シェアする
あの日、あの時、あの瞬間、「恋」 をした
一目惚れだった。相手はひとつ上の先輩で今年卒業してしまう。関わりはなく、話したこともないし名前も知らない。でも、とても優しそうに見えた。
それから僕は先輩を見かける度、バレないように目で追いかけていた。先輩の周りにはいつも沢山の人がいた。友人いわく、その先輩はいつも明るくて優しいと男子達の間で人気だそうだ。
二学期初日下校時刻を過ぎ夕日が綺麗な頃、先輩が1人で教室から出ていくのを見かけた。先輩は泣いていた。思わず僕は、
「大丈夫ですか。」
声をかけた。
びっくりしたのかこちらを見て目をまん丸くしていた。そりゃそうだ。全然知らない人に声をかけられたら誰だってそうなるだろう。でも泣いている理由を教えてくれた。
先輩は、いつも教室で1人で本を読んでいるクラスメイトに声をかけ、怒らせてしまったらしく、悲しいや、怖いなどのいろいろな感情が混ざり泣いてしまったそうだ。
話終わると先輩は落ち着いたようなので、僕は先輩に挨拶し家に帰ることにした。
「待って」
先輩に言われ振り向くと、くしゃっとした笑顔で
「話聞いてくれてありがとう」
と言われた。
その笑顔で僕はさらに先輩のことが好きになった。