テラーノベル
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「仕事はうまくいかない」
気付けば俺は口を開いていた
「タスクばっかり溜まっていってなにも進まない、好きなものもあったはずなのに、思い出せない」
光を感じていたのは確かなはずなのに
「目に入れるのすら、なんか申し訳ない気がする。見える全てが俺とは正反対で眩しく見えて…」
そう、俺とは正反対
存在することにも引け目を感じる
「でもそれって日常だから」
普通、のことだ
どんなに空虚でも
何を考えたとしても
生きるための1日は始まりそして終わっていく
人はどうだか知らないが日常とはそういうものだ
「死にたいなんて思ったことない。死にたいほどの理由もない。 でも、消えたいって思った」
俺は、死にたいわけじゃなかった
「思ったら、体が動いてた」
勇斗はちらりとこちらを見ると箸を置いた
「仕事辞めなって言うのは簡単だけど、仁人は辞めたくないよね」
まっすぐな瞳と声は胸と脳にストレートに染み込んでくるようだった
「成果がでなくて頑張れてないように感じるのが辛いんだよね」
なんでこの男は
「好きなものも楽しめなくなっていってだんだん受け付けなくなって、好きなのに申し訳ないような気持ちになって」
俺の心を読んだように
「好きなものってキラキラしてるよね。キラキラしてるものってさ、目の当たりにすると自分の影が目立つじゃない」
スラスラと言葉が出てくるのだろう
「だから辛いんだよね」
「…うん…」
図星だった
頑張っても足掻いても成果なんかあってもほんの微々たるもので
何も成し得ない自分
好きなものを好きでいたいのに
それさえも出来なくて
影でしかない自分を目の当たりにして怖くなって
辛いんだ
「わかるよ、俺もおんなじ」
勇斗は微笑んだように見えた
でも伏せたその瞳はうっすらと影を帯びていた
「笑ってる自分すら嫌になる時あるよ」
はじめて見た、勇斗の闇だった
「世界ってなんだか眩しいよね。努力しても大抵報われないし」
でも、と勇斗は続けた
「… 普通のもん食べて、つまんないテレビ見てさ、なんとか、やってこ」
首を傾けてこちらを見る勇斗は
優しく微笑むような、でもすがるような形容し難い表情だった
目が離せなかった
「そんで時々、気が向いたらまた俺にもコーヒーいれて?」
少し甘えたような言い方は普段の勇斗に近付いている
でも
まだ、闇を残したまま
「俺は仁人の光にも影にもなれないから、隣にいてよ」
伸ばされた手に自分のそれをきゅっと握られて
心臓まで掴まれたみたいにぎゅっとなる
「…今度、コンビニでエクレア買ってさ、食べよ」
精一杯の答えだったけど
勇斗は心底嬉しそうに笑った
人の笑顔も今は辛くない
久しぶりに上がった口角
目からこぼれ落ちる熱
重かった体の中の水がなくなっていく気がした
灰のなかから救い出されるように
酸素が体を巡る感覚が戻ってくる
きっと明日はくるだろう
おそらく
その次も
たとえ薄暗くても
明日は、明日
fin.
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