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途中からシロが手伝ってくれて、なんとか2mの穴を掘ることができた。
その掘った穴に爺さんの遺体を横たえる。
「最後のお別れだ。お花で奇麗に飾ってあげな」
俺はメアリーにそういうと沢山の花を出してあげた。
メアリーはその花を一つ、また一つと手にとり膝が汚れるのも構わず爺さんに花を手向けていた。
シスターマヤはそうしたメアリーに寄り添い、一緒に祈りを捧げてくれていた。
………………
町に戻った俺たちはシスターマヤに礼を言って教会まえで別れた。
そのあとだが俺は考えるところもあって、まずはシベア防具店へと向かった。
「何か不具合でもあったか~?」
モヒカン男は今日も元気そうだ。
「いや、そういうのじゃない。今日はこの子のローブを探しにきたんだ」
「おう了解だ。ちょっと待ってな」
そういってモヒカン男は奥の部屋に入っていった。
普通ならば、
『なに言ってやがる、まだ子供じゃねーか。うちに何のようだ!』
なんて言われそうなのだがヤツは俺がマジだということを知っている。
――できた店員なのだ。
しばらくすると、モヒカン男は奥の部屋から戻ってきた。
カウンターの上には2着のローブが置かれ、ヤツがこちら側に回り込んでくる。
「今はこの2着だな。黒い方がバイホーンバッファローの革だ。物理攻撃に強く耐久性も高い。だが重いんだな」
モヒカン男はそう言うと続けて、
「こっち赤い方はサラマンダーの革で火魔法に耐性がある。耐久性もそれなりにあるし、なんといっても軽い! そのかわり値段がバカ高いんだな」
それぞれの値段を聞いてみたところ、バイホーンバッファローの方が8,000バース。
サラマンダーの方が25,000バース……、のところを20,000バースでいいそうだ。
その訳を尋ねてみると、
「うちの親方がよう、とある貴族に特注で受けた仕事だったんだ。それがいざ納品してみると、『そんな血の色のローブなんか着れるか!』てなことになってよ親方も引かずに大喧嘩になったんだと。それで頭にきて引き上げてきたと。まあ、そんなところだな」
(なるほどな。しょーもない貴族に当たってしまったんだな)
――親方さん……乙です。
それにしたって、せっかく良い物があるんだからここは買いだろう!
「じゃあ、そのサラマンダーのやつを貰うよ。調整はしてくれるんだろ?」
俺は金貨2枚をとりだすとカウンターの上に置いた。
「いいのか! 恩にきるぜ。こちとら親方の癇癪でどうにかなりそうだったからよぉ」
そしてローブをメアリーに着させ、あちこち曲げながらメモをとっていく。
「本来、仕立て直しは金を取ってるんだがサービスでやってやんべ。今からガッツリやっから夕方にはできんぞ」
「それでは夕方に取りにくる」といって店をでた。
この辺りにくると、どうしても妙な引力に引かれそうになるよな。
そう、真実という名の……。
あっ、いかん。メアリーが俺の顔みて首を傾げていた。
俺は頬をかきながらへへっと笑うと、シロを側に寄せて、
――トラベル!
今度はマギ村、ガンツ武器工房の裏手に出てきた。
「おーいガンツ、居るかぁ?」
「おお、ゲンではないか。どうしたんだ? そっちの嬢ちゃんは初めてじゃのう」
入口のドアを開いて声をかけたところガンツが奥から出てきた。
「こっちはメアリーだ。シロの妹分で今回俺たちの家族になった」
「おう嬢ちゃん。わしはガンツじゃ、よろしくな」
抱いていたメアリーを下ろして紹介すると、ガンツは腰を屈めニッコリ笑って頭を撫でている。
「今日はこの子に見合う武器を探しにきたんだ。何がいいと思う?」
「まあ、ゲンが一緒なら問題ないとは思うが……。必要なんじゃな」
低い声で返してきたガンツにしっかりと頷く俺。
「ちょっと待っとれ」
ガンツはカウンターの奥へ入っていくと、しばらくして戻ってきた。
「これは、わしが以前に試作した中の一本じゃ」
そう言って手に持っていた短槍 (たんそう) を渡してくる。
(ふむ、持ち手も細いし軽いな)
――鑑定!
”ミスリル合金:ショートスピアC+:製作者・ガンツ”
おお、グレードはC+か。なかなかの一品だな。
以前に町の武器屋を覗いたことがあったのだが。
そこに置いてあったほとんどの武器のグレードがDとかEだった。
その店で一番のものだろうか。
カウンターの後ろの壁に掛けてあった、持ち手や鞘に装飾を施したロングソード。
あれでもグレードはC+だったと記憶している。
「持てるか?」
俺は短槍をメアリーに持たせてみた。
それを両手で掴んだメアリーは槍を上げたり下げたり、何とか持って振ることは出来るようだ。
「じゃあ、これを貰うよ。いくらだ」
「趣味で作ったような細い槍だ。金なんか要らんわい」
俺が値段を尋ねるとガンツに笑って返された。
「じゃあ、これを」
例の拳大のミスリルをカウンターの上にゴトッと置く。
「おっ、おまっ、何というものを出すんじゃ。 じゃが今は買い取るような金はもたん……」
寂し気にうな垂れるガンツ。
もともと金なんか受けとるつもりはない俺は、
「俺に剣を打ってくれるんだろう? 前金代わりに渡しておくよ」
ニカッ! と笑って言ってやった。
「これからは少しずつだがこの国でもミスリルは手に入るようになるさ。きっとな」
そう言い残して俺たちはガンツの店をでた。
(サラ、聞き取れるか?)
[はい、マスター。こちらはデレクとのライン上ですが問題ありません]
(では、今から俺たちをサラのダンジョン1階層に飛ばしてくれ)
すると俺たちは見覚えがある場所に立っていた。
ここはダンジョン前広場から続く階段を下りてすぐのところであった。
ここで俺の考えていることをメアリーに話していく。
メアリーを前に膝を折って目線を合わせる。
「メアリー。この国や世界には魔獣という怖い生き物がいるのは知ってるな?」
メアリーはコクンと頷く。
「町を出ると魔獣がいっぱいいるんだ。だけど俺は冒険者だから、たとえ魔獣がいたとしても外に出ないといけないんだ」
俺の言うことをメアリーは一生懸命に聞いている。
「でも、今のままだとメアリーはずっと家でお留守番だな」
メアリーは急に泣きそうな顔になった。
「やだ! やだやだ!」
何度も顔を横に振って訴えかけてくる。
「俺やシロについて行きたいのか?」
「うん、ついていく!」
「でも、弱いメアリーは連れていけないなぁ」
「いやいやっ、ずっと一緒がいい!」
「じゃあ、強くなるために頑張れるか?」
「うん、がんばる!」
「嫌だとか帰りたいとか言ったらそこで止める。メアリーはお留守番だぞ」
「言わない。ぜったいがんばる!」
(うん、やる気はあるから何とかなるかな)
さ~て、それじゃあパワーレベリングといきますかね。
まだ昼までには時間があるが、みんなで串焼きを食べて気合を入れる。
しっかりと水分補給をしたあと出発した。
1階層のモンスターはスライムだ。
槍でスライムの核を突けば一発である。
ただ数を見つけるのに骨が折れるわけだが、シロが居ればサクサク見つかる。
メアリーに槍を持たせて核を突かせているのだが……。
頑張ってはいるのだが、なかなか大変なようだ。
まあ、いい訓練にはなっているだろう。もう少し力が抜けてくると楽にこなせるとは思うのだが。
しかしスライム狩りに関しては結構楽しんでやっているようだ。
(やはりあれかなぁ、犬人族だから狩猟は得意分野だとか?)
シロにくっついて、あっちへこっちへ実に軽快に動きまわっている。
昼時になったので一旦呼びもどす。
床に敷いた毛皮シートの上にメアリーを座らせる。
そして、昼食用に用意していたパンとスープを出してあげる。
シロにはこっちの串焼きだな。
しかし、それを見ていたメアリーがもの欲しそうな目をこちらに向けてくる。
「…………」
「…………」
まだ食べられるならと串焼きを一本出してあげた。
すると、ものの見事に平らげるではないか。
なんだ? 肉は別腹だったのか?
お腹がいっぱいになったメアリーは只今お昼寝中である。
(今のうちに鑑定しておくか)
――鑑定!
えっ、身体レベルがすでにLv.3になっている?
結構な数のスライムを倒してはいるが、それにしたって……。
あれれっ!?
よく見ていくと女神さまから加護を頂いていた。
あぁ~、これのせいかぁ。
加護をもっていると経験値が何倍にもなるみたいだから。
――女神さま、いつもありがとうございます。
半刻 (1時間) 程昼寝をさせたあと再びスライム狩りを開始した。
動きもだいぶ良くなってきているようだし、そろそろ2階層に行ってみるか。
そして俺たちは2階層にやってきた。
ここからはたまにコボルトが出るようになる。
ここでいう『コボルト』とは犬のやつではなく、二足歩行の小人原人みたいなやつだ。
動きはのろく、頭が重いのですぐに倒れる。
武器として短い棒を持っているのだが、よっぽど油断していないかぎり攻撃をくらうことはないだろう。
ここでもシロが先導する形でスライムやコボルトを次々に倒していく。
メアリーの場合だと、身長がコボルトとほぼ変わらないのだが……。
――怖くはないのだろうか?
それは楽しそうにモンスーターを狩っていくのだ。