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え、ちょっと待って第7話やばすぎんだけど!?!?😳💦 別人格の鈴奈ちゃん、マジでやりたい放題で逆に清々しいんだけど…漆原さんに「バカみたい」って言い放つシーン、めっちゃスッキリしたよ!!笑 でも元の鈴奈ちゃんに戻ったときの恐怖と罪悪感が切なすぎて心臓ぎゅってなった🥺💔 隣のノコギリ音のホラー要素も不気味で最高…祐也の告白もエモかったし、次どうなるの!?続き気になりすぎて夜しか寝れないんだけど!?!?😭🌸
鈴奈は席に戻ると、まだ作業途中だったパソコンの電源を唐突にぷつんと切った。
手際よく机の上を片付けるとカバンを手に取り、目を丸くさせた漆原さんに微笑みかけ、涼し気な声を放つ。
「用事を思い出したので、今日は帰ります」
漆原さんは顔を真っ赤にさせて、勢いよく立ち上がった。そして烈火のごとく鈴奈を怒鳴りつける。
「か、か、帰るって!? そんなこと絶対許しませんからっ!!」
だが鈴奈にいつものような怯えた表情はない。こくんと不思議そうに首を傾げた。
「なんで、そんなに怒ってるの? 用があるって言ったでしょ」
「はあ!? なんですか、その口のききかたはっ!! 私はあなたの上司ですよっ!!」
「たかがハケンに上司も部下もないし。無駄に年を取ったお局だから、会社にリーダーとか言われて都合よく使われてるだけ。あたしに命令する権限があるとでも思ってる? バカみたい」
堂々とした鈴奈の物言いに、漆原さんはわなわなと体を震わす。
隣のはなちゃんも、普段とは全く様子が異なる鈴奈を口を開けてポカンとした顔で見上げていた。
「ゆ、許せない! 怒り心臓に達しました!!」
あっけに取られながらもはなちゃんは、「それは、『怒り心頭』だって」とポツリと突っ込む。
「とにかく絶対に、帰らせませんから!!」
「いいえ。今日は有休を取らせてもらいまーす。有休はたくさん余ってるし、労働基準法では取得理由を説明する義務もないですよね?」
「それは、サボりでしょ!!」
「はあ? サボってなにが悪いの? 漆原さんなんか、仕事してるふりしてしょっちゅうパソコンで韓流スターのサイト見てサボってるじゃない。ハケンのみんな、知ってるんだから」
とたんに漆原さんの顔はさっと青ざめる。真っ赤になったり真っ青になったり、急激な顔色の変化は老体に良くないだろう。
「そ、それとこれは別ですっ」
「別にそれが悪いって言ってるんじゃないですよ。年長者の漆原さんが自ら率先してサボることをあたしたちに教えて下さってるわけですから。そういうわけで、失礼しまーす」
まだなにか言いたそうに口をがくがくと動かす漆原さんを尻目に、颯爽と鈴奈はオフィスを出た。
時計を見ると、14時過ぎ。ちょうど良い頃合いだろう。
エレベーターにひとり乗り込み、スマホをバッグから取り出すとラインを開いてすばやく文字を打ち込む。
『タカシくん、なにしてる? 今日は仕事休みだよね? なんか会いたくなっちゃった』
すぐさま来た返信を見て、鈴奈はにやりと笑みを浮かべた。
◇
なんで私は家にいるのだろう。
さっきまで、会社のトイレにいたはずなのに。
目覚めた鈴奈はベッドに腰掛けて呆然としていた。時計を見ると22時過ぎ。この半日の記憶がまったくない。
スマホを見ると、漆原さんからの着信履歴がずらっと並んでいる。
ふと訪れた恐ろしさに、震えが止まらなかった。
確か、会社のトイレの鏡に、もうひとりの自分が現れて。
それは幽霊の祐也が言った通り、全く自分とは正反対の性格だった。
堂々としていて、言いたいことをはっきりと口にして。そして、自由奔放で。
おそらく、トイレでもうひとりの自分はカラダを乗っ取ったに違いない。
オフィスに戻った後で、漆原さんに失礼な態度は取っていないだろうか。そしてその後の行動は。
考えれば考えるほど、恐ろしくも最悪な想像がムクムクと湧いてくる。
まさか、仕事を途中で放り出して、タカシに会いに行ったのでは。いや、きっとそうに違いない。
手に持ったスマホから通知音がして、思わず飛び上がる。
恐る恐る画面を見つめると、それは「はっぴい」からの通知だった。コウからメッセージがありました、と書かれている。
そういえば、タカシともう一人、コウにも「いいね」を押していたことを思い出した。
はっぴいのアプリを開き、コウのメッセージに目を通す。
『はじめまして、コウです。いいねを有難うございます。
メッセージを送るのが遅くなり、すみませんでした。仕事が忙しくてはっぴいを見る余裕もなく、久しぶりに開いてみたらりんさんとマッチングしていることに気づきました。
もしりんさんがよろしければ、一度お会いしませんか。日時はりんさんのご希望で調整します。
最初はメッセージのやり取りから始めるものとは思いますが、仕事でなかなかすぐに返信できない場合も多く、りんさんにご迷惑を掛けるのであれば直接お会いしたほうが良いかと思いまして。
失礼な誘いであれば、お詫び致します。このメッセージも無視して頂いて構いません。
どうぞ、よろしくお願い致します。』
ずいぶん丁寧なメッセージだった。『会わない?』とだけ送って来たサル、いやタカシとは雲泥の差だ。
文面から感じの良さ、そして真面目さがうかがえる。
鈴奈はゆらゆらと目を左右に動かせて考え込む。
黒崎はタカシから手を引いて、もうひとりのほう、つまりコウに集中しろと命じていた。
もうひとりの自分はそれに反してタカシを狙い続けているようだが、どうにも手に負えない。
そっちのことは後で考えることにして、とりあえず自分は黒崎の言う通り、コウを新たなターゲットとすべきだろう。そうしないと、ソープ行きなのは間違いない。
そう、やりたくはないが、婚活サギを続けるしか他に道は残されていなかった。
鈴奈は震える手で、こちらも会いたいこと。そして3つほど候補日を書き込むと、コウに返信した。
心が痛む。これからのことを想像すると気が重くなる。
だけど、やるしかない。
しん、と静まり返った部屋で、鈴奈は目をぎゅっと瞑って頭を抱える。
すると、突然隣の部屋からその音が聞こえて来た。
ぎーこ。ぎーこ。
それはまるで、ノコギリで何かを切っているような音だ。
こんな夜遅くに、ノコギリでいったい何を?
ふと数日前に隣から聞こえてきた夫婦の喧嘩を思い出して、はっと顔を上げた。
『そのナイフで、俺を刺そおってか!』
『もう我慢できない! ぶっ殺して、そのからだをバラバラに切り刻んでやる!!』
『お、おい。ちょ、待て、落ち着け……ぎゃああああっ!!』
そういえば、これまで隣の夫婦の喧嘩の声が昼夜を問わず頻繁に聞こえていたのに、あれ以来、ずっと静かだった。
バラバラにして切り刻む。
お隣さん……もしかして……。
その夜はずっと鳴り続けるノコギリの音に、鈴奈は恐怖で一睡もできなかった。
◇
翌日の朝。
真っ赤に目を腫らした鈴奈は、ぼーっとしながら洗面室で歯を磨いていた。
猛烈に眠い。だけど、会社には行かなくては。休んだりしたら、漆原さんになにを言われるかわからない。
それにしても、鏡に映った自分。ひどい顔をしてる。まるで薄幸の極みをマンガにしたような顔。
吹き出物も出てるし。ここにも。こっちにも。ああ、いやだ。おそらくストレスのせいに違いない。
鏡をじっと見つめていた鈴奈の前に、ふっと祐也が顔を覗かせた。
「ひいっ!」
「やあ、おはよう」
「し、心臓が止まるかと思った。びっくりさせないでよ」
「鈴奈、顔色悪いね」
「そっちこそ、顔色悪いじゃない」
「だって俺、幽霊なんだもん」
そうだった。あまりに自然に現れるから、祐也が幽霊であることを忘れてしまいがちだ。
「幽霊って、ふつう夜出るものでしょ。なんで朝なのよ」
「ほら俺って、朝型じゃん」
「朝型の幽霊なんて聞いたことないんだけど。どうせなら夜に現れてよ。隣の夫婦の女のほうが旦那を刺し殺したみたいなの。それで、夜中にぎーこぎーこってノコギリで死体を切断してるような音がして眠れないのよ。真相を確かめて欲しいんだけど。幽霊なら、壁も素通りできるでしょ」
鈴奈がそう言うと、途端に祐也は体をすぼめて顔を歪ませる。
「おお、怖っ! 冗談じゃない。俺が極度の怖がりなの知ってるだろ。病名で言うと、恐怖性恐怖症ってやつだ、たぶん」
「そうね。そうだったわね。もう、いいよ。頼まないから」
「それより。鈴奈の別人格が、タカシととんでもないことになってるぞ」
鈴奈は、はっとして祐也の顔を見つめた。朦朧としていた頭が飛び起きる。真実を聞くのが恐ろしい。だが、聞かずにはいられない。
「ど、どうなってるの? ま、まさか寝ちゃったりとか……」
「いや。まだそこまでは行ってないが……昨日はホテルで濃厚なキスをしたあと、半裸になって抱き合っていた」
「え……そ、そんなことまで」
「俺も、これはもしやこのまま本番に突入するかとヒヤヒヤしながら覗いていたんだが。別人格の鈴奈はタカシをじらしにじらしたあとで悪魔のような笑みを浮かべながら、『この続きは、またね』。そう言って服を着てとっとと帰ったんだ。男ならわかるけど、残された方はたまったもんじゃないぜ」
「うそ……最悪……」
「見たところ、タカシはあいつに支配されている。すっかり言いなりさ。限界まで追い詰めて、大金を奪う気に違いない。タカシは刑事だし、このままだととんでもないことになるぜ。あいつを早くなんとかしないと」
そう言われても、今の鈴奈はどうすればいいのかさっぱりわからなかった。ただ焦りが募るのみ。
なにせ、別人格は鈴奈より遥かにエネルギーに満ち溢れている。そんな相手に勝てる気などしない。
「ところで。俺が誰に殺されたか、調べてくれたかい?」
「いや、今はそれどころでは……」
とたんに祐也は少年のような、そして優しげな笑みを顔に浮かべると、鈴奈を後ろからそっと抱きしめた。
幽霊だから抱かれた感触はないが、それでもなぜかきゅんとしてしまう。
「死んでから、はっきりとわかったんだ。確かに前は鈴奈のほかにもたくさんの女たちと遊んでいた。だけど、やっぱりおまえが一番だったんだって。俺が人生で一番愛した女はおまえだったんだって」
「う、うん……」
「だから頼む。俺の無念を晴らしてくれるのは鈴奈だけだ。とりあえず、俺の家へ行ってみてくれ。なにかヒントが残されているかもしれないから」
霊界の掟である10分が経っていた。
その姿が消えていく祐也に向かって、鈴奈はこくりと頷かざるを得なかった。