしてって思って。」
言わなきゃ。ここで言わなきゃタイミングはない気がする。
「好きだよ。」
言った…。言ってしまった…。
「そっか。でもごめん。」
そう言って一条君は深く頭を下げた。
「僕は月ちゃんの気持ちには応えられない。僕は恋とか好きとか分からないし、何より、今の関係を壊したくないんだ。ほんとにごめん。」
一生懸命に頭を下げながらきちんと気持ちを伝えてくれた一条君を見ていたら思わず涙が零れそうになった。
でも、泣いちゃだめだ。
「ありがとう。気持ち伝えてもらえてうれしかったよ。私ね、中学の時に振られてからかわれ続けて、今もそれが続いてて軽いトラウマなの。でも一条君が真っ直ぐ気持ちを伝えてくれたおかげでトラウマが消えたよ。ありがとう。」
私はめいっぱいの笑顔を一条君に向けた。
「だから、これからもよろしくね」
顔を上げた一条君は、泣きたくなるほど優しい顔をしていた。
「もちろん」
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