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「熱っ…。アン、熱くないのか?」
ブルルと頭を振って水滴を飛ばすアンを見て、リオは呆れたように笑う。
「おまえは大したヤツだな。この前のギデオンが行方不明になった時も、どうやって来たのかわからないけど、遠くまで俺を追いかけてくるし、食べ物に好き嫌いは無いし、水でも湯でも濡れても全く平気だし。すごい大物になりそう。そんなアンが大好きだよ」
アンは尻尾を振ってリオに擦り寄ると、今度は全身を振って盛大に水滴を飛ばした。
「わあっ!やめろっ」
「楽しそうだな」
声に顔を上げると、ギデオンが|桶《おけ》を手にして傍に立っている。もちろん全裸で。堂々と。
なぜか見てしまったリオの方が恥ずかしくて、|咄嗟《とっさ》に目を逸らせる。
ギデオンは桶に湯を汲むと、リオの後ろで身体を洗い始める。
リオは少し考えて、ギデオンの方を向き「背中を洗いましょうか」と聞く。
ギデオンは濡れた顔を手で拭うと、怪訝そうな顔でいいと断った。
「なんだ今のは」
「いや…ギデオンは俺の主だし。一緒に湯に浸かるからには奉仕しなきゃダメかなと思って。俺は使用人だし」
「おまえを使用人と思ったことは無い」
「へ?そうなの?」
「そうだ。恩人ではある」
「恩人?俺が?俺の方がギデオンに助けてもらってるのに?」
「リオが来てから俺の不眠が治った。そのおかげで体調もすこぶる良く仕事もはかどっている。リオには深く感謝している」
「それは…どうも。でもちゃんと賃金をもらってるよ?」
「それは当然の対価だ。だが、そんなことでは計り知れないくらいに感謝している。金は足りなければ言ってくれ」
「大丈夫!もらいすぎてるくらいだよ!今までの分で数年は楽に旅ができる」
「旅?リオはまた旅がしたいのか?」
「うん。俺はさ、母さんが死んで一人になったから、何となく旅を始めたけど、色んな場所へ、見たことがない所へ行くことが好きなんだ。だからまた、アンを連れて旅に出たい」
「そうか…。だが、もうしばらくは俺の傍にいて欲しいのだが」
「もちろん!今すぐ行くって訳じゃないから。ギデオンが、俺がいなくても眠れるようになるまでは、傍にいるよ」
「ああ、頼む」
「任せて」
「あと数年はかかるぞ」
「…え?なんて?」
ザバーっとギデオンが肩に桶の湯をかけたので、聞き直すことができなかった。
さっき、数年って言った?それは、ずっとずっと俺にいて欲しいってこと?
リオは嬉しい気持ちになって、アンを撫でながら頬を緩ませた。